退職自己都合会社都合

会社都合退職や自己都合退職と聞いたことがあるけれど違いがよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。会社都合退職と自己都合退職では、退職後にもらえる失業保険や退職金に違いがあります。

この記事では、会社都合退職と自己都合退職の違いを詳しく解説します。違いを正しく理解できれば、退職後に損をするかもしれないという不安を減らして、安心して転職活動に集中できるでしょう。

会社都合退職と自己都合退職の違い

退職届と就業規則と社員証

会社都合退職と自己都合退職には、次のようにいくつかの違いがあります。

  • 退職理由による違い
  • 失業保険による違い
  • 退職金の違い
  • 履歴書の書き方の違い

項目ごとに解説します。

退職理由による違い

会社都合退職と自己都合退職は、退職理由により区別されます。

会社都合退職とは、主に会社の事情などで退職せざるを得ないことです。例えば、以下のような理由が該当します。

  • 倒産(破産、民事再生、会社更生等など)により退職したとき
  • リストラにより退職したとき
  • 解雇、事業所の廃止により退職したとき
  • 事業所の移転により、通勤することが困難となったため退職したとき
  • 労働契約に明示された労働条件が事実と著しく違うために退職したとき
  • 一定期間の給与未払いまたは15%以上のカットがあったとき
  • 過度な時間外労働などがあったとき
  • 上司や同僚から嫌がらせを受けたことが原因で退職するとき
  • 会社から退職勧奨を受けたため退職したとき(合意の有無に関わらず)
  • 有期雇用において3年以上更新されてきたまたは更新されると明記されているにも関わらず労働契約が更新されなかったとき
  • 有期雇用において更新される場合があると明記されておりかつ更新を希望したにも関わらず労働契約が更新されなかったとき(特定理由離職者)
  • 正当な事由のある自己都合により退職したとき(特定理由離職者)

など

参照:厚生労働省|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

一方、自己都合退職とは、労働者が自身の都合で退職することをいいます。結婚、子育て、キャリアアップ、転居、介護などが該当する離職理由です。

一般的に、自己都合退職は自身で退職の時期を決められるため、離職期間中の生活費など退職に向けた準備をする時間的余裕があります。しかし、会社都合退職の場合は唐突に退職しなければならなくなるため、法律などで労働者が保護されています。

失業保険による違い

失業保険の受給要件は会社都合による退職か自己都合による退職かで異なります。主な違いを表にまとめました。

内容 会社都合退職 自己都合退職
受給資格(雇用保険の加入期間) 離職前1年間で6か月以上 離職前2年間で12か月以上
失業保険を受給できるまでの期間 待機期間7日 待機期間7日間
+給付制限期間2か月間
(5年以内に2回以上離職している場合3回目は3か月間)
失業保険の給付期間 90日~240日(年齢と被保険者期間により異なる) 90日~150日(被保険者期間により異なる)

つまり、会社都合退職の場合は、雇用保険の加入期間が6か月あれば、手続きしてから約1か月間で失業保険を受給でき、受給期間も長くなっています。自己都合退職の場合は、手続きしてから受給できるまで約3か月から4か月の期間がかかるため、退職前に金銭面の用意をしておかなければなりません。

このように、会社都合退職は、自己都合退職より失業保険の給付を受けやすくなっています。会社都合退職は労働者自身に落ち度がなくても退職せざるを得ないため、経済的困難を避けるために保護されています。

退職金の違い

退職金においても、会社都合退職と自己都合退職では異なる場合が多いです。

退職金の支給は法律で義務付けられているわけではないため、会社によって条件や内容が異なります。退職金制度は社内規定で定められていることが多く、年齢や勤続年数、基本給の金額などにより支給額が決まるのが一般的です。

退職時に一括で支払われる場合、会社都合退職のほうが自己都合退職より退職金の金額が大きい傾向があります。会社都合退職は会社の事情で退職となるため、退職金が上乗せされることが多いです。

