退職が決まったら、社内のお世話になった人や社外の取引先などに退職の挨拶をします。しかし、誰にどのように挨拶すればよいのだろうと不安に感じる人もいるでしょう。
退職の挨拶は、相手との関係によって伝える内容や方法が変わります。ポイントを押さえて失礼にならないように感謝の気持ちを伝える挨拶をしなければなりません。
この記事では、退職の挨拶のマナーとポイント、注意点を解説します。印象に残る挨拶の例文をご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
退職の挨拶のマナーとポイント
退職の挨拶は、マナーを守って礼儀正しく行うことが大切です。会社を退職するのに相手に失礼な挨拶をしてしまっては後味がよくありません。転職先や独立後に仕事で再会する可能性もあるため、気持ちよい挨拶をして良い印象のまま退職したいですね。
この章では、退職の挨拶のマナーとポイントを解説します。良い印象を与えて気持ちよく退職するために、ポイントを押さえた挨拶をしましょう。
退職の挨拶は誰にする?
退職の挨拶をどの部署や取引先まですればよいのか、迷う人は多いでしょう。誰に挨拶すればよいのかは、会社の規模や職種などによって異なります。
社内では、お世話になった上司や先輩、同僚、後輩に挨拶します。社員全員が顔見知りのような規模の小さい会社の場合は、ひとりずつ席を回って挨拶すると丁寧な印象を与えます。規模の大きな会社の場合は、業務で関わったことのある部署へ挨拶しましょう。
営業など社外で取引先やパートナーと関わる職種の場合は、現在取引のあるところだけでなく、過去に取引した相手にもできるだけ挨拶することをおすすめします。退職後に仕事で再び関わる可能性もあるため、覚えておいてもらうためにも退職の挨拶をするとよいでしょう。
退職の挨拶はいつする?
退職の挨拶のタイミングは、社外と社内で異なります。タイミングを間違えると相手に対して失礼になるおそれもあるため、時期を見極めましょう。
社外へ挨拶するタイミング
社外への挨拶は、退職の2~3週間前がちょうどよいタイミングです。
退職間際になると、引き継ぎの時間がとれないのではないかと取引先不安にさせてしまいます。また、退職前に何かトラブルが起こった場合でも、退職日まで時間に余裕があれば対応が可能です。
ただし、社内で退職が周知される前に、社外へ退職を知らせることは避けましょう。社内に退職が周知され、後任の担当者が決まってから挨拶するのが、ベストなタイミングといえます。
取引先の会社を訪ねる際は必ずアポイントを取り、できれば後任の担当者と一緒に訪問します。そうすれば、相手が今後の取引に不安を感じることなく、会社として良い印象を与えられるでしょう。
現在取引している場合は、改めて退職の挨拶をする以外にも、通常の打合せに後任の担当者が同席して引き継ぎを兼ねるケースもあります。私も取引先からそのように後任を紹介された経験があります。
相手が忙しくてアポイントが難しい場合は、電話で退職することと感謝の言葉を伝え、メールで挨拶文を送るとよいでしょう。メールで挨拶する場合は、文中に後任の氏名と連絡先を必ず入れます。「後日、後任からご連絡させていただきます」など一文を添えると、丁寧な印象を与えられます。
社内へ挨拶するタイミング
社内への挨拶は、退職の報告というより最後の挨拶という意味が強いため、退職日に行います。有給休暇の消化などで退職日に出勤しない場合は、最終勤務日がよいでしょう。
時間帯は、業務に支障が出ないように、夕方以降から退勤時間までの間に行います。複数の部署を回る場合は、退職時間を過ぎないように時間配分を考えて行う必要があります。
退職の挨拶は電話?メール?直接会う?
