転職活動を行うなかで、「転職軸」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。転職軸は、転職活動における求職者の優先条件を表すものであるため、面接で問われることも少なくありません。
そこで本記事では、転職軸の基礎知識や明確化の仕方などを解説します。併せて、面接での回答例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
転職軸とは?
転職軸とは、転職先を選ぶ際に求職者が重視する条件のことです。
新卒時にも「就職活動の軸」として就職先への希望条件をピックアップしますが、まだ社会経験がないために抽象的になりがちです。一方、すでに社会人としての経験を積んだうえで行う転職活動では、新卒時より具体的で明確な希望が挙げられます。
そのため、転職軸は求職者の仕事や働き方の理想・価値観を表すものとも言い換えられます。
転職軸を明確化するための6ステップ
「転職活動で重視することはあるものの、明確に言語化できていない」という人は多いようです。そこでここでは、転職軸を明確化するための6つのステップを紹介します。
ステップ①キャリア・スキルの棚卸を行う
まずは、これまで自分が積み上げてきたキャリアやスキルを書き出してみましょう。この作業を通して、「今の自分にはなにができるか」が見えてくるはずです。
転職活動の肝となる強みやアピールポイントを明確にするために、ここでしっかりと自己分析を行っておくとよいでしょう。
ステップ②キャリアビジョンを作成する
転職は、これまで描いていたキャリアビジョンを見直すよい機会でもあります。社会経験も踏まえて、今一度、キャリアビジョンを作成し直してみましょう。
ここでは、「〇年後に◯◯の仕事に携わる」といったように、具体的な期限と目標を設けておくのがおすすめです。
ステップ③転職したい理由を洗い出す
自分の過去・現在・未来が整理できたら、今度は転職したい理由に目を向けましょう。キャリアビジョンでは、「転職後に実現したいこと」を把握しましたが、ここでは、「現職で抱えている不満や不足点」を把握するのが目的です。
不満や不足点の多くが現職では改善不可能と判断できるなら、転職に踏み切るタイミングだといえます。逆に、不満や不足点はあるものの改善できそうなら、ひとまず現職にかけ合ってみるとよいかもしれません。
ステップ④転職先に希望する条件を明確化する
ステップ③までで「転職後に実現したいこと」と「現状の不満・不足点」が出揃いました。ここでは、両者のギャップを埋めるために必要な条件をピックアップしていきます。
現職では補えないことを転職理由に挙げることで、ネガティブに捉えられがちな「前職の退職理由」もポジティブに置き換えられます。
ステップ⑤転職市場や業界のリサーチを行う
転職では、求職者と企業のマッチングが重要です。そのため転職活動では、企業の希望も重視しながら交渉可能なラインを定める必要があります。
転職市場や業界の相場をしっかりリサーチし、自分の市場価値や適正年収を正しく把握したうえで、適切な条件を提示することが大切です。
ステップ⑥優先順位を決める
「企業に求めることはたくさんある」という人もいるかもしれません。しかし、求める要素が増えれば増えるほど、そのすべてを満たす求人案件数は少なくなってしまいます。
そこで、条件に優先順位を決め、上位3つほどが叶う企業に絞って求人情報を検索するのがおすすめです。順位づけで迷ったときには、「Will・Can・Mustのフレームワーク」を活用してみてください。
Will・Can・Mustのフレームワークとは、ピックアップした条件をWill(やりたいこと)、Can(できること)、Must(やらねばならないこと)に当てはめて考える思考法です。例えば、「自分は介護福祉士の資格を取得しており(Can)、在宅介護に興味がある(Will)、だから訪問介護に携われる会社を希望する(Must)」といった流れで転職軸を固めていくとスムーズでしょう。
転職軸を明確化するメリット
転職軸の明確化は、転職活動にどのような影響を及ぼすのでしょうか?ここでは、明確化によってもたらされる3つのメリットを紹介します。
転職先選びの基準ができる
転職軸がはっきりしてれば、数多くある求人情報のなかから自分の希望に沿う情報を絞り込みやすくなります。転職軸は、効率的な転職活動にも役立つものです。
今後のキャリアビジョンが描きやすい
転職軸には、自分の仕事に対する価値観が色濃く反映されています。そのため、キャリア形成にも活用可能です。
「自分にとって譲れない条件」を軸にキャリアビジョンを展開していけば、理想的な未来に近づける計画が立てられるでしょう。
面接対策につながる
先にも紹介したとおり、転職軸は求職者の希望や価値観を明確に示すものであるため、面接で企業側から問われるケースも少なくありません。つまり、事前に転職軸を明確にする作業は、結果的に面接対策にもつながります。
採用担当者が転職軸から判断している3つのポイント
採用担当者が転職軸からどのようなことを判断しているのかを知れば、より要点を押さえた回答ができるはずです。ここで、多くの採用担当者が見ている3ポイントを確認しておきましょう。
ポイント①価値観は合うか?
