宇宙の技術や知見を取り入れたり、宇宙と地上の生活に共通する課題を解決する商品・サービスが注目されています。
さらに人材育成の面でも「変化への対応力、価値創造力、課題解決力」などを身に着けるために宇宙飛行士の訓練方法が注目され、幼児教育から社会人向けの研修でも活用されています。
そんな中で全国で初めて「商業高校×宇宙ビジネス」というコンセプトでの取り組みが課題研究として豊橋商業高校で行われました。一体どんな取り組みだったのか、ご紹介していきます!
なぜ商業高校が宇宙ビジネスを!?
高等学校ではこれまで「総合的な学習の時間」とされていた授業が2022年度より「課題研究」という授業に変更されました。これは生徒が主体的に課題を設定し、情報の収集や整理・分析をしてまとめるといった能力の育成を目的としており、教科や科目等の枠を超えて探究する価値のある課題に取り組んでいくものです。
一方で豊橋市は2023年4月、「宇宙ビジネス創出自治体」として国から認定を受けており、認定よりも以前から宇宙ビジネス相談デスク【宙サポ】が地域事業者の相談に乗っています。
「総合的な探究の時間に宇宙ビジネス×商業高校で何かできないか?」という相談が舞い込んだことから、今回の宙サポと豊橋商業高校コラボでの講座実施につながりました。
追伸
豊橋商業高校生徒×宇宙
ってテーマで何か取り組めますか??
地元企業様とは様々な商品開発してますが、「宇宙」ってまた壮大でワクワクします!— 豊橋商業高校公式アカウント (@toyoshokoushiki) July 15, 2023
豊橋商業高校はこんなところ
全国で商業を学ぶ生徒が最も多い都道府県である、愛知県。その中でも歴史が古く多くの卒業生が地域経済を支えている地元に根ざした商業高校です。
2022年に愛知県教育委員会から発表された「県立高等学校再編将来構想」では商業高校のリニューアルが中心となっており、それを受け今年度の新入生から学科が会計ビジネス科、ITビジネス科、グローバルビジネス科に生まれ変わり、その教育内容も一新されています。
3つのテーマで商業高校生が宇宙ビジネスを学ぶ!創る!
今回の取り組みは4ヶ月間という長丁場。「宇宙ビジネスを推し活!」「月面スイーツを作ろう」「衛星データ活用ビジネスを考えよう」という3つのテーマ&ステップから宇宙を取り巻く教科の垣根を超えた学びや高校生ならではの自由な発想を広げていきます。
宇宙ビジネスを推し活!
まず宇宙ビジネスの全体像がレクチャーされた後、国内外の宇宙ビジネスを内容や社会的意義などをリサーチして”推し活”として高校生が内容をまとめ発表を行いました。
月面スイーツを作ろう
推し活で関心が高まったところで、続いては「2050年の月面基地で提供される月面スイーツ」を考えるチャレンジ。例えば月面でソフトクリームを作ろうとすると乳牛を連れていくのはとても困難ですが、豆乳ソフトクリームであれば大豆の栽培によって実現しやすくなります。このように制限のある月面環境において手に入る食材を検討し、高校生の自由な発想で”月面スイーツ”を考えてもらいました。
衛星データ活用ビジネスを考えよう
3つ目のステップではいよいよビジネスを考える……前に、まず身近なものからアイデアを出していきます。「宇宙×◯◯」の発想でビジネスのタネを見つけ、衛星データの学びやワークショップを経て自分のアイディアへの活用を検討し、ビジネスプランとしてチームごとにまとめました。
豊橋商業高校x聾学校 脱出ゲーム風宇宙飛行士訓練体験にチャレンジ
聾学校生と商業高校生がチームを組み、宇宙飛行士と地上管制官としてテキストチャットや画面共有で意思疎通をしながら『宇宙船ヘルメス号を修理する』という設定のミッションにチャレンジし、インクルーシブな体験を行いました。
制限された状況でのコミュニケーションの難しさを体感しつつも、デジタルガジェットの力で障害を超えたコミュニケーションが可能なことも高校生たち自身が身を以て実感できました。
超異分野学会で登壇
12月に開催された超異分野学会 豊橋フォーラムの超異分野スプラッシュ(研究者やベンチャー、地元事業者らが、90秒間のピッチで、自分のやりたいこと、参加者に求めていることを会場の参加者にぶつける場)にて「豊橋商業高校 はじめての宇宙ビジネス入門コース」というテーマで登壇し、これまでの取り組みについて発表しました。
まとめ
これまで「宇宙について学ぶ場」というと大学で宇宙系の選考へ進むイメージがありましたが、全国的にも高校での宇宙利用人材の育成が活発になりつつあります。
福井県の若狭高等学校では製造実習でつくる「サバ醤油味付け缶詰」がHACCPの認証を受けJAXAにも納品しています。HACCPはもともと宇宙食などの食品の安全性を確保する方法であり、現在は多くの食品の安全性確保に応用されている手法です。
和歌山県にある串本古座高等学校では、ロケット打ち上げをきっかけとした紀南地域活性化や宇宙教育推進のため、自治体や企業が協力して宇宙に関する科目が学べるコースが2024年度から新設されます。
高校で宇宙ビジネスを学べるのが当たり前になる未来は近いかも…!? ご興味のある人はぜひ株式会社サイエンス・クリエイトが行なっている宇宙ビジネス相談デスク【宙サポ】をぜひご利用ください。