
豊橋商業高校インスタグラムより引用
全国的に生徒数が減っている商業高校の中で、近年とても人気になっている豊橋商業高等学校。
公立高校の中で珍しくInstagramやTikTokといったSNSを積極的に活用している学校として知っている方も多いのではないでしょうか。
そんな豊橋商業高校では「宇宙ビジネス」を課題研究として取り入れ、今年度は「超異分野学会2024豊橋フォーラム」への出展も行いました。
この記事では生徒たちが具体的にどのような課題研究を行なったのか、なぜ宇宙ビジネスを取り入れたのか、超異分野学会2024豊橋フォーラムへの出展の様子を通してご紹介していきます。
商業高校が宇宙ビジネス!?
もともと豊橋商業高校では地元企業とのコラボ商品開発など積極的に行なってきました。
一方で、豊橋市が2023年4月「宇宙ビジネス創出自治体」として国から認定を受ける前から株式会社サイエンス・クリエイトによる宇宙ビジネス相談デスク【宙サポ】が宇宙ビジネスに関する地域事業者の相談に乗っていた背景から「総合的な探究の時間に宇宙ビジネス×商業高校で何かできないか?」というプロジェクトが立ち上がりました。
2024年9月にはものづくり博2024 in 東三河にてブース展示も行われました。
2年目となる宇宙ビジネス講座「β」
2年目となる宇宙ビジネス講座。βと題し、昨年に続いて衛星データの分析、ものづくり博in東三河での展示や超異分野学会での発表、さらには実際の企業との連携など盛りだくさんの内容で、豊橋商業高校で宇宙ビジネスの取り組みを実践しました。
今回はコンテンツ別に授業として取り組んだ内容をご紹介したいと思います。
宇宙ビジネス推し活
衛星データビジネスを次々に生み出す企業、株式会社sorano meの代表 城戸彩乃さんより事業紹介をいただき、商業高校生目線で企業PRを考え、実際にInstagramで発信を行いました。
衛星データ見えるラボ
衛星データ見えるラボでは推し活に続いて株式会社sorano meと連携し、実際に記事で使用する衛星データ素材を集めました。トピックごとに、例えば火山の噴火などの場所や発生タイミングをネットで調べ、衛星画像にその様子が写っているかを調べる作業を繰り返し、衛星データ画像素材の集積を行いました。
宇宙食の企画
宇宙食の企画では、市販されている宇宙食の試食を導入として 、SDGsや月面社会実現に向けた取り組みを学びつつ、最小のリソースで月面で製造できるスイーツ作りをテーマに、水資源が少なくてすむかもしれない陸稲や、大豆から豆乳を作って輸送コストが膨大となるであろう牛乳の代わりにするなど、様々なアイディアを出し合いました。
衛星データビジネスプラン創出
ビジネスプランの創出では、東三河ビジネスプランコンテストへの応募を目標として、見えるラボの事業化について検討を行いました。
発信・発表
授業で学んだことの発信を兼ねて、ものづくり博in東三河での見えるラボの展示や超異分野学会で宇宙ビジネス講座での取り組みについての発表を行いました。
- ものづくり博in東三河リンク
https://monohaku.info/ - 超異分野学会リンク
https://hic.lne.st/archive/toyohashi2024/
超異分野学会2024豊橋フォーラムに出展
こうした取り組みの集大成の一つとして、超異分野学会2024豊橋フォーラムへも出展しました。これまでの課題研究の成果を発表する場として、ポスター展示を行い、訪れた方々への説明やディスカッションを実施。
「宇宙ベンチャーを推し活!」と称して宇宙ベンチャー企業にオンラインインタビューを行なって”推しポイント”をInstagramなどで発信、衛星データを使った実習、宇宙で調達可能な食材を想定した宇宙食づくりと試食といったバラエティに富んだ内容が発表されました。
実際に宇宙ビジネスの課題研究に取り組んだ生徒からは
- 実際にニュースでやっているような出来事が衛星データを使って可視化できるのがすごく面白いなと思った
- 衛星データを活用することで今後起こりうる災害などにも役立つことを知り、自分自身でも調べたいと思った
- はじめ宇宙はちょっと怖いからあまり行きたくなかったのが、宇宙食づくりなどを通してちょっと行ってみたいなと思い直した
- 知識が増えて、それを使ってビジネスを考えるとなった時に「どのくらいの値段だったら企業は買ってくれるのか」といったビジネスの考え方が身についた
といった感想を聞かせてくれました。
宇宙ビジネス課題探求には定員を上回る希望者が
また、超異分野学会2024豊橋フォーラムに同行した豊橋商業高校の先生からもお話を伺うことができました。校長の間瀬泰宏氏はフォーラム中の”超異分野スプラッシュ”というプログラムで「ビジネスの視点での学校経営」というテーマでの発表も行なっています。
「身近なテーマとはほど遠い宇宙ビジネスに興味のある生徒はどのくらいいるのだろうか?」という心配はまったくの杞憂で、宇宙ビジネスの講座は課題探求の中で1番人気だったのだそう。
2023年度は年度途中からの取り組みでしたが、人気だったことから2024年度は春から定期的に授業を開催してきました。もともと校内で発表の機会もあるが、超異分野学会のように学外で発表する機会があるのもありがたいとのこと。
高校生にとって「ビジネス」というと身近な商品・サービスのイメージが強いが、宇宙といういわば”最も日常と離れたテーマ”に取り組むことで生徒たちにとっての「ビジネス」の認識がとても広がったのだそうです。
まとめ
課題探求で宇宙ビジネスに取り組む高校は全国で豊橋商業高校が唯一。”すべての教科が実社会とリンクし、すべての教育活動を「ビジネスの視点」で取り組む”校風だからこそできる学びなのかもしれません。
超実践的なSNSマーケティングの授業やスポンサー集めから生徒たちで行うFMラジオ番組づくりなど、チャレンジをし続ける豊橋商業高校の中でも特にチャレンジングであったろう宇宙ビジネスの課題探求。大人たちの心配をよそに生徒たちは楽しみながら他にない学びを得られてきたようです。