豊橋技術科学大学の実務訓練

地域のイノベーションを支える(株)サイエンス・クリエイトでは、アントレプレナーシップ教育や地域貢献人材育成の観点から高校・大学のインターンシップを積極的に受け入れています。
そのなかでも、最長となる2か月間におよぶ期間の受け入れとなるのが、豊橋技術科学大学の「実務訓練」生の受け入れです。

豊橋技術科学大学(技科大)では、学部4年次に学生が約2ヵ月間、企業や団体で実際に働く「実務訓練」というカリキュラムが設けられています。
教室で学んだ専門知識を、実社会の現場でどう活かすのか。学生にとって大きな挑戦であり、将来を考える貴重な機会です。
今回は、その実務訓練の受け入れ先のひとつである株式会社サイエンス・クリエイトで実習を行っている学生にインタビュー。
リアルな現場で何を感じ、何を学んだのか。その2ヵ月に迫ります。

株式会社サイエンス・クリエイトでの実習とは?

Startup Garage_内装

サイエンス・クリエイトは、豊橋市に本社を構える第三セクター(行政が出資して設立された株式会社)です。
「東三河から新しい産業を生み出す」ことを目的に、1992年の設立以来、30年以上にわたり地域産業の振興に取り組んできました。
事業内容は、人材育成、企業支援、研究開発支援、クリーンエネルギーの推進など多岐にわたります。
その中でも、起業や新規事業の創出を支援する拠点がStartup Garageです。
ここでは、アイデア段階から事業化までを伴走支援し、東三河全体の産業発展を後押ししています。

一見すると、理系色の強い技科大とは接点が少ないように思えるかもしれません。
しかし実際は、技科大には専門分野の知識や技術を活かして、独立や事業化に挑戦する学生も少なくありません。
過去には、実習をきっかけにStartup Garageの起業支援プログラムを活用し、活動を続けている学生もいます。

▼昨年の様子はこちらの記事で詳しく紹介しています。

学生の可能性を大きく広げてくれるこの実習。
今回は、どんな学生が参加し、どのような学びを得ているのかを深掘りしていきます。

学生インタビュー

今年度、サイエンス・クリエイトで実習を行っている学生はこちらの2人です!

▼取材に協力していただいた実習生

河田 光永さん

河田 光永 さん

豊橋技術科学大学
応用化学・生命工学課程
工学部4年生

藤本 裕司さん

藤本 裕司 さん

豊橋技術科学大学
電気・電子情報工学課程
工学部4年生

サイエンス・クリエイトを選んだ理由

実習先はいくつもある中で、どうしてサイエンス・クリエイトを選んだんですか?

河田さん:
「実習先一覧を見ると、民間企業か市役所がほとんどなんです。でもサイエンス・クリエイトは“第三セクター”で、行政と民間の両方の性質を持っていると聞いて。そこが一番気になりました。
行政のように地域全体を見る視点もありながら、民間のように新しいことにも挑戦している。その立ち位置が面白いと思いました」

藤本さん:
「起業支援に明確な興味があったわけではないんです。でも、研究だけでなく“社会とどう関わるのか”を知りたい気持ちがありました」

実際に来てみて、最初はどんな流れでしたか?

河田さん:
「実習担当の勝間さんと最初に話したタイミングで、“MVPを提供するサービスを作っていきましょう”と言われました。
MVPという言葉も知らなかったので、“MVPとは?”から学ぶところからのスタートでした」

実習ではどんなことをしている?

MVPを提供するサービスとは、具体的にどんな内容ですか?

藤本さん:
「MVPは“最小限の機能で市場に出すプロダクト”のことです。僕たちは、起業者やこれから起業を考えている人がMVP検証をする際にサポートするサービスを考えました」

河田さん:
「既存の支援サービスはビジネスマン向けが多く、専門用語も多いと感じました。
例えば“料理を仕事にしたい”と思った主婦の方が、いきなりマーケティングやITの話を聞いたら戸惑ってしまうと思います。
そこで専門用語を分かりやすく説明しながら、できるだけコストを抑えて形にするサポートを考えました。
そのサービスが『サポートチームぎっかchan』です」

実際にはどんな制作をしましたか?

サービス内容を伝えるためにLP(ランディングページ)やチラシを制作しました。
また、ペルソナ(=ターゲット)を「お弁当屋さんを始めたい主婦」に設定し、注文や会計を管理できるシステムも構築しました。
お弁当の注文が入ると、管理者側で誰が何個注文したかが分かる仕組みを想定し、実際に使える形を目指しました。

プレゼンをする様子

サービス内容をプレゼンする様子

印象に残ったこと

一番頭を悩ませたことは?

河田さん:
「ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップ作成が一番難しかったです。
“この人がどうやってサービスを知り、利用し、広がっていくのか”を段階的に考えるのですが、答えがないので、丸一日考え続けることもありました」

主婦をペルソナに設定したため、実際に母親にLPを見てもらい意見を聞くこともあったそうです。
「“ここ何?”と言われて、自分たちが思っていた以上に伝わっていないことに気づきました」と振り返ります。

藤本さん:
「技術的な実装はできますが、その前段階で“いろんなシチュエーションを想定すること”が難しかったです。
自分の価値観だけでは足りないと感じ、相談者の方に“奥さんはどんなSNSを使っていますか?”と聞いたこともあります」

嬉しかったことは?

