東三河で暮らす日本語を母語としない外国人たち。彼らとコミュニケーションを取るのに大変役に立つのがやさしい日本語です。
前回、普段使いの日本語をやさしい日本語にする『ハサミの法則について』の中で『やさしい日本語は相手によって変える必要がある』という話題にふれました。
今回は、
- 日本語は相手によって変える必要があるってどういうこと?
- どんな風に言い換えたり対応したりすればいいの?
ということを『あきえ日本語教室』講師のあきえ先生に教えてもらいます。
やさしい日本語を練習するのに便利なツールもご紹介します。お楽しみに!
あきえ日本語教室 あきえ先生
日本語教師、入門・やさしい日本語(アスク出版) 認定講師
文化庁委託「就労者に教える日本語教師研修」修了
企業の担当者へのヒアリングを元に、現場の状況にあった『やさしい日本語』講座とワークショップ、異文化理解講座を提案しています。講座は対面かオンラインを選択できます。また、就労外国人向けの日本語研修にも対応します。
日本語は相手によって変える必要があるってどういうこと?
…… ある会社の朝礼にて
これがこの会社での平時の言い方です。
でも、これだと日本語を母語としない外国人には分かりづらいですよね。
なので、ハサミの法則でやさしい日本語にしてみます。
「今週の金曜に避難訓練をします。避難訓練とは、いざという時のための、逃げるための練習のことです。避難訓練は地震が起きた時を考えてします。」
その人がどういう言葉に詳しいかは、
- 教室で習ったのか独学なのか
- 日本語のテキストのどこまでを勉強したか
- どんな経験があるか
- 何が好き・得意なのか
など、その人の持つ背景によって変わってきます。
地震について言えば、日本のように地震がよく起こる国(東南アジアではインドネシア、中国の一部、台湾など)から来た人であれば、イメージがしやすいので簡単な説明でも伝わります。
しかし、地震が少ない国から来た人の中には地震を全く経験したことがない人もいます。経験や知識が少ないため、地震の被害や避難に対してイメージがつきにくいのです。
このように、日本とは違った環境・文化・習慣・宗教の中で生活してきた人たちにとっては日本での当たり前・常識が通用しないことが多々あります。その点を十分配慮した上で柔軟に対応していく必要があります。
相手によってどう変える?
ある表現が伝わらなかったら別の言い方に変える、それでも分からなければもっと違う表現や簡単な言葉に直すなど、相手に合わせるようにします。
相手の理解を深めるため、また間違った認識を生まないため、説明の際に他の方法を併用するのもおすすめです。
可能であれば実物を見せる、体験してもらうのが一番ですが、
- ジェスチャーを加える
- 写真・イラスト・動画を見せる
- 相手の分かるものに例える
という方法も有効です。
内容をきちんと理解しているか判断するには内容についての質問をしてみると良いでしょう。
また、日本に定住しているブラジル人の多くは、日本語教室ではなく普通の会話の中で日本語を覚えます。そういった場合は「です/ます」の口調よりも、「できる/いく」のような友達言葉や三河弁の方が分かることが多いです。
Voice Tra(ボイストラ)のご紹介
(画像:Voice Traサポートページ)
Voice Traは音声入力した文章を外国語に翻訳してくれる無料のアプリです。日本語で話しかけると相手の国の言葉で出力してくれます。
Voice Traサポートページ:https://voicetra.nict.go.jp/
その一番の特徴は逆翻訳があること。これがあることで自分の言ったことが正しく翻訳されているかを確認できます。
もちろんAI翻訳ツールを利用する時にもやさしい日本語やハサミの法則は役に立ちます。そしてVoice Traは逆翻訳で正しく翻訳されているかが分かるので、やさしい日本語を練習するのに最適です。
日本語を母語とする外国人には、日常の些細な場面においても、分からない・分かりにくいが氾濫しています。外国人が日本語の勉強を進める一方で、わたしたち日本人もやさしい日本語を学ぶことで、お互い歩み寄ることが出来ます。
外国人が住みよい街は、外国人でない人にとっても住みよい街だと思います。そんな街を、みんなのやさしさで作っていけると良いですね。
次回は「やさしい日本語講座を擬似体験」!あきえ先生が企業でどのようにやさしい日本語を教えているかをチラッとご紹介していきます。お楽しみに!