東三河スタートアップアワード2025

2026年2月5日(木)、豊橋市のemCAMPUS STUDIOにて「東三河スタートアップアワード2025 表彰式」が開催されました。

この記事では東三河スタートアップアワードについてのあらましや、今年の受賞者について紹介します。

東三河スタートアップアワード2025とは

東三河スタートアップアワードとは?

東三河スタートアップアワードは、東三河地域におけるスタートアップの挑戦や成果を称え、地域全体で応援することを目的に創設された表彰制度です。

主催は東三河スタートアップ推進協議会

4年前にSTATION Aiのパートナー拠点※として発足した東三河スタートアップ推進協議会は、東三河にスタートアップを根付かせるための基盤づくりを進めてきました。

※県内各地域で主体的にスタートアップ支援に取り組む機関等。愛知県が整備したスタートアップ中核支援拠点「STATION Ai」と連携・協力し、各拠点の強みを活かした独自のネットワークを構築するもの

同協議会は、民間企業・大学・地元行政が連携し、起業や事業成長に挑む人たちを支えるプラットフォームです。困りごとの相談対応や支援を通じて、全国から志ある人材が東三河に集まる環境づくりを目指しています。

地域ぐるみでスタートアップを後押し

ここでの「スタートアップ」の定義は広く、急成長を目指す企業に限らず、起業家候補や第2創業者、地域課題の解決に挑む人々も対象としています。

アワードはその取り組みの一環として昨年からスタートし、スタートアップの認知度向上やイノベーション推進、起業醸成、エコシステム強化と連携促進を目的に、4つの賞を設けています。

募集・審査は約2ヶ月間にわたり実施。会員からの推薦に加え、広く地域からの推薦を受け付け、要件審査、会員による採点、運営部会での総合評価を経て受賞者が選定されました。

各賞の受賞者と受賞コメント

東三河スタートアップ大賞

東三河スタートアップ大賞は、東三河地域でもっとも成長した地域発スタートアップを表彰する賞です。ソーシャルインパクトの大きさや資金調達実績、売上実績などを評価軸に、地域を代表する存在としての成長度合いが問われます。

東三河スタートアップ大賞2025

大型の資金調達を実現!株式会社パワーウェーブ

今回、大賞を受賞したのは株式会社パワーウェーブ。同社は豊橋技術科学大学認定の大学発ベンチャーとして、走りながら充電できるワイヤレス給電技術を軸に、新しい移動社会の実現に挑戦しています。

Series Aラウンドで総額9.1億円を調達するなど大型の資金調達を実現し、数々のピッチコンテストでの受賞、CEOの種田憲人氏の文部科学省アントレプレナーシップ推薦大使への任命など、目覚ましい成長を遂げてきました。

授賞式には共同創業者で代表取締役CTOの阿部 晋士氏が登壇。「充電をするという概念がなくなる未来」を目指していると語り、孫の世代には“充電”という言葉が専門用語になるような社会を実現したいと展望を示しました。

同社が開発する無線電力伝送技術は2007年に豊橋技術科学大学の研究室で研究が始まり、約5年前に会社として事業化。現在は2026年時点でフルタイム従業員が20人を超える規模へと成長しています。

阿部氏は、産業・農業・商業がバランスよく集積し、大学も身近にある東三河の環境こそが成長の土台になったと語り、「この地域から世界へ技術を広げていきたい」と力強く意欲を示しました。

東三河スタートアップ奨励賞

東三河スタートアップ奨励賞は、今後もっとも成長が期待される東三河地域発のスタートアップを対象とした賞です。資金調達や売上といった実績だけでなく、事業の将来性や成長の可能性が重視されます。

東三河スタートアップ奨励賞2025

人手不足の解決を目指して!合同会社Z2A

奨励賞を受賞したのは合同会社Z2A、同社副代表の村上慶悟氏が登壇しました。豊橋技術科学大学の同級生2人で約2年前に起業した合同会社Z2Aは「好きなことを実現できる社会」をミッションに掲げ、日本全国で深刻化する人手不足という課題に対し、生成AIを活用できる人材育成事業や、企業向けの専用AIシステム開発を通じて解決を目指しています。

村上氏は、生成AIを導入したい企業が直面する「高額なライセンス料」や「専門知識がなければ使いこなせない」というジレンマに触れ、そうした壁を乗り越えるための支援を行っていると説明しました。一方で、同社は創業以来2年間ピボットを続けている段階のスタートアップであり、明確なプロダクト確立に向けて模索中であることも率直に語りました。

コメントの冒頭では感極まる場面も見られ、試行錯誤を重ねながらも前に進み続ける起業家としての等身大の姿が印象に残りました。将来性に賭ける奨励賞らしく、「これから」に大きな期待が寄せられる受賞です。

東三河スタートアップ共創賞

東三河スタートアップ共創賞は、対象期間中に実現した東三河地域内外のスタートアップと地域の自治体・企業・団体などによる社会実装につながる共創事例を表彰する賞です。

現場の課題とスタートアップの技術・発想が結びつき、実際の事業やサービスとして動き出している点が評価されました。

東三河スタートアップ共創賞2025

株式会社Lirem × 株式会社中部シイアイシイ研究所

学生による中小企業の新規事業立ち上げプログラム

株式会社Liremと中部シイアイシイ研究所による共創は、学生が主体となって中小企業の新規事業立ち上げに挑む取り組みです。「自社の強みや既存の顧客接点を最大限活用し、新たなサービスや製品につながる“事業の芽”を育てたい」という思いのもと、学生と企業が伴走しながら事業づくりを進めています。

