
「退職代行を使うのはクズだ」「退職代行なんてありえない」。こうした厳しい意見を耳にして、退職代行の利用を躊躇している方も多いのではないでしょうか。
たしかに、退職は本来自分の言葉で誠意を持って職場へ伝えるべきものです。しかし、状況によっては退職代行に頼りたくなるケースも存在します。
この記事では、退職代行に対する世間の見方や、利用する前にとりたい選択肢、そして退職代行の利用を検討してもよい状況について、冷静に解説していきます。
退職代行は「クズ」「ありえない」といわれる真相

退職代行が「クズだ」「ありえない」といわれるのには理由があります。
退職代行を利用して急に退職すると職場内に動揺が生じます。担当していた仕事を引き継ぐ人は負担が増え、不満を感じるかもしれません。
また「退職したいときは直接対話するのが当たり前」「あいさつもなく辞めるのは非常識」という価値観が色濃く存在する世代や業界もあります。そのため、退職代行を使って本人が何も言わずに退職するのはクズ・ありえないと厳しい意見を受けてしまうのです。
退職の意志は本来自分の言葉で誠意を持って職場に伝えるべきものですが、やむを得ず退職代行を使うケースもあります。状況を知らない第三者の視点から批判されてしまうこともあるため、退職代行がクズ・ありえないという見解は、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
次章では、退職代行を使う前にすべきことを見ていきましょう。
退職代行を使う前にすべきこと

この章では、退職代行を実際に使う前にすべきことを解説します。最終的に退職代行を使って退職したとしても「クズ」「ありえない」とまで思われないよう、すべきことをしておくことが大切です。
まずは自分の意志で退職の意思を伝える
退職を決めたら、まずは自分の意思で退職を職場に伝えましょう。初めから退職代行が代わりに職場へ連絡すると、職場の上司や同僚にとっては寝耳に水です。驚きや動揺から不満や怒りにつながる可能性があります。
退職を伝えるのは勇気がいることです。しかし、このステップを踏むことで、周囲に最低限の誠意は伝えられるはずです。想像していたよりもスムーズに退職に向けて進められる場合もあります。
引き止められたら退職代行以外の相談先を先に検討する
退職したいと自分で伝えても、上司から引き止められる可能性があります。仮に引き止められたとしても、すぐに退職代行を頼るのではなく、先に退職代行以外の相談先を検討しましょう。
退職代行以外には、以下のような相談先に相談してみましょう。
- 直属の上司の上司(部長や役員など、さらに上の役職者)
- 人事部門
- 社内のコンプライアンス窓口や外部相談窓口
- 労働基準監督署への相談
このように、退職代行以外にも助けてくれる窓口があります。上記のような相談窓口を使うことに対して「クズ」「ありえない」と評価する人はほとんどいないでしょう。批判されにくいという点では、退職代行よりも頼りやすい相談先ともいえます。
退職代行を利用してもよいケース

