豊橋市の地域農業関係者×農業系スタートアップによる協働プロジェクトの「TOYOHASHI AGRI MEETUP」では、地域の農業が抱える課題解決へ向けて全3回の日程で地域農業者向けにマッチングプログラムが行われます。
ここでは農業者等がスタートアップとの協働開発に向けたマインドセットを行うとともに、アグリテックコンテストで解決策を公募する農業課題を明確化します。
前回の記事では、マッチングプログラムDAY1の様子をお伝えしました。
DAY1では本質的な課題を見つけることがいかに大切かを学びながら実際にワークを通して顧客インタビューなどを行いました。DAY2ではどんな学びがあるのでしょうか、その様子をレポートします!
会場は “本気の人々が集まる場”
前回に引き続き、マッチングプログラムの会場は「MUSASHi Innovation Lab CLUE」。
イノベーションに挑戦する多様な人々が集い、新しい価値を創出し事業化することで地球社会の発展に貢献すべく設立された施設です。
東三河から独創的な技術・斬新な事業モデルでイノベーションを起こし、社会課題を解決するエコシステムの構築を目指しています。
オープニングでは改めて事業全体の流れなどをおさらいし、DAY2のプログラムがスタート!
アグリテック企業による農業へのIT導入事例
前半の講演、講師は株式会社トクイテン 代表取締役 豊吉隆一郎 氏です。自身が名古屋発のスタートアップ企業で創業からスケールアップ、事業売却を経験している豊吉氏。現在は愛知と東京を拠点に生産者として有機農業を営みながらAIとロボットによる有機農業の自動化を目指す株式会社トクイテンを経営しています。
これまで多くの講演機会があったものの、農業者への講演は今回が初めて。生産者として先輩の前での講演に緊張しつつも、積極的に交流もしたいというお話から講演がスタートしました。
もともと小さな頃に家業の手伝いとして山菜の収穫や出荷を手伝った経験があり、農業が身近なところにあったという豊吉氏。
豊吉氏は前職のITスタートアップ企業を売却した後、新しいチャレンジを考えていた頃に出会ったのが「農業」でした。スマホで水やりを操作するシステムを開発したのをきっかけに、まだまだ農業には自動化の余地があると感じたのが現在の事業アイディアのもとになりました。
前職のIT企業で行っていたように顧客の意見を取り入れることを徹底的に意識し、農業大学校で1年間の本格的な農業研修も経験。
株式会社トクイテンは愛知県出身で同じ岐阜高専出身の森 裕紀氏との共同創業。森氏は豊橋技術科学大学の卒業生でもあります。それぞれロボットに関心が高く学生時代はロボコンへの出場経験もあり、森氏は現在 早稲田大学次世代ロボット研究機構 研究院准教授・主任研究員として研究活動にも従事しています。
講演では動画も交えながら農業の高齢化や担い手不足の問題を解消するロボットの事例などが紹介されました。
株式会社トクイテンYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@user-hy5jy9sn4o
後半はハウスのビニール巻き上げの自動化など、より具体的に農場のIT化について事例紹介と解説が行われました。
また、株式会社トクイテンが自社農園や会社として活用している自社サービス以外のITツールも数多く紹介。大きな設備投資なく導入できる例がたくさんあり、また実施に活用しているがゆえの体験談を聞くことができました。
質疑応答では農家さんから具体的な技術相談や自動化しやすい作物にはどんなものがあるかなどの質問があり、手を出しやすいIT化の事例も喜ばれていました。
また、参加者からは栽培だけでなく獣害についても自動化が可能かという質問も。「技術的には可能でもアナログな方法が効果がある場合もあるし、ロボットが苦手な作業もある」という回答からは技術者としてだけでなく同じ生産者である視点を強く感じました。
さらに課題を深堀りするワークショップ
講演に続いて、前回のおさらいと振り返りから後半のワークショップがスタートしました。インタビューの目的は「盲点」を発見すること。前回からの宿題を使いながら、DAY1のワーク内容からさらに課題を深掘りしていきます。
個人ワークで課題の整理と優先順位づけを行い、グループワークでは重要課題の共有と共通点、共通点の整理を行いました。
今回も事務局が各テーブルについて丁寧にワークをサポート。対話やアドバイスをもとに議論は白熱し、参加者の皆さんが疲れを感じずいきいきと発言されているのが印象的でした。
いよいよ次回でマッチングプログラム終了!
共感からスタートし、技術ではなく人を中心に考えて本質的な課題を見つけ出すデザイン思考のプロセス。
どんなに素晴らしい技術を持ったスタートアップと協業したとしても、この本質的な課題が見えてなければ必要な成果は得られないため、マッチングプログラムでは妥協することなく議論が重ねられていました。
全3回のマッチングプログラムもいよいよ最終回。ここでの結果が後に行われるテックコンテストで募集されるテーマとなります。