パートから正社員になる

「今より好待遇で働きたい」「収入アップを目指したい」といった理由で、パートから正社員になることを検討している人も多いでしょう。しかし、働き方が多様化してきている今、正社員であることが全ての人にとってベストともいい切れません。

そこで本記事では、パートから正職員を目指す方法だけでなく、正社員になるメリット・デメリットや非正規雇用労働者にまつわる近年の法改正なども詳しく解説します。自分に合った道を選択するための参考にしてください。

パートから正社員を目指す方法は主に2つ

パートから正社員を目指す方法

パートから正社員になるには、正社員登用制度を活用する方法と他社へ転職する方法の2つがあります。それぞれ詳しく確認しておきましょう。

正社員登用制度を活用する

現在のパート先が「正社員登用制度」を導入している企業であれば、この制度を活用して正社員を目指す方法があります。

正社員登用制度とは、パートやアルバイト、派遣社員などの非正規雇用労働者を、正社員に切り替える制度です。企業と非正規雇用労働者の双方がこれまで育んできた関係性を踏まえて検討できるため、入社後のミスマッチが起こりにくいといわれています。

ただし、正社員登用制度は法律で導入を義務付けられているものではありません。そのため、企業ごとに採用基準が異なっていたり、企業によっては制度が導入されていなかったりする点に注意が必要です。

他社へ転職する

現在のパート先が正社員登用制度を導入していない場合や、新たな環境で正社員を目指したい場合には、他社への転職も視野に入ります。

このケースでは、未経験の業界・職種にチャレンジすることも、これまでの経験を活かして求人活動を行うことも、どちらも可能です。これまで慣れ親しんできた職場や人間関係から離れることが心配な人もいるかもしれませんが、今より自分に合った環境で働ける可能性もあります。

現職を続けながら効率的に転職活動を行うためには、求人サイトなどを活用するとよいでしょう。日頃からこまめに情報収集をしておくだけでも、自分に合った勤務先に巡り合いやすくなります。

そもそも、パートと正社員の違いとは?

パートと正社員違い

パートから正社員になるかどうかを判断するためには、「そもそも、パートと正社員とではどのような違いがあるのか」を正しく理解しておく必要があります。

パートと正社員の主な違いは、下表のとおりです。

パート 正社員
雇用期間 有期
(同じ企業で通算5年以上働くと有期雇用契約から無期雇用契約への転換が可能)
無期
勤務形態 所定労働時間よりも短時間の勤務が可能 原則としてフルタイム
(企業によって時短正社員制度もあり)
給与形態 時給制 月給制または年俸制
社会保険・雇用保険 勤務時間数や社員数による 必ず加入する
福利厚生・手当 ・基本的に交通費・有給・産休はある
・住宅手当や保養所の利用などは適用されないケースが多い
企業が提供する福利厚生や手当で条件に合うものは基本的に全て受けられる
業務内容 正社員のサポート的な業務や軽作業が多い 責任ある仕事を任される

正社員とパートの違いをより詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。

正社員とパートの違いは?保険や福利厚生はどうなる?それぞれのメリットデメリットを解説!

パートから正社員になる4大メリット

20代女性 グレースーツ

パートから正社員になった場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは4つのメリットをピックアップして紹介します。

収入アップ・安定化が期待できる

時給制で採用されることが多いパートの場合、出勤時間数により収入が変動する点がネックです。自発的に長期休暇を取った場合だけでなく、年末年始など企業の休業日が多い月にも収入が減ってしまいます。

一方、月給制もしくは年俸制の正社員になれば、基本的には出勤日数が減っても収入は大きく変動しません。収入がアップ・安定化すれば、扶養範囲を気にせず働けるようになるケースもあるでしょう。

さらに退職金が支給されたり、将来受け取る年金額がアップしたりする場合は、老後の経済的不安の軽減にもつながります。

雇用条件や待遇が手厚くなる

パートから正社員になると、雇用期間の定めがなくなります。さらに手当や待遇もパート時代よりも手厚くなるため、長く、安心して働ける環境が整うのも大きな特長です。

ただでさえ先行きが読みづらく、将来への不安感が増してきている今、より安心して安定的に働ける雇用条件や待遇を求めるのは自然の流れでしょう。正社員は、雇用契約の更新を気にせず、より好待遇で働きたい人にとって魅力的な働き方だといえます。