どうしてもやめさせてもらえないけれど、以下のようなケースに当てはまる場合は、退職代行を利用してもよいでしょう。
- 精神的ダメージを受けていて限界である
- 退職の話をまったく聞いてもらえない
- 強引な引き留めにあっていて辞められない
- 未払い給与や退職金など金銭の請求がある
ひとつずつ詳しくみていきます。
精神的ダメージを受けていて限界である
職場内のトラブルや人間関係、仕事へのストレスなどが原因で、すでに精神的にダメージを受けているのに辞めさせてもらえない場合は、退職代行を利用してもよいでしょう。精神的に限界だと感じているのに、どうしてもやめさせてもらえないまま職場に居続けることで、ダメージが悪化して体調や精神面で不調が出てしまう恐れがあるためです。
これ以上の精神的負担が耐えられないのに辞めさせてもらえない場合は、退職代行を利用するのもやむを得ないといえます。
退職の話をまったく聞いてもらえない
退職の意志を職場に伝えても、まったく話を聞いてもらえない場合は、退職代行を利用するのも選択肢のひとつになります。
退職したいと話そうとしても、上司や会社にまったく取り合ってもらえず、伝えることすらできない状況も考えられます。陰湿なハラスメントが横行している場合、個人で対応するのが難しいケースもあるでしょう。
話を聞いてもらえないままでは、退職へ向けて動けない恐れもあります。どうしても難しい場合は、退職代行を利用してもよいでしょう。
強引な引き止めにあっていて辞められない
話は聞いてもらえたけれど、強引な引き止めにあって辞めさせてもらえないこともあります。前述の退職代行以外の相談先へ相談しても、なお難航している場合は、退職代行を依頼するのもひとつの手段です。
引き留められ続けていると、精神的な疲労も蓄積していきます。。どの相談先に相談しても、退職に向けて前進しない場合は、退職代行を利用してもよいでしょう。
未払い給与や退職金など金銭の請求がある
やめさせてもらえないうえに、未払い給与や退職金など支払ってもらえない金銭がある場合は、退職代行を利用するのもやむを得ないでしょう。
退職にともなって金銭の支払いを請求するには、会社と直接交渉しなければなりません。やめさせてもらえない状況で自分で交渉しようとしても進まず、受け取れるはずの金銭を受け取れない可能性もあります。
弁護士が運営している退職代行を利用すれば、代わりに請求してもらえるサービスもあります。運営元を調べたうえで利用を検討してもよいでしょう。
退職代行を使う場合の注意点

退職代行を使う場合には、以下のような注意点をおさえておくことが必要です。
- いきなり使わない
- 引継ぎ資料を残しておく
- 悪徳業者に注意する
- 狭い地域・業界では噂になることもある
項目ごとに解説します。
いきなり使わない
退職代行を使って突然辞めると、職場には良くない印象を与えてしまいます。
何の前触れもなく「いきなり退職代行から連絡が来て本人と連絡がとれない」という状況は職場からすると避けたいものです。
退職代行を利用する前に、まずは自分で退職の意思を伝えるなど、ステップを踏むことが大切です。最終的に退職代行を利用したとしても、段階を踏んでいれば「クズ」「ありえない」とまで言われる可能性は低くなるでしょう。
引継ぎ資料を残しておく
退職する際は職場にもよりますが1ヶ月程度前に職場に申し出るのが一般的です。退職までの期間に退職の準備をすることが多く、担当する仕事の引き継ぎもその期間にできます。
しかし、退職代行を利用すると後任の担当者に引き継ぐ時間がないため、職場に混乱が生じます。
退職代行を利用する場合は、前もって引継ぎの資料を残し、後任者が困らないように準備しておくことも大切です。
悪徳業者に注意する
退職代行は、運営元によって、できる行為とできない行為があります。ときには、違法行為に該当する場合もあるため、注意が必要です。
例えば、賃金や残業代の未払いや未消化の有給休暇など職場との交渉がある場合、弁護士が運営する退職代行はおこなえますが、弁護士以外が運営している退職代行がおこなうと違法行為とみなされる場合があります。
運営元やサービスの内容を調べたうえで、利用する退職代行を選ぶことが大切です。
狭い地域・業界では噂になることもある
狭い地域や業界では、退職代行を使ったことが噂になる場合があります。経営者同士のつながりや地域のコミュニティなどで退職代行を利用したことが伝わると、同業界や同エリアで転職活動をする場合に否定的にとらえられる可能性もあります。
同業界に転職したい場合や、顔見知りが多く狭い地域で退職する場合には、退職代行の利用をより慎重に判断することも必要です。
退職代行は最終手段、使う場合は残る人への配慮を

退職は本来自分で職場に伝えるものですが、状況によっては退職代行を利用したくなる場合もあります。しかし、退職代行はあくまで最終手段です。まずは、自分で退職の意思を伝え、受け入れてもらえなければ退職を助けてくれる相談窓口に相談して、自分で退職できるように働きかけることが必要です。
それでもどうしても辞めさせてもらえず、やむを得ない状況であれば、退職代行を利用してもよいでしょう。利用する場合も、退職後の職場から不満が出ないように、残る人へ配慮を忘れないことが大切です。
「クズ」「ありえない」といった評価を受けることなく退職できれば、転職活動も自信をもって進められるでしょう。