転職活動をしていると、面接などで前職の年収を尋ねられてつい多めに申告したくなったり、バレたらどうなるだろうと心配になったりした経験のある方もいるのではないでしょうか。実際と異なる年収を申告すると、内定後や入社後にバレる可能性があるため、おすすめできません。
この記事では、前職の年収が転職先にバレるケースとバレたらどうなるかを詳しく解説します。年収を申告する際のポイントを把握し、前職の年収を正直に申告してリスクを回避しましょう。
転職活動で前職の年収を多めに申告してもいい?
転職活動の選考過程で前職の年収を多めに申告すると、入社前や入社後に転職先にバレる可能性があります。そのため実際の年収より多めに申告することはおすすめできません。
採用の過程で前職の年収を尋ねる理由のひとつは、企業が設定している給与水準に合うかを確認するためです。希望年収と企業の給与水準が合わないことにより、入社後に不満に感じたり早期退職に結びついたりしないために、前職の年収を確認しています。
また、前職の年収から、前職の企業が転職者の能力や実績をどのように評価していたのかを推測できます。年収は採用を決める材料のひとつです。
仮に前職の年収が多いと、入社しても待遇面で満足できないのではないかと企業が考える可能性もあります。バレるかもしれないという心理的な負担や、内定取り消しや解雇などのリスクを負わないためにも、前職の年収は正直に答えましょう。
前職の年収が転職先にバレるケース
もし前職の年収を多めに申告してしまった場合、前職の年収が転職先にバレるのは主に以下のケースが考えられます。
- 源泉徴収票を提出してバレる
- 住民税の税額からバレる
ケースごとに詳しく見ていきましょう。
源泉徴収票を提出してバレる
転職先に源泉徴収票を提出したために、前職の年収がバレてしまう場合があります。
転職すると転職先の企業から源泉徴収票を提出するよう求められることが多いです。源泉徴収票には、前年の給与の総支給額や源泉徴収額、社会保険料の金額などが記載されています。源泉徴収票を見れば、前職でいくら給料をもらっていたのかがひと目でわかってしまいます。人事の担当者が源泉徴収票を見れば、申告された年収と金額が違うと気がつくかもしれません。
しかし、源泉徴収票の提出を求められるのは内定後が多く、選考の過程で提出することはまれです。そのため、人事担当者が源泉徴収票を見る機会は多くありません。経理の担当者が源泉徴収票を見ても、人事担当者に年収額を伝える可能性は低いでしょう。
ただし絶対に伝わらない保証はありません。経理と人事が直接話す機会があって伝わってしまったり、人づてに伝わってしまったりする可能性も考えられます。人事担当者が源泉徴収票を見る機会が全くないとはいえません。入社前なら、いったん人事担当者に提出して、人事から経理へ渡すケースも考えられます。バレる可能性があることを認識しておくとよいでしょう。
なお、源泉徴収票の提出は義務ではありません。副業など給与所得以外の収入があったり2ヶ所以上から給与をもらっていたりする場合は確定申告が必要となるため、転職先の企業への源泉徴収票の提出は不要です。
住民税の税額からバレる
住民税は、1年間の収入を基準にして税額を計算し、翌年の6月から納税し始めます。会社員の場合、住民税は給与から天引きされるのが一般的です。そのため、転職先で住民税を払う際に、税額が少ないと「なぜ少ないんだろう」と疑問に持たれる可能性があります。
ただし、住民税の手続きは経理担当者が行うことが多いため、人事担当者が住民税の納税額に気がつく可能性は低いでしょう。また、給与からの天引きではなく個人で納税する場合は、会社が住民税の税額を把握する機会がなく、税額から年収額を疑われるリスクは少ないといえます。
しかし、前述の源泉徴収票と同様に、人事担当者が気がつく可能性が全くないとはいえません。バレる可能性がゼロでない限り「バレるかもしれない」とモヤモヤした気持ちで過ごすことになるでしょう。
前職の年収が申告と違うとバレたらどうなる?