退職の挨拶は、直接会ってするのがおすすめですが、メールや手紙、電話で挨拶するケースもあります。相手との関係性によって、失礼にならない方法を選ぶことが必要です。
近年ではメールでも失礼ではない
近年では、オンライン勤務が増えた影響もあり、メールで退職の挨拶文を送るケースが多くなっています。以前はメールで送ると失礼だとみなされる傾向がありましたが、最近では決して失礼にはあたりません。
挨拶するべき相手が多かったり多忙だったりする場合、全ての人に会いにいくのは現実的ではありません。相手に無理をさせてアポイントを取るよりは、メールで丁寧な挨拶文を送るほうが気遣いを感じられるケースもあります。実際に、私も、メールで退職の報告を受け取ることが多いです。
メールだけでは足りない場合は、メールのあとに電話をかけるとさらに丁寧な対応になり、良い印象を与えられるでしょう。
一斉メールを送るポイント
複数の人にメールで挨拶する際には、一斉メールを送るのもひとつの方法です。
一斉メールで退職の挨拶をする場合は、特定の人だけがわかる具体的なエピソードは避け、これまでの感謝の気持ちと今後の抱負などを中心にした挨拶文にするとよいでしょう。
また、一斉メールでは、送り先のメールアドレスの入力方法に注意が必要です。自分のメールアドレスをTOに入力し、相手のメールアドレスをBCCに入力します。相手のメールアドレスをTOやCCに入れてしまうと、送信先の他の人にも見られてしまうため、間違いのないように注意しましょう。
特にお世話になった人や年配の人には会いに行く
近年ではメールで退職の挨拶をしても失礼にはあたりませんが、特にお世話になった人には直接会って感謝の気持ちを伝えましょう。直接会えば会話が弾み、誠実な印象を与えることができて、将来に向かって長くお付き合いできる可能性が広がります。
また、年配の人のなかにはメールは失礼だと考える人もいます。相手の考え方によっては会って挨拶するほうがよい場合があるため、相手のことを考えて適した方法を選びましょう。
【例文つき】退職の挨拶・スピーチで伝えるべきこ
退職の挨拶やスピーチの内容に頭を悩ませる人は多いでしょう。伝えるべきことと伝えなくてもよいことをしっかりと整理して、わかりやすく話すことが必要です。
この章では、退職の挨拶やスピーチで伝えるべきことを、例文をつけてご紹介します。
退職日と退職理由の報告
退職の挨拶では、退職日を忘れずに入れましょう。社外への挨拶は退職日より早い日程でするため、「〇月〇日付けで退職します」とはっきりと日付を伝えます。社内で退職日に挨拶する場合は、本日付でと伝えるとよいでしょう。
退職理由は、「一身上の都合により」や「家庭の事情により」など、簡潔に伝えます。
(個別メール例)
タイトル:
退職のご報告/〇〇株式会社 〇〇
△△株式会社
△△様
大変お世話になっております。
〇〇株式会社の〇〇でございます。
私事で大変恐縮ですが、一身上の都合により〇月〇日付けで退職することとなりました。
在職中は大変お世話になりまして誠にありがとうございました。
(スピーチ例)
本日はお忙しいなか、このように挨拶のお時間をいただきまして、ありがとうございます。
本日をもちまして、一身上の都合により退職することとなりました。入社して以来、皆様には大変お世話になりまして、ありがとうございました。
今までお世話になったお礼
退職の挨拶では、今までお世話になったことにお礼を述べます。入社してから今日まで指導してもらったり協力してもらったことに感謝の気持ちを伝えます。
直接あるいは個別のメールで挨拶する場合は、相手から直接助けてもらったことなど、自分に良い影響を与えてくれたことに具体的にお礼を述べると、感謝の気持ちが伝わりやすくなるでしょう。
(個別メール例)
入社してから〇年間、〇〇さんにはいつも相談に乗っていただき、誠にありがとうございました。辛いことがあっても、〇〇さんにかけていただいた言葉にいつも励まされてきました。
スピーチの場合は大勢の前で話すため、入社して良い経験ができたことなど、誰が聞いてもわかりやすい内容で話すことが大切です。
(スピーチ例)
この業界は未経験だった私に、業務の内容や仕事の流れなど丁寧にご指導くださり、本当にありがとうございました。私がここまでやってこれたのは、皆様が暖かく見守ってくださったからです。
具体的なエピソード
具体的なエピソードを盛り込むと、感謝の気持ちが伝わりやすくなるのでおすすめです。新人のころの失敗談や上司や先輩からもらったアドバイスなどを盛り込むと、聞いている人は当時の状況を思い返し、ありがとうという言葉だけでない実感が湧くでしょう。
(個別メール例)
