転職を検討している人のなかには、「歩合制についてよく知らない」あるいは「歩合制では稼げないと耳にした」といった理由から、また前職と同じような給与形態の仕事を探している人もいるかもしれません。しかし、実は歩合制は、経験やスキルがなくても短期間で高収入を目指せるシステムで、転職者とも相性の良いものです。
本記事では、歩合制の概要や仕組みをわかりやすく解説します。正しく理解し、今後の働き方の選択肢を広げましょう。
目次
歩合制とは?
歩合制とは、労働によって得られた成績や成果に応じて給与が支給される給与形態のことです。
まずは、一般的な形態とされる固定給との違いや歩合制の種類、概要などを確認しておきましょう。
固定給との違い
固定給とは、一定時間の労働への対価としてあらかじめ設定された額が支払われる給与形態のことです。日本では広く採用されているため、馴染みの深い人も多いのではないでしょうか。
固定給に該当するのは、「基本給に固定的な各種手当を加えた金額」です。これに、残業や深夜労働手当といった「場合によって変動する給与」が上乗せされます。
固定給には、支給期間によって月給制や時給制、日給制、週給制、年俸制などがあります。歩合制に比べて、収入が安定している点が大きな特徴です。
歩合制の種類|「固定給+歩合制」と「完全歩合制」
一言で歩合制といっても、契約の仕方によって「固定給+歩合制」と「完全歩合制」の2種類に大別され、両者は大きく異なります。以下に、それぞれの特徴をまとめました。
歩合制の種類 | 給与形態 | 特徴 |
---|---|---|
固定給+歩合制 | 固定給に上乗せするかたちで歩合給を取り入れた給与形態 | 主に被雇用者向け |
完全歩合制 | 100%歩合制の給与形態 | フリーランスや個人事業主向け |
転職サイトや求人情報に歩合制とのみ書かれている場合、固定給+歩合制なのか完全歩合制なのか確認しましょう。
歩合制に最低賃金は適用される?
最低賃金とは、法律で定められた賃金の下限額です。
参考:厚生労働省「最低賃金制度とは」
歩合制では成績や成果が重視されるとはいえ、労働基準法27条に基づき労働者へ一定額の賃金を保障する必要があります。
「一定の賃金」についての明確な基準は規定されていませんが、各都道府県の最低賃金か、他の労働者と比較したときの6割以上の賃金、どちらか高い方を基準にするのが妥当と考えられています。
歩合制の残業代は?
転職を検討する際に、残業代の有無が気になる人も多いでしょう。歩合制を選択した場合でも、法定労働時間(8時間/日、40時間/週)を上回る労働については残業代が発生します。
固定給+歩合制の場合には、固定給部分と歩合給部分の割増率が異なる点には注意が必要です。
- 固定給部分:時価単価の1.25倍
- 歩合給部分:時価単価の0.25倍
また、一部では「歩合給に残業代が含まれている」として運用されているケースもみられますが、歩合給と残業代は別物で、法的には認められません。適正な労働環境を実現するために、働き手自身も正しい知識を身につけておきましょう。
歩合制の社会保険料や税金は?
社会保険料を考えるうえで欠かせないのは、標準報酬月額です。健康保険料や厚生年金保険料算定の基準となるもので、算出する際には「会社から支給されるすべての報酬」、つまり固定給部分だけでなく、歩合給部分も含めて計算されます。
また、税務上、歩合制であっても雇用契約を結んでいる従業員への給与は「給与」と扱われるため、社会保険への加入(週に20時間以上働いていれば)や所得税の源泉徴収が義務づけられます。
歩合制でも有給休暇はある?