では、前職の年収が申告と異なると転職先にバレたら、どうなるのでしょうか。考えられるのは、主に以下の3つのケースです。
- 入社前にバレると内定取り消しになる可能性がある
- 転職先の信頼を失う可能性がある
- 懲戒免職(解雇)の恐れもある
項目ごとに詳しく解説します。
入社前にバレると内定取り消しになる可能性がある
内定が出ていても、入社する前にバレると内定取り消しになる可能性があります。
例えば、内定が出たあとに、経理手続きのために源泉徴収票の提出を求められた場合、転職者はいったん人事に源泉徴収票を提出します。受け取った人事担当者が経理に渡す際に、源泉徴収票に記載された前年の収入を見るでしょう。
選考過程で申告した年収額と源泉徴収票に記載された年収額に差があることがわかれば、虚偽の申告をしたとして内定取り消しになる恐れがあります。
転職先の信頼を失う可能性がある
前職の年収を多めに申告したことが入社後にバレた場合、仮に解雇にならなくても、転職先の信頼を失う可能性があります。
ウソをつく人という目で見られれば、上司から信用を得られず、仕事を任せてもらえないかもしれません。周囲からの視線も冷ややかなものとなるでしょう。職場の雰囲気になじめず、自分の居場所がないと感じれば、すぐに退職してしまう恐れもあります。
転職先で実績を挙げて成功するためには、上司や同僚の協力が不可欠です。職場に慣れて良好な人間関係を築くためにも、転職先の信頼を失う行動は避けることをおすすめします。
懲戒免職(解雇)の恐れもある
内定後にバレることなく入社できたとしても、入社後にバレてしまったために解雇されるケースもあります。
転職先の就業規則に「入社時に虚偽の申告をしていた場合は懲戒免職(解雇)の対象になる」という記載があれば、規則違反として解雇になる恐れがあります。
バレずに入社できたからといってリスクを回避できたわけではありません。懲戒免職(解雇)になるリスクを負ってまで年収を多く伝えたほうがいいのか、考える必要があります。
前職の年収を申告するにあたってのポイント
転職活動において前職の年収を申告するにあたって、押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 転職先が前職の企業に年収を尋ねることはない
- 確定申告をすれば源泉徴収票の提出は必要ない
- 多めに申告しても年収アップできるとは限らない
以下に詳しく解説します。
転職先が前職の企業に年収を尋ねることはない
転職の採用過程において、転職先が直接前職の企業に連絡をとり、転職者の年収を尋ねることはありません。前職の企業から年収がバレるかもしれないと思われがちですが、その心配はないといえます。
年収がバレるとすれば、前職の企業から直接バレるのではなく、前述のように源泉徴収票や住民税の税額などからバレるケースが一般的です。
確定申告をすれば源泉徴収票の提出は必要ない
副業など給与以外の収入があったり2ヶ所以上の企業から給与所得を受けとっていたりすると、確定申告が必要です。確定申告をする場合、転職先に源泉徴収票を提出する必要はありません。
そのため、前職の企業から発行された源泉徴収票の記載内容から、年収がバレる可能性は低いでしょう。また、個人で住民税を納税すれば、転職先で住民税の天引きをする必要がないため、住民税の税額から前職の収入がバレる可能性も低いです。
ただし、確定申告が必要な場合でも、入社時の必要書類として前職の源泉徴収票を提出しなければならない場合があります。提出しなければ、なぜ提出できないのかと企業から問われる可能性もあります。確定申告をするからバレないだろうと考えて前職の年収を多めに申告するのは、リスクがあると認識しましょう。
多めに申告しても年収アップできるとは限らない
年収アップは、主な転職理由のひとつです。年収アップを実現するために希望年収を多めに伝える場合、その希望年収が自分の評価に合っていると客観的な根拠を示す必要があります。そのため、前職の年収を多めに申告して、希望年収に説得力を持たせようとする転職者は多いでしょう。
しかし、年収は社内規定に基づいて決められるのが一般的です。また、転職者の年齢や経歴、社員とのバランスなども、年収を決める要因になります。
そのため、前職の年収を多めに申告しても、転職後の年収をアップできるとは限りません。前職の年収が多くても、転職先の企業の基準に合わなければ、年収アップが見込めない場合もあります。
前職の年収は正直に申告しよう
年収をアップのために希望年収を多めに伝えたいと考えると、つい前職の年収を盛って申告したくなるかもしれません。しかし、実際と異なる年収額は転職先にバレてしまう可能性があるため、年収を多めに申告するのはおすすめできません。
前職の年収は、源泉徴収票や住民税の税額から転職先にバレる可能性があります。確定申告が必要な場合など源泉徴収票を提出しなくても、バレる可能性はゼロとはいえません。
もし前職の年収を実際と異なる金額で申告してしまったことが転職先にバレれば、最悪の場合内定取り消しや解雇になるリスクがあります。
前職の年収を多めに申告しても必ず年収アップできるわけではないことをおさえておきましょう。不要なリスクや精神的負担を負わないためにも、前職の年収は正直に申告して転職活動を続けましょう。