業種別平均残業時間

あなたが転職したいと考えている業種の残業時間をご存じですか?「想像してたより残業時間が多い」と後悔する前に知っておきましょう。残業時間が多いとプライベートの時間を確保できず、心身ともに疲れてしまいます。この記事では、転職先を探す際、残業に関連した5つのポイントを解説しています。転職する際の参考にしてください。

業種別平均残業時間

残業時間の明細書

日本人の月間平均残業時間は、一般労働者13.7時間、パートタイム労働者は2.1時間です。一般労働者では、1日当たり30分程度残業している計算になります。

業種別平均残業時間は表の通りです。

一般労働者(単位:時間) パートタイム労働者(単位:時間)
運輸業、郵便業 25.0 5.0
教育、学習支援業 17.2 0.8
情報通信業 16.1 3.4
飲食サービス業等 15.8 2.2
学術研究等 15.1 1.7
電気・ガス業 15.0 0.7
製造業 14.7 4.5
不動産・物品賃貸業 14.6 1.5
鉱業・採石業等 14.1 7.3
その他のサービス業 14.0 3.0
建設業 13.8 1.2
金融業・保険業 13.4 1.8
生活関連サービス等 9.6 2.2
複合サービス事業 8.6 4.9
医療、福祉 6.8 3.0

(引用:厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年6月分結果確報  P7)

残業時間が長い業種

オフィスで夜遅くまで残業をするビジネスマン

残業時間が長いと指摘されている業種には以下の3つがあります。

  1. 運送業
  2. 建設業
  3. 医師

以下に、残業時間の長さとその理由を解説します。

運送業

運送業従事者では、1週間の労働時間が60時間以上の割合が40%と、多くのドライバーが長時間の労働に従事しています。

残業時間が多い理由には、ドライバー不足と手待ち時間があることの2つが挙げられます。ドライバーが不足していると、休日出勤や早出残業などで対応するため残業時間が増えます。また、手待ち時間とは、荷物の積み下ろしなどでドライバーが待機している時間です。手待ち時間は必ず発生してしまうため残業時間が長くなってしまいます。

参考:厚生労働省 資料2.長時間労働の指摘がある業種・職種の実態について(例)P4

建設業

建設業従事者では、1週間の労働時間が60時間以上の割合が11%と、多くの時間を労働に費やす人も少なくありません。

残業時間が多い理由には、前工程の遅延を取り戻すためや、無理な発注、天候による工事の延長といった理由が挙げられます。
天候による工事の延長は、自然現象でありどうにもできません。一方、短期間での工事完了を下請けに強いる企業もあり残業時間の増加につながっています。

参考:厚生労働省 資料2.長時間労働の指摘がある業種・職種の実態について(例)P3

医師

医師は時間外労働が多く、長時間労働になりやすい傾向があります。
1か月あたりの時間外労働時間数は、20時間~50時間以下が31.5%と最も多く、50時間~80時間以下は14.2%、80時間超が8.1%です。およそ2割がひと月に50時間以上の時間外労働をしていることになります。

残業時間が多い理由には、緊急対応と手術や外来対応の延長など2つが挙げられます。
緊急対応では、患者の容体が急変したら急いで駆けつけるため医師という職業上、発生してしまうことが多いです。また、手術や外来対応の延長は、患者が想定と違う状態だった場合など、延長して対応する必要があるため残業時間が増加します。

参考:厚生労働省 資料2.長時間労働の指摘がある業種・職種の実態について(例)P3

残業時間が短い業種

残業に悩むビジネスマン

残業が少ない仕事に転職するためには、残業時間が短い業種を知っておく必要があります。
主に、以下の2つがあります。

  1. 医療・福祉
  2. 生活関連サービス

残業時間が短い理由を詳しく解説します。

医療・福祉

医療・福祉は残業時間が短めです。なぜなら、医療・福祉サービス改革プランにより、残業時間を減らす取り組みが進められているためです。
医療・福祉業界は残業が多いと思う方もいるかもしれませんが、実はそうでもないのです。医師や看護師など職種によっては多い場合もありますが、その他介護職・コメディカルでは残業時間を減らす取り組みをしている企業もあります。

ただし、残業に入らないよう、いわゆる「サービス残業」を職員がしている職場があるのも事実です。
転職する際は、実際に働いている人の口コミなどを調べるようにしましょう。

参考:厚労省 医療・福祉サービス改革プラン
参考:全国労働組合総連合 介護労働実態調査報告集

生活関連サービス

理髪店や結婚式場、アミューズメントパークなど生活関連サービスでは残業が短めです。
なぜなら、開業・終業時間が決まっているからです。医師のように急に対応しなければいけない状況はほとんどなく、基本的に定時で帰れる業種です。

残業時間の上限は原則として月45時間

原則残業時間

残業時間は一般労働者の場合、36協定を結んでいれば月45時間・年360時間が上限と決められています。違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。ただ、36協定の例外や適用されない業種もあります。例えば、1年単位の変形労働時間制の場合、一般労働者とは異なり、月42時間・年320時間が上限です。