入社してすぐのころ私が〇〇を間違えて注文してしまったとき、〇〇さんは、失敗したあとにしっかりと対応することが大切だと私を励ましてくれました。そのおかげで私はいつも前向きにがんばることができました。
今後の抱負
退職したあとどのようなキャリアや人生を送りたいかなど、今後の抱負を述べましょう。今までの会社で得た経験が活かせることを伝えられると、上司や先輩にも伝わりやすくなります。
(個別メール・スピーチ例)
今後は全く異なる業界で働くことになりますが、今まで教えていただいた仕事の基本を新しい仕事に活かしてがんばりたいと思います。
相手や会社の繁栄を祈る言葉
最後に、相手や会社の繁栄を祈る言葉を添えます。メールの場合は、直接会いに行けなかったことを謝罪する言葉を入れると、丁寧で誠実な印象を与えます。
(個別メール例)
末筆になりますが、今まで賜りましたご厚情に厚く御礼申し上げ、御社の更なる発展と〇〇様のご健康とご活躍を心よりお祈り申し上げます。本来ならば直接お会いしてご挨拶するべきところ、メールでのご挨拶となりましたことをお詫び申し上げます。
本当にありがとうございました。
スピーチでは、上司や同僚の今後の活躍を祈る言葉で締めくくります。
(スピーチ例)
最後になりますが、皆様のご健康と今後のご活躍を心よりお祈りしております。
〇年間、大変お世話になりました。
本当にありがとうございました。
退職の挨拶・スピーチでの注意点
退職の挨拶やスピーチでは、伝えてよいことと伝えないほうがよいことがあります。注意点をしっかり理解して、良くない印象を与えないように注意しましょう。
詳細な退職理由は伝えない
退職理由を詳細に説明する必要はありません。挨拶をする相手はこのあとも会社に勤務し続ける社員であったり、取引を続ける取引先であったりします。詳細な退職理由は今後の仕事に支障が出る可能性もあるため、伝えないほうがよいでしょう。
結婚や出産などおめでたい理由の場合は伝えてもよいですが、具体的な家庭の事情を話すのは避けましょう。
ネガティブなことを言わない
仕事の愚痴や会社の悪口など、ネガティブなことは言わないようにしましょう。挨拶を聞く社員は今後も会社で働いていくため、ネガティブな話を聞くとモチベーションを下げてしまうかもしれません。同じ業界で転職する場合は、将来的にクライアントになる可能性もあります。
特に、同じ業種で転職する場合は、転職先で取引する場合があるため注意が必要です。私も、転職後に前職と取引する機会があり、円満に退職したことでなごやかに商談を進められた経験があります。
ネガティブな理由で退職するとしても、最後の挨拶は前向きな言葉で伝えて、お互いに気持ちよく終わらせられるようにしましょう。
転職先は敢えて伝えなくてもよい
転職先を敢えてこちらから伝える必要はありません。隠すのも勘ぐられることがあるため、聞かれれば答えてもよいですが、こちらから積極的に話す必要はないでしょう。
相手への感謝の気持ちを表す
退職の挨拶で一番大切なのは、相手への感謝の気持ちを表すことです。仕事はひとりではできません。周囲の人との関わりや協力があってこそ、スムーズに仕事を行えます。退職の挨拶はこれまで手助けしてもらったことへの感謝を表す場です。
感謝されて嫌な気持ちになる人はいないでしょう。たとえネガティブな理由で辞めるとしても、感謝を言葉に出せば、わだかまりを残さず気持ちよく去ることができます。
退職の挨拶は今までの感謝を伝えて、良い印象を与えて良好な関係を保ちながら、次の職場へ向かうためのステップだと考えましょう。
相手が忙しいときは簡潔に
ひと言で挨拶するように求められた場合や、直接会って挨拶する際に相手が忙しい場合は、相手に時間をとらせないように、簡潔に伝えましょう。エピソードなどは省略し、感謝の言葉をしっかりと伝えるようにします。短い中にも伝えるべきことをしっかりと盛り込むことが大切です。
(ひと言での挨拶例)
本日をもちまして退職することとなりました。入社してから今まで大変お世話になりました。ここで学んだことを次に活かして、今後も精進してまいります。
皆様のご健康と今後のご活躍をお祈りしております。
本当にありがとうございました。
まとめ
退職の挨拶では、マナーを守って良い印象を与えることが大切です。相手によって伝え方や内容を変えながら、社内や社外でお世話になった人に感謝の気持ちを伝えましょう。
近年では、メールで挨拶することが増えました。直接会わずにメールで退職の挨拶をしても、決して失礼にはあたりません。多忙な場合はメールのほうが相手への配慮になるケースもあります。
今まで教わったことや相手への感謝を具体的なエピソードを入れながら伝えると、共感を得られて印象が良くなります。ネガティブなことは言わず、前向きな言葉で伝えることで、気持ちよく次のステップへ進むことができるでしょう。