2人で「完璧だ」と思って提出したLPに対して、実習担当の勝間さんから「全然ダメ、これは誰が見るの?」という指摘を受けて呆然としました。
改めてみると、フォントの印象や文字量など、前提となるターゲットのことを忘れ、ただHPを作っていたことに気づかされました。
それでも修正を重ね、納得のいく形に仕上がったときには大きな達成感がありました。

完成したLPはこちら

将来の進路への考え方に変化はあった?

河田さん:
「大きく変わったわけではありませんが、商品・サービスを提供する体験をさせてもらって、より開発職への思いが強まりました。」

藤本さん:
「研究者になると思っていましたが、“使う人”の視点を意識するようになりました。
研究だけにとらわれず、営業職や開発職など視野を広げて考えてみようと思いました。」

学びを今後どう活かしたい?

河田さん:
「技術を作るだけでなく、“届ける”“使われる”まで考えられるようになりました。
この視点は今後も持ち続けたいです」

藤本さん:
「ゼロから形にする難しさと責任を知りました。
これからは“誰のために作るのか”を常に意識して取り組みたいです」

実務訓練の指導員に直撃インタビュー

▼実習担当プロフィール

勝間 亮さん

勝間 亮 さん

1988年神戸生まれ。工業高校卒業後、名古屋工業大学で機械工学を専攻。
宇宙分野への強い関心から、自衛隊に入隊しロケット打ち上げ関連業務への配属を志望。その後、豊川の企業で設計職として約4年間勤務したのち、宇宙関連のサポートオフィスを立ち上げる。

資金面の課題から宇宙ベンチャー企業などを経験し、現在はサイエンス・クリエイトにて、衛星データを活用した業務や地域産業支援に携わっている。

勝間さんの宇宙ビジネスに関するコラムはこちら▼

指導で大切にしていること

基本は「自分たちで考えてもらうこと」です。答えを与えるのではなく、仮説を立て、自分で解釈し、形にする力を育てたいと思っています。
今年は特に“体験”に重きを置きました。やりたいことを自由にやらせるのではなく、あえて課題を与え、MVPの考え方に集中してもらいました。量産よりも前に「価値を証明すること」が一番大事だと伝えています。
また、技術者はどうしても自分が作りたいものに寄りがちです。だからこそ「ペルソナはどこにいるのか?」と何度も問い直します。技術ではなく、使う人から考える。その視点を大切にしています。

実習開始から1ヵ月での変化

一番の変化は、受け身でなくなったことです。話を聞くだけでなく、自分たちで仮説を立てられるようになりました。
説明をしなくても、「こうするとこうなりますよね」と自然に因果関係をつなげられるようになっています。相手を想像する力も高まりました。技術そのものではなく、「誰が使うのか」から考えられるようになったのは大きな成長です。

技科大生の特徴

強みは、圧倒的な実装力です。Webやハードも含めて、アイデアをすぐ形にできる力があります。コードを書き、プロダクトをつくり上げるスピードと完成度は非常に高いと感じています。
一方で課題は、技術が主役になりやすいことです。どうしても「自分が作りたいもの」に意識が向きがちで、「誰のためのものか」という視点が抜けてしまうことがあります。
だからこそ、ペルソナに立ち戻ることを何度も求めます。技術者と商売人の違いは、「誰の課題を解決するのか」を起点に考えられるかどうか。その視点を持てたとき、技科大生の実装力は大きな武器になると思っています。

若者に期待すること

AIが当たり前になる時代だからこそ、「問いを立てる力」が重要になります。何のためにやるのかを考える力は、起業に限らず、どの分野でも必要です。
今回の体験を通して、価値を証明するプロセスや仮説思考を少しでも身につけてくれていたら嬉しいです。それが将来どんな道に進んでも活きる力になると思っています。

まとめ|2ヵ月が、未来の視野を広げる

サイエンス・クリエイトでの実務訓練は、単なるインターンシップではなく、「技術を社会にどう活かすか」をリアルに考える場でした。
研究室の外に出て、地域や企業、起業家と関わることで、学生は自分の専門の新しい可能性に気づいていきます。
実社会の中で学ぶ2ヵ月間の経験は、これから進路を選ぶうえでも、大きな財産になるはずです。

また、Startup Garageは実習生だけでなく、起業を目指す学生や社会人、新規事業に挑戦する企業などが集う拠点です。
挑戦する人たちのエネルギーがあふれるこの場所では、起業相談やイベント、セミナーも開催されています。
一歩踏み出したい方は、ぜひStartup Garageを訪れてみてください。

企業名 株式会社サイエンス・クリエイト
住所 〒441-8113
愛知県豊橋市西幸町字浜池333番地の9 豊橋サイエンスコア内
創立 平成2年10月22日
代表取締役 太田 晴也
HP 株式会社サイエンス・クリエイト
電話番号 0532-44-1111