有給休暇について考えるうえでも重要なポイントが、雇用関係の有無です。会社と雇用関係にある固定給+歩合制でれば有給休暇も付与されますが、雇用関係が存在しない完全歩合制の場合には、有給休暇はありません。
歩合制で働く3大メリット
私たちに馴染み深い固定給とは異なる特徴を持つ歩合制には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なものを3つ紹介します。
メリット①努力次第で高収入を狙える
歩合制は、成果が給与にダイレクトに反映されるシステムです。年功序列の固定給とは異なり、役職や年齢が低くても高収入を狙えます。
転職先で新たにキャリアを構築しなければならなくなっても、早期に希望する額の収入が得られるかもしれません。
メリット②モチベーションを保ちやすい
歩合制では努力が収入に直結することが多いため、モチベーションの維持・向上もしやすい傾向にあります。
固定給では、頑張りがすぐに給与に反映されるケースはまれです。一方、成果を上げれば収入がアップする歩合制であれば、試行錯誤を繰り返しながら、より高みを目指せるでしょう。
メリット③多様な働き方ができる
雇用主の同意が得られれば、成果に合わせて勤務時間の調整も可能です。「目標を達成できれば退社時間を早める」といった働き方もできます。
しっかりと収入を得ながらも、プライベートを充実させやすい働き方だといえるでしょう。
歩合制で働く際の注意点
魅力的なメリットをもたらす歩合制ですが、注意点も存在します。転職活動の前に、しっかりと把握しておきましょう。
注意点①収入が不安定
固定給であれば、成果が得られなくても出勤し働いていればその時間だけの給与が支給されますが、歩合制では、成果がなければ収入が下がることもあります。
また、体調不良や材料不足などが原因で「働きたくても働けない」事態に陥ることもあります。たとえやむを得ない事情だとしても、該当期間中の減収は覚悟しておかなければならないでしょう。
注意点②労働時間の管理が難しい
意識しておかなければならないのは、歩合制における成果とは「売上や販売数そのもの」であり、交渉や準備にかけた時間は含まれない点です。残業代は支給されるとはいえ、できるだけ実労働時間を抑える工夫が求められます。
収入アップのためには、「いかに手早く、高効率で成果を上げるか」がカギです。
注意点③職場内で競争意識が生じやすい
歩合制を採用する職場において、同僚は「成果を争うライバル」でもあります。そのため、どうしても競争意識が生じやすい環境だといわざるを得ないでしょう。
特に、過剰に成績を求められたり、比べられたりする職場では、職場内で対立が起こるおそれもあります。和気あいあいとした雰囲気を望む人は、居心地の悪さを感じてしまうかもしれません。
歩合制が向いているのはこんな人!
ここでは、歩合制のメリットや注意点を踏まえたうえで、向いている人の条件を整理します。当てはまるかどうか、チェックしてみてください。
短期間で収入をアップさせたい人
年に数回の昇給チャンスを待たねばならない固定給では、短期間での収入増は難しいでしょう。一方、歩合制では、成果を上げさえすればすぐにでも実現可能です。
転職後すぐの収入アップも夢物語ではありません。
年齢や経験年数によらない評価を望む人
「転職すると、経験や在籍歴の少なさから評価・給与が抑えられるのでは…」と不安を感じている人も多いでしょう。成果主義の歩合制でであれば、その心配も無用です。
若くても、経験年数が短くても、結果さえ伴えば実力者として扱われます。
誰かと競い合うことでモチベーションが上がる人
同僚の成績や会社のこれまでの実績といった数値を追い越すことを目標とすることで、その実現のために実力以上の力を発揮できる人です。競争相手がいてこそ本領を発揮できるタイプの人は、歩合制で大きな成果を上げる可能性を秘めています。
歩合制が導入されていることが多い職種3選
歩合制が導入されていることが多いのは、主に以下の3つの職種です。
- 営業・販売職
- 理・美容師
- トラック・タクシードライバー
目標が数値化しやすい職種や、成果と業績が結びつきやすい業界でよく採用されている傾向が見られます。
歩合制を希望している場合には、ぜひ上記を中心に求人検索してみてください。
まとめ:自分の強みを活かせる歩合制の仕事で収入アップを目指そう
労働によって得られた成績・成果に応じて給与が支給される歩合制であれば、年齢や経験によらす、自分の強みを活かせます。短期間での収入アップも夢ではないため、転職者にもおすすめの働き方です。
歩合制は、営業・販売職や理・美容師、トラック・タクシードライバーといった職種で多く導入されています。これまでは歩合制を除外していた人も、ぜひこの機会に転職・求人サイトでチェックしてみてはいかがでしょうか。