民間から公務員に転職

民間企業で働いていると「このままの働き方でいいのだろうか」「将来の安定を確保したい」という悩みを抱えることはないでしょうか。景気の影響を受けやすい業界で働いている方にとって、公務員への転職は魅力的な選択肢です。
「今から公務員を目指せるのか?」と思うかもしれませんが、公務員試験に受かれば、民間企業からでも転職できます。今まで培ったスキルを活用しながら安定した公務員の職に就くことも、選択肢のひとつです。可能です。
この記事では、民間企業から公務員へ転職する方法、公務員に転職するメリット・デメリットについて詳しく解説します。

民間から公務員に転職できる?

公務員転職

民間企業から公務員への転職は、難易度は高いですが可能です。その際には、公務員の種類と採用試験の違いについて知っておく必要があります。

特徴
国家公務員 国全体に関わる業務を担当。
中央省庁や、国会、裁判所などで働き、政策立案や法律の整備、国家予算の編成など、国レベルの行政運営を支える。
地方公務員 都道府県や市町村といった地方自治体で働き、地域住民の生活に密着した業務を行う。

  • 住民サービス
  • 教育
  • 福祉
  • 治安維持
  • 地域インフラの管理

など、地域社会の運営に関わる仕事。

公務員になるためには公務員試験に合格しなければなりません。公務員試験は一般採用試験と社会人採用試験の2種類があります。

一般採用試験は、新卒者や社会人経験が浅い人を対象にした試験で、筆記試験が中心です。一方、社会人採用試験は民間企業や他の職場で一定の職務経験を持つ社会人を対象にした試験で、教養試験、小論文、経験者論文、面接試験など幅広く行います。

公務員への転職は何歳まで可能?

公務員への転職が可能な年齢は、試験の種類や自治体によって異なります。一般採用試験では、30歳以下が対象で、自治体毎に年齢制限が前後します。一方、社会人採用試験は、59歳まで受験可能な場合が多いです。
また、特別な職種では、年齢制限が異なります。例えば、警察官、消防士、自衛官、医療職、技術職などでは年齢制限が緩和されている傾向です。

民間から公務員に転職するメリット

公務員転職メリット

民間から公務員への転職では、3つのメリットがあります。

  • 安定した収入が得られる
  • 福利厚生が充実している
  • 社会的信用が高い

それぞれ詳しく解説します。

安定した収入が得られる

公務員の給与は、税金を財源として支払われるため安定した収入が得られます。経済状況が悪化しても民間企業のように倒産の心配がなく、給与が大幅に減少するリスクが低いです。
また、公務員の給与体系は年功序列が基本であり、勤続年数に応じて着実に昇給します。成果主義の評価が強くないため、確実な昇給が見込めます。
公務員のボーナスは「期末手当」と「勤勉手当」から構成され、年間で月給の約4か月分が支給されます。内閣官房内閣人事局が人事院勧告として給与の方針を示し、それにもとづいた法律として金額が定められます。2024年度は、人事院勧告により、国家公務員のボーナス支給月数は前年から0.10ヶ月引き上げの「4.60ヶ月分」に変更されました。

福利厚生が充実している

公務員の福利厚生は法律や規則に基づいて整備されており、民間企業と比較しても手厚い内容になっています。住宅手当、扶養手当、地域手当、通勤手当に加えて、退職金制度や休暇制度も整っています。具体的な内容は以下の通りです。

特徴
職務手当 地域手当 物価の高い地域で勤務する従業員や公務員に対して、格差を是正するために支給される手当
時間外労働手当 法定労働時間を超えて働いた場合に支給される手当
期末手当 公務員に支給される特別手当
勤勉手当 勤務成績に応じた報奨金
管理職手当 部長や課長などの管理職に支給される手当
生活手当 扶養手当 扶養家族を持つ従業員に対して支給される手当
住居手当 従業員の住宅費用を補助するために支給される手当
単身赴任手当 家族と離れて単身で赴任する従業員に支給される手当
その他 通勤手当 従業員が自宅から職場まで通勤する際にかかる費用を補助する手当
退職手当 従業員が退職する際に支給される一時金
特地勤務手当 生活環境が厳しい地域(僻地や離島など)で勤務する従業員に支給される手当

上記のように、公務員では充実した手当がもらえます。

社会的信用が高い

公務員は、社会的な信用度が高く、さまざまな場面で有利に働きます。例えば、ローンやクレジット、賃貸契約などの審査がスムーズに進むことが多いです。

民間企業では業績悪化や経済状況の変化により倒産やリストラのリスクがありますが、公務員はそのようなリスクがほぼありません。この点が、金融機関や賃貸契約などでの信用度を高める要因となっています。

民間から公務員に転職するデメリット

公務員転職デメリット

民間から公務員への転職は、3つのデメリットを伴います。

  • 能力が給与に反映されにくい
  • 残業が多い可能性がある
  • 異動が多い可能性がある

詳しく解説します。

能力が給与に反映されにくい

公務員の給与は、法律や規則に基づいて決定されるため、年功序列が基本です。公務員の仕事は、公共の利益を目的とするため、個人の成果よりも組織全体の安定性が重視されます。そのため、特定の成果を上げたとしても、給与や昇進に大きな影響を与えることは少ないです。

昇給は、勤続年数や年齢が主な要因であり、実力主義の民間企業のように成果や能力が直接給与に反映される仕組みではありません。そのため、民間企業で成果主義に慣れている人にとっては、自分の努力や能力が給与に反映されないことが不満やモチベーションの低下につながる可能性があります。

