アンコンシャスバイアスとは?

アンコンシャスバイアスとは無意識の偏見や思い込みから偏ったモノの見方をしてしまうことで、「無意識バイアス」「潜在的ステレオタイプ」とも呼ばれる事象です。

この記事ではアンコンシャスバイアスの発生原因と具体例や課題について社労士が解説します。

1)アンコンシャスバイアスとは?

アンコンシャスバイアスは認知バイアスともよばれ、偏見や先入観、自分の個人的体験からモノゴトの認知がゆがむことです。

認知がゆがむことそれ自体は誰にでもあることであり、善悪で語れるものではありません。しかし、そのために事実誤認がおこったり、判断を誤ったり、発する態度やメッセージによって人を傷つけることが起こるために問題視されています。

特に、企業にあってはコーポレートメッセージや役員の言動によって大きく企業イメージが毀損するなどの影響が生じる怖れがあり、対策が必要な課題として近年注目されています。

バイアス

2)アンコンシャスバイアスの具体例について

組織におけるアンコンシャスバイアスの具体例としては下記のようなものがあります。

  • 子育て中の女性は泊まりがけの出張はできない
  • 学歴が高い方が仕事も出来る
  • 社員同士は飲み会に積極的に参加して親睦を深めるべきだ
  • 年齢に差のある2人なら年上のほうが職位が上だ
  • 給与の高い人のほうが偉い
  • 残業しない人よりも残業している人のほうが頑張っている
  • 私生活がだらしない人は仕事ができない
  • 笑顔であいさつをしてくれる人は自分に好意がある
  • 女性は家庭円満がいちばんの幸せである

これらは個別具体的には正しい状況もある可能性はありますが、一般論にした瞬間に根拠のない思い込み、偏見に基づいた「意見」になります。

3)アンコンシャスバイアス対策の難しさ

アンコンシャスバイアスを自覚することが難しいのは、こうした「意見」を「常識」だと自分が思い込んでいることに気づくことが困難だからです。

アンコンシャスバイアスは自分の育ってきた文化や経験から形成されてくるものです。そもそも私たちは自分たちが接している集団や組織に愛着を持つ傾向があることが知られています(内集団バイアス)。

たとえば、要領よく勉強していたことを繰り返し褒められた経験がある人は「効率の良さ」をよいこととして認知します。しかし、時間をかけて勉強することを褒められた体験が多い人は「時間をかけて取り組んだこと」をよいこととして認知します。これらの認知のしかたそれ自体は両方とも善悪は生じない価値観ですが、その価値観を「正しい」と主張しだすと、双方のアンコンシャスバイアスが現れている状態になります。

自分の考える「常識」「普通」「正しさ」がいつでもどこでも通用するものだと考えた瞬間、アンコンシャスバイアスが問題になります。

しかし、自分の認知の仕方を顧みる姿勢がなければ、アンコンシャスバイアスに気付くことが極めて困難になります。

叱責を受ける女性

4)アンコンシャスバイアスがあることで生じる課題

アンコンシャスバイアスがあることで、組織には次のような課題が生じます。

①無自覚なハラスメント加害行為

アンコンシャスバイアスのなかでも、問題になることが多いのはジェンダーバイアスによるものです。固定的な性別役割を無自覚に押し付けたり、それを元に事実をゆがめたりすることで、セクシャル・ハラスメントが生じやすくなります。

また、パワー・ハラスメントも同様です。「部下なんだからこれぐらい出来て当然だ」「この職位ならこれぐらいの仕事はこなすべきだ」といったアンコンシャスバイアスがあると、その対象となる個人の状況を顧みることなく必要以上に強い言葉がけをしたり、苛立ちをぶつけることになりかねません。

➁組織におけるイノベーションが阻害される

アンコンシャスバイアスのうち、日常のさまざまな出来事や判断をせずに済ませたいと思う気持ち(正常バイアス)や、今の状態がいちばんいいと思う現状維持バイアスがあると、組織の中で改善や改革ができる状態でも手を打つ必要があると感じなくなります。そのために、顧客や市場の変化に気付きにくくなり、対応が遅れる可能性があります。さらには、上司がそのようなバイアスを持っていることを日々社員にメッセージとして発信してしまうと、社員側からのリアクションがますます困難になる悪循環が生じます。

➂企業イメージを毀損する

アンコンシャスバイアスがあることに無自覚なまま発せられる企業のPRメッセージやCMは炎上リスクがあり、極めて甚大な影響を企業に及ぼします。SNSなどで一部を切り取り意図的に改変するものは論外ですが、誤解を生まないようなメッセージの発信も重要です。コンプライアンスの観点からも、企業が発信するメッセージがどのような印象を与えるものになっているのかを、慎重に吟味する姿勢が必要です。

笑顔のビジネスマン

5)組織の中のあるアンコンシャスバイアスに目を向けよう

アンコンシャスバイアスがハラスメントに繋がると、職場の心理的安全性が脅かされるばかりか離職率の上昇に繋がります。

そのような職場では生産性は低下してしまい、企業の利益獲得にはほど遠い状況になるでしょう。

また、そうした内憂だけではなく、せっかく大きな費用をかけて制作した広告が原因で企業イメージが大きく損なわれるなどの外患が怒らないよう、日ごろからアンコンシャスバイアスについて知る姿勢を持つことが重要です。