
大企業で仕事内容や職場環境に不満がたまり、中小企業で働いてみたいと考える人は多いのではないでしょうか。しかし、大企業で働いていたから中小企業でもうまくいくだろうと安易に転職すると、入社後に後悔する可能性もあります。
この記事では、中小企業に転職するメリットや後悔しがちなポイント、転職する際の注意点を解説します。大企業と中小企業の違いや中小企業の実情を理解して、中小企業を選んだことを後悔しないような転職をしましょう。
大企業と中小企業の違い
中小企業には法律的な定義がありますが、大企業にはありません。中小企業基本法にて中小企業の社員数や資本金が定められており、一般的に中小企業以上の規模の企業を大企業と呼びます。
しかし、大企業と中小企業の違いは、単に企業規模や従業員数の違いだけではありません。仕事の進め方や重要視するポイントなどに違いがあります。
例えば、大企業では、仕事を効率的に進めるシステムが導入され、部署ごとに細かく分担して業務を行っています。ひとりが担当する仕事内容は限られており、個人より部署として責任をもって成果をあげていかなければなりません。企業に知名度があることから、大きいプロジェクトを受注する機会も多く、利益の追求だけでなく社会的な貢献度も重要視しています。
対して中小企業は、コストのかかるシステムの導入が難しい場合があり、ある程度人の力に頼って業務を進めるのが一般的です。社会的貢献も大切ですが、経営の安定が最も重要であるため、小さい仕事でも売上を積み上げながら、短いスパンで利益を出していくのが中小企業の経営のやり方です。社員にも、スピーディに売上を伸ばしていくことが求められます。社員数が少ないため、自分で対処できる裁量権が与えられている一方で、ひとりが負う責任が大きいのも特徴です。
大企業から転職したくなる理由
大企業で働いている人が転職したくなるのには、主に以下の理由が考えられます。
- 限られた仕事だけで仕事の幅を広げられない
- 自分の判断で仕事を進められる環境にいたい
- 昇給や昇進の見込みがない
大企業は社員数も部署の数も多く、部署ごとに業務を分担しておこなっているのが一般的です。一人ひとりが決められた仕事を担当することが多く、仕事内容は限られています。
そのため、幅広い仕事にチャレンジしてみたい、自分の判断で仕事を進めてみたい人には物足りない環境かもしれません。大きな裁量権を持って自分の力を試してみたいと転職を検討する人も多いです。
また、大企業では昇給する基準が社内規程で決められており、時間をかけてクリアしていかないと昇給できません。役職の数も限られているため、力があってもなかなか昇進できないことも珍しくありません。自分の力に見合った役職やポジションに就きたい、結果を出せばスピーディに昇給や昇進できる企業で自分の力を試してみたいと考える人は転職したくなるでしょう。
大企業から中小企業に転職するメリット
大企業から中小企業へ転職すると、主に以下のようなメリットがあります。
- 幅広い経験を積める
- 裁量権の大きい仕事ができる
- スピーディで仕事がやりやすい
- 昇給や昇進のチャンスがある
- 将来の独立に役立つ経営を学べる
項目ごとに詳しく解説します。
幅広い経験を積める
中小企業では、限られた社員数で業務を進めなければならないため、一人が複数の業務を担当するケースが多いです。例えば、営業しながら事務作業をしたり、商品開発と購入後のサポートを担当したりなど、ひとりでさまざまな業務をおこないます。幅広い仕事を経験したい人には魅力的な環境といえるでしょう。
裁量権の大きい仕事ができる
中小企業は、大企業のように上司に判断を求めるのではなく、一人ひとりが自分で判断して仕事を進められるのが特徴です。そのため、裁量権の大きい仕事をするチャンスに恵まれ、自分の力で仕事をしている充実感を得られます。ただし、一人ひとりの責任が大きく、結果を出さなければならないプレッシャーもあります。
スピーディで仕事がやりやすい
大企業では、何人もの決裁者がいて判断を仰がなければならず、仕事を進めるのに時間がかかるのが一般的です。一方、中小企業は決裁者が少なく、社員に裁量権があってその場で判断できることが多いため、スピーディに仕事を進められます。決裁者の判断を待たなくても自力で先に進めることで、仕事をやりやすいと感じる人も多いでしょう。
昇給や昇進のチャンスがある