「自社と価値観が合うかどうか」は、ほとんどの企業が採用において気にするポイントです。ミスマッチや入社後の衝突を防ぐためには、求職者の希望が反映された転職軸を問うことが有効です。
採用担当者は、転職軸から「求人者と企業との相性」を見ています。採用担当者は、転職軸から「求人者と企業との相性」を見ています。
ポイント②入社意欲は高いか?
企業目線で見ると、せっかく内定を出しても入社までに辞退されてしまえば、採用にかけた時間やコストが無駄になってしまいます。そのため、何人かで採用を迷った場合には、入社意欲が高い人を取りたいと考えるのは自然なことでしょう。
転職軸を聞けば志望動機やキャリアプランもある程度わかるため、現実的に入社したいと考えて応募してきたかどうかも推測しやすいのです。
ポイント③長期的に在籍できるか?
多くの企業は、「せっかく採用して教育するのであれば、なるべく長く自社に留まってほしい」と考えています。
求人者の価値観やキャリアプランと自社の実情との間でミスマッチが少ないほど、自社に長く在籍できると予想できるでしょう。転職軸は、「長期的に在籍可能かどうか」の判断基準にも活用されます。
転職軸になり得る5つの要素
転職先に求める条件のほとんどは、「仕事内容」「待遇」「働き方」「職場環境」「企業方針」の5つに分類できます。転職軸の選別に迷ったら、まずはそれぞれの要素で求める条件を書き出したうえで優先順位をつけてみるのも手です。
①仕事内容
- スキルや資格を活かせる
- 経験を積める
- キャリアアップを目指せる など
②待遇
- 収入アップや昇進が速い
- 福利厚生が充実している など
③働き方
- 希望のエリアで勤務できる
- ワークライフバランスを重視できる など
④職場環境
- 人間関係がよい
- 暑い/寒い場所やアレルギー源を避けられる など
⑤企業方針
- 事業や活動内容に賛同できる
- 将来性がある など
回答に使える転職軸の具体回答例
最後に、転職軸になり得る5つの要素別に、の面接での回答でも使える具体例を紹介します。現在の不満点もいかにポジティブに置き換えられるかがポイントです。
【仕事内容】
- よりスキルアップできる環境に身を置きたい
- キャリアチェンジしたい
- 新しいことにチャレンジしたい など
【待遇】
- 今より収入を上げたい
- 仕事に必要な資格の取得サポートを受けたい など
【働き方】
- 今より残業時間を減らしたい
- 介護や子育てなど、ライフステージの変化に合わせて柔軟に働き方を見直したい
- 仕事もプライベートも充実させたい など
【職場環境】
- 新しい人間関係を築きたい
- より快適な環境で生き生きと働きたい など
【企業方針】
- 経営理念に賛同した など
まとめ:転職軸を明確化し、効率的に転職活動を進めよう!
転職軸は、転職活動における求職者の優先条件を表すものです。優先条件となり得る要素には、「仕事内容」「待遇」「働き方」「職場環境」「企業方針」の5つが挙げられます。
転職軸は、企業にとっては自社との相性や入社意欲などを図る材料としても活用できるものです。そのため、面接で転職軸を問う企業も少なくありません。
転職活動を効率的に進めるために、まずは本記事で紹介した6ステップを参考に転職軸を明確化するところから始めてみませんか。