こんにちは。社会保険労務士・キャリアコンサルタントの村井真子です。
最近、日本で注目を集めている「リカレント教育」。
皆さまはこの言葉をご存じでしたでしょうか?
今回はこのリカレント教育をテーマに、なぜ今リカレント教育が重要視されているのか、その背景をご説明します。
そもそも、リカレント教育とは?
リカレント(recurrent)とは「反復、循環、回帰」を意味する言葉。したがって、リカレント教育とは、生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返す教育制度を指しています。
なお、リカレント教育は「生涯教育」とは異なる概念です。趣味的な学習を含む生涯教育に比べ、リカレント教育はあくまでも仕事に活かす学びを指しているという特徴があります。
日本では高校・大学・大学院などを卒業して社会人になるとなかなか教育を改めて受ける機会を得ることは難しかったり、そのような環境を整えることが困難という事情がありました。
しかし、コロナ禍でテレワークや休業、自宅待機等で得られた時間を有効活用するために、最近では社会人大学院に入学したり、資格取得のための勉強を始める方が増えています。
また、オンライン授業を提供する学校や教育機関が増えてきたことも、いまこのタイミングにおいて改めて学びなおす方が増えてきた背景にあるように思います。
リカレント教育が重要視される2つの理由
リカレント教育がなぜ、今の日本において重要視されているのか、理由としては大きく分けて2つあると私は考えています。
1つ目は、社会情勢のダイナミックな変化に対応していくためです。
IoT(モノのインターネット化)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な普及、進化により、「仕事」というものの質が明らかに変わりました。また、コロナ禍で企業の複線化が進み、「〇〇だけ作っている会社」「▲▲だけ売っている会社」のようなシンプルな企業がどんどん減ってきています。
そのような社会情勢の変化に伴って、企業が対応すべきビジネス上の課題は飛躍的に複雑になりました。当然、それを処理していくビジネスパーソンに求められる資質や能力、知識も様変わりしています。
今までであれば1つの業界理解があればよかった、1つのスキルがあればよかった。そういう方でも、所属している企業が新業種・新業態をはじめればその業界について学んだり、必要とされるスキルや能力が変わってくるのです。ですから、改めて大学をはじめとした教育機関で最新の理論を学びなおしたり、改めて勉強をする必要が出てきたのです。
2つ目は、自分のライフキャリアをより良いものにしていくためです。
かつて、日本で初めて公的年金が生まれたとき、老齢年金の支給開始年齢は55歳でした。その後、数度の法改正を経て現在は65歳にまで支給開始年齢が引き上げられています。また、現在は65歳を下回る定年年齢を定めてはならないことになっています。
つまり、いわゆる「老後」がスタートする時期が10年間伸びているのです。
ということは、必然的にそこまでは働きつづける必要が出てくるということです。
ですが、先に述べたように社会情勢は日々変化しており、それに伴って労働市場で必要とされる能力やスキル、知識はどんどん多様化しています。
また、働き方自体もテレワーク、リモートワークといった場所に縛られない働き方が一般化し、副業や業務委託・週休3日制など就労方法の選択肢も増え、生業をいくつか掛け持ちするようなパラレルワーカーの方も増えてきました。
しかし、当然のこと、その中で自分自身が納得して働ける環境を作ったり、自分がしたい仕事に手をあげていくには継続的な学びの姿勢が必要になってきます。場所の制約がなくなることによって仕事の幅は飛躍的に増える半面、その仕事を受託するために争うライバルの数も大きく増えてきます。あるいは、エッセンシャルワークのように必ず人が介在する仕事の場合、個々人の仕事の質によって受託できる仕事の幅が異なってくることにもなるでしょう。
それに対応してキャリアアップするためには、自ら学び新しい知識、技術を取り入れていく必要があるのです。
また、家事や育児、介護、闘病、転居などのライフイベントによって仕事を中断している方がブランクを乗り越えるための方法としてもリカレント教育は有効です。
社会人としての経験を活かしつつ、ご自分の新しいキャリアを作り上げていく方法として興味関心のある分野を学ぶことはもとより、その副産物として得られる人的ネットワークが更なる刺激を人生に与えてくれ、自分のキャリアを再構築する手助けになってくれます。
逆を言えば、学び続けることが出来ない方にはどんどん厳しい時代になるでしょう。
まとめ~リカレント教育で自分のキャリア資本を高めよう!
人生100年時代という言葉が叫ばれて久しい今、私たちは今までにない長さの時間を働き続けることになります。また、医療の進歩や少子高齢化により、結婚や出産、介護や就転職といったライフイベントが起こる時期が画一的ではなくなり、人によってそれぞれのタイミングで起こるようになりました。
だからこそ、私たちは自分自身のキャリアについて考えるべきなのです。
リカレント教育で学びなおすこと、その中で得た知見や友人、ネットワークの一つ一つが個人のキャリア資本として蓄積されます。それを基に、より自分が望む仕事を望むかたちで手に入れることが、現代の働き甲斐に繋がっていくのではないでしょうか。