中小企業も、大企業と同様に、社内規程で昇給や昇進の基準が決められています。しかし、在職年数より実力を重視するため、結果を出せば勤続年数に関係なく昇給や昇進のチャンスがあります。大手企業のように段階を踏まなくても、成果を認めてもらえれば昇進できるかもしれないのが中小企業です。短期間で給与をアップさせたり役職についたりする可能性に魅力を感じて、中小企業への転職を希望する人は珍しくありません。
将来の独立に役立つ経営を学べる
中小企業では経営者との距離が近く、同じフロアで経営者が仕事をしていることも多いです。そのため、経営者のそばで仕事ぶりを見るチャンスがあります。大企業では経営者の近くにいることは難しいため、中小企業のように経営者のそばで経営を学べる職場環境は、将来独立する際に役立つでしょう。
大企業から中小企業に転職して後悔するポイント
中小企業への転職はメリットだけではありません。大手企業から中小企業へ転職して後悔する主な理由は以下のとおりです。
- 給与や待遇が良くない
- 業務のシステムが整っていない
- 教育が行き届いていない
- 社会的信用が下がる
- 人間関係の逃げ場がない
項目ごとに詳しくみていきましょう。
給与水準や待遇が良くない
中小企業は、大企業より経営の規模が小さく、給与水準や待遇も大企業に比べて良いとはいえません。厚生労働省が令和6年3月に発表した「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」によると、男女計の企業規模別の賃金は、大企業が34万6000円、中企業が31万1400円、小企業が29万4000円です。どの年代でも大企業のほうが中小企業より賃金が高いことがわかります。
そのため、収入アップを期待して中小企業へ転職しても、想定と違ったと後悔する可能性があります。転職活動の面接や求人情報などで、給与や待遇の基準を確認しておくことでミスマッチを防げるでしょう。
業務のシステムが整っていない
中小企業では、資金面の理由から、社内の業務システムが整えられていない場合が多いです。そのため、仕事の進め方や作業などが何度も変更されたり、時間や手間がかかって雑務が増えることもあります。大企業のシステム化された仕事の進め方に慣れていると、ムダが多いと感じるでしょう。
教育が行き届いていない
中小企業では、転職者や新入社員の教育システムが確立されていないために、入社後に決められた研修がないことも珍しくありません。担当者から直接仕事を教えてもらうため、人によって指導内容に差があるなど、スムーズに業務に入れないこともあります。
同じ業種での転職なら、満足な教育を受けられなくても、今までの経験をもとに対応できるかもしれません。しかし、異業種から転職する場合は、何をすればよいのかわからなく困惑することもあるでしょう。
社会的信用が下がる
大企業は知名度があり、社名だけで信用してもらえるのが一般的です。複数の企業で受注を競う場合など、大企業であることにより有利になるケースもあります。中小企業であるために、競争に負けてしまうこともあるでしょう。
また、住宅や車の購入でローンを組む際、金融機関によっては勤務先などの属性も審査の対象となります。ローン審査は総合的な判断でなされるため、勤務先だけで審査結果が決まるわけではありませんが、影響が出るケースもあるかもしれません。
人間関係の逃げ場がない
仮に職場の人間関係がうまくいかなかったり上司との関係でトラブルになった場合、大手企業なら部署の異動によりトラブルを避けることができます。しかし、中小企業は社員数も部署の数も少ないため、他部署への異動ができない場合もあります。社内で逃げ場がない状態でぎくしゃくしてしまうと、会社を辞めなければならなくなる可能性もあります。
大企業から中小企業へ転職するときの注意点
大企業から中小企業へ転職して後悔しないためには、以下のような注意点を押さえておく必要があります。
- 自主的に動いて仕事にをとりくむ
- 中小企業を選んだ理由を意識する
- 給与や待遇だけを求めない
- 大企業のやり方が常に通用すると思わない
ポイントを理解して、対策を意識して取り組めば、転職活動の失敗を防げるでしょう。
自主的に動いて仕事にとりくむ
前述のように、大手企業では分業制が取り入れられていて、部署ごとに担当する業務が決まっているのが一般的です。一人ひとりが担当する業務は限られていて、同じ業務を繰り返しおこなうことも少なくありません。