ただし、確定拠出年金など年金形式で退職金が支払われる場合は、会社都合退職でも自己都合退職でも金額が変わらない場合もあるため、注意が必要です。

履歴書の書き方の違い

会社都合退職の場合、履歴書の退職理由に何と書けばよいのか迷うこともあるでしょう。

基本的に、会社都合退職の場合の退職理由は「会社都合により退職」と書きます。履歴書に詳しい事情を記載する必要はありませんが、備考欄に「会社の業績不振のため」などと理由を記入することも可能です。面接で質問された場合は、理由と併せて、「突然退職することになって動揺したが、すでに気持ちは切り替えており、新しい職場では積極的に仕事に取り組みたい」などとモチベーションをアピールすることが重要です。

自己都合退職の場合は「一身上の都合により」と書くのが一般的です。この場合も詳しい事情の記入は不要ですが、面接では理由を質問されることが多いため回答を準備しておきましょう。

会社都合退職と自己都合退職の注意点

雇用保険の書類

会社都合退職や自己都合退職では、退職時に気をつけておくべき注意点があります。

  • 自己都合から会社都合に変更できる場合がある
  • 会社から自己都合にしてほしいと言われる場合がある
  • 会社都合が転職で不利になるとは限らない

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

自己都合から会社都合に変更できる場合がある

退職時には自己都合退職だとしても、退職理由によって退職後に会社都合退職に変更できる場合があります。例えば、「ハラスメントを受けて会社に行けなくなった」「給料が未払いだったため自分から退職した」など、やむを得ない理由があった場合です。

そのため、会社が自己都合退職と判断しても、ハローワークに申し立てて認められれば会社都合退職に変更できて、失業保険の受給も会社都合退職として受けられます。会社の判断に異議がある場合は、退職理由を客観的に判断できる書類を添えて、ハローワークに相談しましょう。

ただし、退職金は会社の判断によって支給されるため、会社都合退職として支給額が増額されることは難しい場合が多いです。

会社から自己都合にしてほしいと言われる場合がある

本来なら会社都合退職に該当するはずなのに、会社から自己都合退職として退職届を提出するよう求められる場合があります。厚生労働省からの助成金を受け取れなくなるなど会社側の事情によるものであり、労働者側には自己都合退職にする理由はないケースがほとんどです。

会社から頼まれても、自己都合退職を希望しないのであれば、はっきりと断りましょう。弁護士などの専門家に相談するのもひとつの方法です。

会社都合が転職で不利になるとは限らない

会社都合で退職し転職活動をしていると、面接などで不利になるのではないかと不安に感じることもあるでしょう。

しかし、会社都合退職だけが理由で転職に不利になるとは限りません。倒産や会社都合であれば、応募先の企業が会社都合退職の詳しい事情を知りたがることは少ないためです。

応募先の企業は、会社都合退職の事情よりも、退職を余儀なくされたことにより意欲を失い仕事へのモチベーションが下がってしまったのではないかと気にするほうが多いでしょう。転職先でもやる気があることをアピールするのが重要です。

会社都合・自己都合の違いを理解して、慌てず適切に対応しよう

ファイルを持つスーツの女性

退職は、退職理由の違いにより会社都合退職と自己都合退職の2つに分けられ、失業保険の受給内容や退職金の金額などが変わります。会社都合退職は会社の事情で突然退職しなければならなくなるため、失業保険が受給しやすくなっていたり退職金が上乗せされたりして、労働者を保護するように法律や制度が設けられています。

会社都合退職と自己都合退職は、転職活動において、どちらかが採用で不利になるとは限りません。転職活動では、退職理由に関わらず、転職先でも意欲的に仕事に取り組んでいこうというやる気をアピールすることが大切です。

会社都合退職と自己都合退職の違いを正しく理解することで、退職後に慌てることなく手続きを進められます。損をしないためにも、日ごろから退職理由の違いによる手続きの違いなどを把握しておきましょう。