参考:厚生労働省 時間外労働の限度に関する基準 P2

このような上記の数値は、健康リスクを考慮して決められています。
1日の時間外労働を2時間、4時間、5時間行う方は、睡眠時間の平均がそれぞれ7.5時間、6時間、5時間となります。この数値に平均日数をかけてリスクを計算したところ、45時間程度なら健康リスクは低いと定められているからです。

参考:厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書P47

もし予見できない大幅な業務増大があるなど特別な事情がある場合、36協定の特別条項により月100時間が上限となります。

サービス残業の違法性と実態

サービス残業は労働基準法に反しているため違法です。しかし、正規・非正規労働者を合わせたうちの約4割が、サービス残業をしているという実態があります。サービス残業は、平均で月に18時間程度、管理職になると28時間程度働かざるを得ない状況です。
サービス残業の有無は外部からでは分かりづらいため、転職時には口コミなどを参考に内部にいる人の話を参考にするとよいでしょう。

参考:日本労働組合連合会「労働時間に関する調査」

残業の少ない転職先探しの5つのポイント

残業の少ない転職

転職先を探すときは、以下の5つの項目を確認しましょう。

  1. 労働基準関係法令違反の企業を確認
  2. 残業が常態していないか確認
  3. ホームページ・求人情報を確認
  4. 休日日数を確認
  5. 離職率を確認

労働基準関係法令違反の企業を確認

労働基準法に違反したことがある企業は、厚生労働省の資料で公表されています。要するに「ブラック企業リスト」です。どんな理由で違反したかも書かれているため参考にしましょう。ただ、この資料以外にもブラック企業はあるため、見分けるためにはほかの方法も活用しましょう。

参考:厚生労働省 労働基準関係法令違反に関わる公表事案

残業が常態化していないか確認

残業が常態化している企業を避けるためには、転職エージェント経由で応募するのがおすすめです。転職エージェントは会社の印象を下げないために優良企業を求めています。そのため、エージェント経由だと優良企業が多いでしょう。

さらに、口コミや評判を調べることでも確認できます。企業名で評判を調べると意外に口コミが出てきます。しかし、口コミが嘘の可能性もあるため参考程度にしておきましょう。

転職エージェントについては「転職サイトと転職エージェントの違いは?~メリット・デメリットと上手な使い分けをご紹介」で詳しく解説しています。

ホームページ・求人情報を確認

ホームページや求人情報を確認することで転職先企業を見極めましょう。
確認するとよい項目は以下の通りです。

  1. 一日の流れや業務内容
  2. 残業時間についての記載
  3. 固定残業代で時間と料金が書かれているか

残業があるのに、残業時間や残業代が書かれていない場合は注意しましょう。また、業務内容から明らかに業務時間を超えそうと推測される場合も要注意です。

休日数を確認

休日数がどれだけあるか確認しましょう。労働基準法では、年間休日105日が最低日数と定められています。ただ、105日だと少し窮屈と感じる人もいるでしょう。

令和4年の平均年間休日総数は、120〜190日が30.2%、100〜109日が29.6%です。特に、大企業ほど休日日数が多くなっています。ただ、業種別にも平均休日日数は異なるため、求人票をしっかり確認しましょう。

参考:令和4年就労条件総合調査|厚生労働省

休日については「年間休日とは?平均何日休める?週休二日と完全週休二日との違いも解説」で詳しく解説しています。

離職率を確認

転職したい企業の離職率を調べてみましょう。離職率は、一定期間内に退職した人数の割合です。離職率が高い原因には、長時間の残業など労働条件への不満が背景にあるかもしれません。以下に、それぞれの特徴を表にしました。

高い離職率 低い離職率
・新しい社員が入ってくるため活気がある
・上の人が辞める場合もあり、キャリアアップを目指しやすい
・人の入れ替わりが多く、体制が変わりやすい
・長時間労働や残業の状態化など労働条件に不満がある社員が多い
・働きやすい職場環境
・研修制度が充実
・変化が少ない安定した会社が多い
・長く在籍している社員が多く、昇給が難しい

離職率が高いほどブラックなイメージがあるかもしれませんが、一概にはいえない面もあることは心にとめておきましょう。

まとめ:残業時間の平均を知り、転職先選びに活かしましょう

職種の特徴により、残業時間が増加してしまうケースが多数あります。業種単位での残業時間や特徴を知っていれば、転職候補を選ぶときの基準にできるでしょう。
転職先を選ぶ際のポイントは以下の5つになります。

  1. 労働基準関係法令違反の企業を確認
  2. 残業が常態していないか確認
  3. ホームページ・求人情報を確認
  4. 休日日数を確認
  5. 離職率を確認

これらのポイントを参考にして、転職先を選びましょう。