傷病手当金_コロナ

こんにちは。社会保険労務士・キャリアコンサルタントの村井真子です。
本日は新型コロナウイルス感染症にも関連して関心の高い、健康保険の傷病手当金について解説いたします。

そもそも、傷病手当金って何?

傷病手当金_支給申請書

傷病手当金とは、健康保険制度の給付の一つで、病気やケガで仕事を休んだ場合に支給される給付金のことです。その基本的な支給条件は下記のとおりです。

①仕事に関連性のない病気やケガによる休業をしていること

②その病気やケガによって仕事に就くことができないこと

③連続する3日間を含み、4日以上の休業であること

①については、「仕事に関連のない」というところがポイントになります。仕事に関連する病気やケガは労災保険から給付を受けることができるからです(労災保険は全額事業主負担になりますので、基本的にはお休みされている人に治療費の負担はありません)。また、自宅療養でも対象になります。ただし、美容整形や病気・ケガによらない手術等に関しては、この給付の対象外になります。

②については、「仕事に就くことができない」というところがポイントです。この要件を確認するため、傷病手当金の申請用紙には医師の記入欄があります。具体的には、「いつからいつまで」就労できないのか、という点について医師の証明が必要になるのです。

③は少しわかりにくいですが、要するに連続4日以上休んでいることが受給要件になります。休みの初日から3日間は待機期間になるため、傷病手当金の支給を受けられる期間から除外されます。休みの初日は全日である必要はなく、早退でもOKです。また、この待機の3日間は有給休暇を使ってもよく、もともと休日である場合も認められます。そして、この3日間は必ず連続している必要があり、4日目のお休みの日から傷病手当金の支給対象となるのです。

この①~③の支給条件を満たす場合で、お休みされた日について傷病手当金の日額として算定された額を下回る給与を受けたか無報酬だった場合に、傷病手当金が支給されるのです。
なお、支給される期間は、最大で支給を初めて受けた日から1年6か月までの期間です。

傷病手当金の額は、以下の通りです。

①傷病手当金を受けられる期間に無報酬だった場合
1日あたりの金額=(お休み4日目時点以前12か月の標準報酬月額÷12)÷30×2/3(―A)

②傷病手当金を受けられる期間に報酬があった場合
1日あたりの金額=1日の報酬額ー上記Aの差額

※標準報酬月額とは、お給料の金額に応じて定められる等級の金額のことです。例えば、総 支給額31万の方の場合、標準報酬月額は23等級・32万円になります。

ご参考 令和3年度保険料額表 愛知県版 

※上記は原則的な算定方法です。入社して1年未満の方などは特例の算定方法があるため、1日あたりの金額が原則的な方法と異なる場合があります。

ご参考 病気やケガで会社を休んだとき|こんなときどうする(傷病手当金)

新型コロナウイルス感染症と傷病手当金

コロナ女性_体調不良

では、このようなケースではどこまでが傷病手当金の受給範囲になるでしょうか。

 
Aさんは、週休2日(土日)の会社に務める正社員です。金曜日に悪寒を覚え早退し、日曜に39度まで発熱したため、翌日の月曜日、出勤前に近所の個人病院を受診しました。すると、新型コロナウイルス感染症の疑いがあるためPCR検査を受けるよう勧奨を受けました。検査が受けられるのは最短でもあさっての水曜日になるそうです。
Aさんはこの時点で会社に欠勤の連絡をし、会社に今後の出勤について相談しました。会社は、まだ感染しているかどうかはわからないものの、その疑いがある状況なので、とにかく検査結果が出るまでは自宅待機をしてほしい、とAさんに伝えました。Aさんは納得し、有休が2日間残っていたので、とりあえず月曜日と火曜日は有休にしてほしい、と伝えました。水曜日に保健所でPCR検査を受け、木曜日の18時頃、電話で陰性と診断されたことが伝えられました。
Aさんは会社に相談し、念のため金曜もお休みして、翌週月曜から職場復帰することにしました。

この場合、Aさんの待機期間は悪寒を覚えた金曜日+もともとお休みの土日の3日間になります。ですから、傷病手当金の対象期間は4日目である月曜日からになりますが、月・火曜は有給休暇を使用していますので、傷病手当金は不支給になります。ですから、水曜日からが傷病手当金の支給対象となるわけです。
この場合は、水・木曜日が休業手当の対象になります。

では、金曜日はどうして傷病手当金の対象にならないのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症でお休みされる場合、以下のパターンが考えられます。

イ:本人が陽性(感染者)である場合

ロ:本人が濃厚接触者である場合

ハ:本人と同居する家族が陽性である場合で、自分は濃厚接触者に該当しないが、休業する場合

二:本人と同居する家族が濃厚接触者である場合で、休業する場合

ホ:本人が感染の疑いがある、または濃厚接触者で、医師の指示によりPCR検査を受けるように指示された場合のその検査を受けるまでの期間、休業した場合

この場合で、傷病手当金の支給対象となるのは、イ・ホの場合です。検査結果が陰性だとしても、結果が判明するまでの間にお休みしている期間は支給対象になりますし、陽性であれば入院・自宅療養のいずれの場合であっても傷病手当金を貰うことができます。

ですが、ロ・ハ・二などの場合は支給対象になりません。
傷病手当金はあくまでも本人が仕事に就けないということが支給条件なので、濃厚接触者として自宅待機・自宅隔離を保健所が指示してきた場合は傷病手当金を受けることができないのです。また、会社の判断で休業した場合も、傷病手当金の支給対象にはなりません。ただし、会社の指示により休業した場合は休業手当を会社から受けることができます。また、自己判断で欠勤した場合も、同様に傷病手当金を受けることはできません。
もちろん、ロ・ハ・二の場合に有給休暇を使うことは問題ありません。

ですから、先の例のAさんの場合は、陰性と判断された木曜日以降の休業、すなわち金曜の休業は傷病手当金を受けることができないのです。
金曜日の休業は、「会社と相談して」となっていますが、会社が休むよう命じたのであれば休業手当の支給対象になりますし、本人が自発的に休むことを申し出た場合は休業手当の支給対象外となります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症はきわめて感染力の高く、変異種の多い感染症であるため、感染の疑いのある場合は他者へ感染させないよう注意をする必要があります。ですがその反面、休んだ期間の所得保障である制度のひとつである傷病手当金の受給要件が上記のとおりであることは意外と知られていないように思います。
働いている方は、ぜひ一度、自分が感染した場合・濃厚接触者になった場合の対応を確認しておくことをお勧めいたします。