それに比べて中小企業では、担当業務が決まっていても、臨機応変にさまざまな業務に対応しなければならなかったり、担当以外の作業をお願いされたりすることも多いです。指示されるまで待っている姿勢ではスムーズに進まないこともあるため、自主的に動いて取り組む姿勢が大切です。
周囲を見て手の足りないところを積極的に手伝ったり、自分の仕事へ巻き込んだりすることにより、スピーディに仕事を進められて、周囲からの評価も得られるでしょう。
中小企業を選んだ理由を意識する
中小企業で働いていると、うまくいかないことがあって不満がたまることも珍しくありません。大企業を退職したことを後悔してしまう場合もあるでしょう。
しかし、なぜ中小企業を選んだのかを常に意識しておけば、たとえ不満があっても、モチベーションを保ち続けるのに役立ちます。中小企業でやりたいことを達成するために、もう少しがんばろうと思えるでしょう。転職を繰り返してしまわないためにも、この企業で何をやりたいのかを常に自覚することが大切です。
給与や待遇だけを求めない
大企業に比べて、中小企業は経営規模が小さく、経営を安定させるために給与や役職などの待遇の基準を低く設定している企業も少なくありません。また、経営が不安定になれば、ボーナスや歩合が出ないおそれもあります。
入社後に雇用条件のミスマッチを起こさないために、収入アップや昇進だけを転職の目的にしないようにしましょう。大企業ではやれなかったことを達成できる仕事環境を意識することが、中小企業で長続きするコツです。
大企業のやり方が常に通用すると思わない
大企業から中小企業に転職すると、仕事の進め方や職場環境などで足りないことが目につくかもしれません。効率的に仕事を進められるやり方や業務システムなど、「大企業ではもっとうまくいっていたのに」と思うこともあるでしょう。
しかし、大企業と中小企業では経営の基盤や社員数の違いから、仕事の進め方や業務のやり方に違いがあります。大企業で通用するやり方が中小企業でも通用するとは限りません。また、大企業でのやり方を主張しすぎると、職場に馴染めなくなる可能性もあります。
大企業を見習って効率的に進める方法を試してみるのがよい場合もあるかもしれませんが、中小企業に合ったやり方や、以前からおこなわれているやり方を尊重する姿勢も大切です。
大企業から中小企業への転職を成功させるには情報収集がカギ
大企業と中小企業では、仕事の規模や売上の大きさ、業務の進め方、重要視するポイントなど、さまざまな違いがあります。大企業から中小企業へ転職する際は、両者の違いを押さえておけば、転職後のミスマッチを防げるでしょう。
そのために、転職先の中小企業についてできる限り情報を集める必要があります。ホームページには、希望企業の経営方針や業務内容が掲載されています。職場の雰囲気などを知りたい場合は、面接官に尋ねるのもよいでしょう。
また、転職サイトを活用するのも、おすすめの情報収集方法です。転職サイトに掲載されている求人情報には、ホームページや面接では分かりにくい職場の空気などが紹介されていることも多いです。社員へのインタビューや転職サイトのスタッフが感じた雰囲気なども、企業を理解するのに役立つでしょう。
TASUKIでは、働く人の声や取材担当者からのコメントなど、企業を理解するのに役立つ情報を求人といっしょにチェックできます。東三河エリアでの転職にぜひお役立てください。
求人情報や企業紹介などを活用して、中小企業の情報収集を徹底するのが、大企業から中小企業への転職を成功させるカギです。
中小企業の特徴を理解して後悔しない企業選びをしよう
幅広い仕事にチャレンジできる中小企業に魅力を感じて、大企業から転職したいと希望する人も多いでしょう。中小企業へ転職すると、経営の規模や社員数の違いなどから、自力で判断して仕事を進める達成感、昇給や昇進のチャンスなど、大企業では得られないメリットを享受できる可能性があります。
一方で、中小企業ならではのデメリットを感じて、転職を後悔してしまうおそれもあります。入社後にミスマッチを起こさないためにも、大企業と中小企業の違いを理解し、なぜ中小企業を選んだのかを常に意識することが大切です。
大企業から中小企業への転職を成功させるために重要なのは、情報収集です。企業のホームページや面接で、希望企業の経営方針や雇用条件などをしっかり確認しておきましょう。
転職サイトを活用するのもひとつの方法です。求人情報や企業紹介などから、職場の雰囲気や社員の様子を知ることができます。転職サイトを上手に利用して、中小企業の特徴を理解できれば、自分に合った企業を選べるでしょう。