残業が多い可能性がある

公務員は、定時で帰れるイメージですが、部署や職務内容によっては残業が多いです。例えば、繁忙期や緊急対応が必要な場合には、残業が発生しやすい傾向があります。また、国家公務員の場合、政策立案や調整業務などで深夜まで働くケースもあります。

地方公務員の年間時間外勤務時間は、令和4年度で月平均12.5時間、年間平均約149.6時間(都道府県職員の場合は年間176.6時間)です。一方、一般労働者の月平均は13.8時間です。このように、民間企業と同等か地域によってはそれ以上の残業が発生している可能性があります。

異動が多い可能性がある

公務員は、定期的に異動が行われます。地方公務員では、3〜4年に1回同じ自治体内で異動する場合が多いです。一方、国家公務員では1〜3年に1回、各地域内や全国規模で異動する場合があります。

公務員で移動が多いのは、特定の企業との癒着防止や幅広い経験を積むためです。頻繁な異動は、家族の生活環境や人間関係に影響します。公務員に転職する際は異動が多いことも考慮しておきましょう。

民間から公務員に転職するのにおすすめの職種

公務員転職職種

公務員を仕事内容別に分けると、行政職、技術職、公安職の3つに分けられます。以下では、各職種の業務内容について解説します。

行政職

行政職は、地方自治体や国家機関で行政事務全般を行う職種です。具体的には、市役所や県庁での窓口業務、提出書類の処理、政策の企画・立案・実施などです。

分かりやすく説明するスキルやコミュニケーション能力、事務処理能力が求められます。事務作業が中心であれば、民間企業で働いていた経験を活かしやすいでしょう。

技術職

技術職は、土木、建築、電気、機械、化学、農学などの専門分野に特化しており、大学や民間企業で培った知識やスキルをそのまま活用できます。民間での実務経験が評価されやすく、即戦力として期待される場合が多いです。

また、試験倍率が低く採用されやすい傾向です。各職種の倍率は以下の通りです。

国家公務員 地方公務員
行政職 3.4倍 2.7倍
技術職 2.6倍 1.5倍
公安職 6.0倍 2.9倍

公共インフラの整備や環境保全、地域の安全確保など社会貢献度が高く、やりがいを感じやすい職種でもあります。専門知識やこれまでの経験を活かしたい方におすすめです。

公安職

公安職は、国や地域の治安維持や秩序の確保を目的とした職種で警察官、消防官、自衛官、刑務官などがあります。これらの職種は、体力や精神力が求められる一方で、社会的意義が高く使命感ややりがいを感じやすい職種でもあります。

警察官や消防官、自衛官では体力試験が課されることも多いため、体力を鍛えておくことが重要です。社会に貢献したい、体力や精神力に自信がある方におすすめ。

公務員への転職が向いている人

公務員向いている人

公務員への転職が向いている人は、以下のような特徴があります。

  • 人の役に立つことが好き
  • 淡々と事務作業するのが得意
  • コミュニケーション能力が高い
  • 柔軟性と適応力がある

詳しく解説します。

人の役に立つことが好き

公務員の仕事は、国民や地域住民の生活を支えることが主な目的です。そのため「人の役に立ちたい」「社会をより良くしたい」という思いを持つ人に適しています。民間企業が営利を目的としているのに対し、公務員は営利を目的とせず、公益性が高い点が特徴です。

例えば、警察官や消防士、自衛官などの公安職は、直接的に人々の安全を守る仕事であり、社会貢献を実感しやすい職種です。また、行政職では地域住民の生活を支える行政サービスを提供するため、住民との接点が多く、地域貢献を実感できます。

淡々と事務作業するのが得意

公務員の仕事には多種多様な職種がありますが、淡々と事務作業をこなすことが得意な人には、特に事務系の公務員職が向いています。公務員の業務には、書類作成やデータ入力、申請書類の処理など、定型的な事務作業が多く含まれるためです。「正確な作業が得意」「効率的に作業を進めるのが得意」な方に向いています。

コミュニケーション能力が高い

公務員の仕事は、コミュニケーション能力が高い人に適しています。住民や他の機関との連携が必要な場面が多く、円滑なコミュニケーションが業務の成功に直結するためです。

例えば、地方公務員は地域住民との接点が多く、相談対応や地域イベントの運営などで関わります。また、警察官や消防士は緊急時の対応や地域住民との信頼構築が重要です。

感情的な人や、興奮状態にある人との折衝が求められるケースもあり、相手の状況や感情に配慮しながらも説明や主張をするといった高度なコミュニケーションが求められます。

柔軟性と適応力がある

公務員の仕事は多岐にわたり、環境や業務内容の変化に応じて対応する必要があるため、柔軟性と適応力がある人に向いています。また、数年ごとに部署異動があるため、異動先で新しい業務や環境に適応しなければいけません。他には、災害対応時、他の行政機関との連携、住民との関わりにおいて柔軟性が必要です。

公務員への転職は安定性と公益性の高い仕事が魅力!

公務員魅力

民間企業から公務員への転職は、安定した収入や福利厚生の充実、社会的信用の高さが魅力です。国家公務員は国全体の行政を支え、地方公務員は地域住民の生活をサポートする役割です。

転職するには、公務員試験を受ける必要があり、試験には新卒や若年層を対象とした一般採用試験と、社会人経験者向けの社会人採用試験があります。

公務員の給与は年功序列で安定し、ボーナスや各種手当も充実しています。一方、能力が給与に反映されにくい、残業や異動があるのがデメリットです。

公益性の高い公務員の仕事は、安定した環境で社会に貢献したい人におすすめです。