キャリアアップが見込める

パートから正社員になると、業務内容も変化します。パートでは正社員のサポート的な業務を任されることがほとんどですが、正社員になるとより企業の利益追求や運営などに関わること任されるようになり、業務の幅・量ともに増していくでしょう。

課長、次長、部長、などの役職を得て、より大きな裁量をもって働ける可能性があるのも正社員のメリットといえます。

加えて無期雇用によって長く経験を積み上げていけるため、将来的なキャリアアップも見込めます。

社会的信用を得やすい

「長く安定的な収入が期待できる」ことは、社会的な信用にも直結します。例えば、各種ローンやクレジットカードの発行において、パートやアルバイトよりも正社員のほうが安定的かつ継続的な収入があるとみなされやすい傾向があります。

社会的信用を高めたい場合、正社員への転向は有効な一手です。

パートから正社員になるデメリットは?

パートから正社員デメリット

パートから正社員になれば多くのメリットが得られる一方で、いくつかの懸念点があるのも事実です。自分に合った選択ができるよう、パートから正社員になる際のデメリットもしっかりと把握しておきましょう。

パート時代より時間の融通が利きにくい

正社員の場合、「1日8時間」「週40日」のフルタイム勤務が定められているケースが一般的です。そのため、時間制のパートと比べると時間の融通は利きにくくなるでしょう。

しかしなかには、「育児や介護などプライベートの事情によって長時間働くことが難しいものの、雇用条件などを考えると正社員で働きたい」という人もいるでしょう。

そういった人におすすめなのは、「短時間正社員」です。短時間正社員であれば、労働時間以外の雇用条件はフルタイム正社員と同等に働けます。

ただし、すべての企業が短時間正社員制度を導入しているとは限らない点には注意が必要です。

参考:厚生労働省「短時間正社員制度について」

業務範囲が広がることで責任や負担が増す

パートから正社員になると任される業務範囲が広がるということは、それだけ責任や負担も拡大するということです。

業種によっては、目標やノルマの達成が課せられることもあるでしょう。また、関わる人が増えることで、人間関係に悩む機会も増えるかもしれません。

上記のような責任や負担の増加に対して強いプレッシャーや不安を感じる場合は、正社員以外の働き方も模索してみるとよいでしょう。

転勤や異動の可能性がある

全国展開や多くの拠点を抱える企業の場合、正社員になることで転勤や異動の可能性が上がる点もデメリットのひとつです。また、そういった辞令を受けた際にはなかなか断りづらいという正社員の声もよく聞かれます。

転勤や異動は私生活に大きな影響を及ぼすイベントで、「本音をいうと避けたい…」という人も少なくないでしょう。そういった人は、地域密着型など拠点がひとつしかない企業や、勤務地域が限定されている雇用形態を選択するのがおすすめです。

パートと正社員の格差は是正されつつある

パートと正社員格差

多様な人材を活用するためにさまざまな雇用形態が登場している今、働き方の違いによる賃金や待遇の格差を是正する動きが見られるようになりました。その一例として挙げられるのは、「同一労働同一賃金」の適用です。

同一労働同一賃金とは、同一企業における正社員と非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の解消を目指すもので、2021年4月より全ての企業に適用されました。

このように、雇用形態によらず、個人の働きぶりや能力などが適正に評価されるような環境づくりが進められている状況も踏まえたうえで、今後の働き方を検討する必要があります。

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」

パートから正社員になるかどうかを見極める際には、以下のポイントに着目するとよいでしょう。

  • ワークライフバランスが取れるか?
  • 希望する収入が得られるか?
  • 仕事内容やキャリアは納得できるものか?

また、同じ企業で5年以上パートとして働いている場合は、「無期雇用転換ルール」の活用も検討してみるとよいでしょう。

無期雇用転換ルールとは、同一企業で、「有期労働契約が5年を超えて更新された場合」に、有期契約労働者からの申込みによって「期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換」されるルールです。パート側から申し出を受けた場合、企業はこのルールの適用を断れません。

参考:厚生労働省「無期転換ルールについて」

まとめ:パートから正社員になるメリット・デメリットを理解したうえで自分に合った働き方を選択しよう!

先行きが不透明で、将来への不安感が増してきている今、パートより安定的に、好待遇で働ける正社員という立場は魅力的に見えるでしょう。しかし、正社員になることにもデメリットがあるうえ、近年は待遇の格差も是正されつつあります。

最適な選択ができるよう、今一度「自分に合う働き方」を見つめ直してみましょう。