2024年4月より障害者雇用促進法の改正があり、法定雇用率も引き上げになります。障がい者を雇用する企業の範囲が増えるほか、障害者雇用に利用できる助成制度の拡充などが行われます。改正内容について社労士が解説します。
1)障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法とは、障がい者の職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じることで障がい者の職業の安定を図ることを目的とした法律です。この法律に基づき、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。法定雇用率を下回ると納付金を納付し、上回ると報奨金・調整金が支給される仕組みになっています。
2022年11月にこの法律が改正され、2023年4月と2024年4月より改正内容が段階的に施行されることとなっています。
2)障害者雇用促進法 令和5年(2023年)4月施行の内容
障がい者を雇用する企業の義務として、雇用する障がい者に対する職業能力の開発及び向上を行うことが努力義務として定められました。
第五条 全て事業主は、障害者の雇⽤に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業⼈として⾃⽴しようとする努⼒に対して協⼒する責務を有するものであつて、その有する能⼒を正当に評価し、適当な雇⽤の場を与えるとともに適正な雇⽤管理並びに職業能⼒の開発及び向上に関する措置を⾏うことによりその雇⽤の安定を図るように努めなければならない(障害者雇用促進法)。
これにより、障がい者として雇用されている方について負う事業主は下記のような取組を行うことが求められます。
- 障がいを持つ労働者本人の業務実績や能力を踏まえた人事評価制度の導入
- 人事評価の結果を活かした業務設定やキャリアアップのための研修機会提供
3)障害者雇用促進法 令和6年(2024年)4月施行の内容
今年の改正では、下記3点が主な改正内容になっています。
①短時間雇用の障害者も実雇用率に参入対象とする変更
今まで、企業が障害者雇用率を算定する場合には障がい者の安定的な雇用という観点から週所定労働時間20時間以上の障がい者のみを実雇用率の算定対象としていました。しかし、実際には週所定労働時間20時間未満で就労する障がい者が多数存在しており、多様な働き方のニーズもあることから、特例的に週10時間以上20時間未満の所定労働時間で働く障害者について実雇用率に算定できる取扱いに変更されました。
ただし、就労継続支援A型の事業所で就労する障がい者については、今回の措置の対象外となります。
詳しい算定方法は下記表のとおりです。
週所定労働時間 | 30時間以上 | 20時間以上30時間未満 | 10時間以上20時間未満 |
---|---|---|---|
身体障がい者 | 1人 | 0.5人 | - |
身体障がい者(重度) | 2人 | 1人 | 0.5人 |
知的障がい者 | 1人 | 0.5人 | - |
知的障がい者(重度) | 2人 | 1人 | 0.5人 |
精神障がい者 | 1人 | 0.5人(当分の間1人) | 0.5人 |
②障がい者雇用を行う事業主への経済的支援の拡充
障がい者の実雇用率が法定雇用率を上回っている場合、その程度に応じて支給される調整金・報奨金の額を減額し、助成金を拡充することになりました。
具体的には、下記の助成金が新設・拡充されることとなります。
- 障害者雇用相談援助助成金(新設)
- 障害者介助等助成金(拡充)
- 障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)(拡充)
- 障害者作業施設設置等助成金(拡充)
- 職場適応援助者助成金(拡充)
③法定雇用率の引き上げ
法定雇用率は段階的に引き上げられることが確定しており、令和6年(2024年)4月以降民間企業の法定雇用率は2.5%に引き上げになります。これにより、障がい者を雇用しなければならない企業は従業員数40人以上の企業になりました。
なお、令和8年(2026年)4月には2.7%に引きあがることが確定しています。
4)障がいのある人もない人も働きやすい職場づくりへ
障害者雇用制度は複雑で難しいイメージもありますが、法を知ることで様々な制度が活用でき、障がいのある人もない人も働きやすい仕組みを作ることが可能です。障害の有無にかかわらず誰もが共に生きていける社会(ノーマライゼーション)の実現のため、私たち一人一人が障がい者雇用に関する知識を深めることが求められます。