中部CIC研究所が持つクリーンルームや特殊洗浄技術といった強みを活かし、学生主体の半年間のプログラム「OKIBI」を通じて、事業理解から顧客課題の設定、MVP検証までを一貫して実施していると紹介されました。地域企業と若い世代をつなぐ、新しい共創の形として注目される事例です。

輝翠株式会社 × マルシメ株式会社

オフロード型自律走行AIロボット「アダム」のシェアリングサービス

輝翠株式会社とマルシメ株式会社による共創は、オフロード型自律走行AIロボット「アダム」を活用した農業向けシェアリングサービスです。輝翠の小林取締役はオンラインで登壇し、東北大学発スタートアップとして農業ロボットを開発し、2023年から2年間「つながりプロジェクト実証事業」に参画してきた経緯を紹介しました。

農業従事者の平均年齢が68歳を超え、重労働の継続が難しくなる中、「アダム」が収穫物運搬や農薬散布を担うことで、体力に依存しない農業経営を可能にします。マルシメではすでに実証・活用が進み、そこから一歩踏み込んだシェアリング展開に挑戦している点が高く評価されました。

株式会社FieldWorks × 農園そもそも代表 鈴木 直樹 氏

畝の間を自走する薬剤散布ロボットの実証実験

株式会社FieldWorksと農園そもそもによる共創では、畝の間を遠隔操作で自走する薬剤散布ロボットの実証実験が行われました。もともとは草刈りロボットとして開発された技術ですが、現場の農家からの「除草剤を散布してほしい」という声を受けて改良が重ねられてきました。

FieldWorksは、新潟県を拠点に約30名のエンジニアが日本の狭い農業現場に適した小型ロボットを開発。除草から薬剤散布、防除対応へと進化し、重い機材を持たず等間隔で作業できる点や、真夏のハウス作業を不要にする点が評価されました。当日はトマト・ナス農家向けに各1台ずつ豊橋へ納品されたことも報告され、現場発の声を取り入れながら進化を続ける共創事例として注目を集めました。

エコシステム形成支援感謝状

エコシステム形成支援感謝状は、東三河地域においてスタートアップ支援や共創の土壌づくりに大きく貢献してきた個人を称えるものです。

今回は、分野の異なる3名が受賞し、それぞれの立場から地域エコシステムを支えてきた歩みが紹介されました。

東三河スタートアップアワード2025_エコシステム形成支援感謝状

株式会社ワイエムジー 山本 祐一郎 氏

山本氏は企業や教育機関を巻き込んだ体験型イベント「STREAM FEST.2025」の開催や、各種シンポジウムへの登壇を通じて、子どもたちが未来の技術に触れる機会を創出してきました。こうした活動が、次世代人材の育成とスタートアップエコシステム形成につながっている点が評価されました。

受賞コメントでは、「新しい力がどんどん盛り上がっているのを見るのが本当に嬉しい」と語り、「感謝状をいただいたが、こちらこそ感謝している。一緒に東三河が盛り上がっていけばいい」と、地域全体での成長への期待を述べました。

百年柿園ベルファーム 鈴木 義弘 氏

鈴木氏は、豊橋市のTOYOHASHI AGRI MEETUP事業において、自身の農園をスタートアップの実証実験の場として継続的に提供してきました。多くのスタートアップや企業の新規事業を受け入れ、現場目線での共創を支えてきた姿勢が高く評価されています。

「5年前には農園の中をロボットが走り回るとは想像もしていなかった」と語る鈴木氏は、人手不足の課題をきっかけに柿の収穫支援ロボットの構想を口にしたことから開発が始まったと振り返ります。この5年で技術は大きく進化し、「次の100年に向け、スタートアップの力とともに地域農業を盛り上げていきたい」と意欲を示しました。

新城市役所 産業政策課 小柳津 駿 氏

小柳津氏は新城市におけるスタートアップ連携の中心的な役割を担ってきました。地域事業者を一社一社訪問して課題を丁寧に聞き取り、適切なスタートアップとつなぐ橋渡し役として奔走。セミナーの開催やSTATION Aiとの連携企画なども推進してきました。

受賞コメントでは、「まだ取り組みは数年」と謙遜しつつも、「地域の事業者さんに直接話を聞くことを大切にしている」と語り、地方ならではの課題をスタートアップにとっての可能性へと転換する地域共創に、今後も力を入れていく姿勢を示しました。

まとめ

今回のアワードも昨年に引き続き、地域で挑戦を続ける事業者やスタートアップの取り組みが紹介・表彰されました。

アワードの後には同会場にて第9期となるHigashi Mikawa UPPERS MEET-Upも開催。こちらの盛り上がりも地域のスタートアップ機運の高まりを感じさせられました。

これからも東三河における新たな挑戦の広がりにご注目ください