時短勤務とは

勤務先に時短勤務制度がある、または時短勤務のある企業へ転職を考えているけれど、時短勤務について詳しいことがわからないという方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、時短勤務の利用条件などの概要やメリット・デメリット、上手な利用方法を解説します。最後まで読んでいただければ、育児や介護と仕事を両立させたいときに役に立つでしょう。

時短勤務とは?

時短勤務とは

時短勤務(短時間勤務制度)とは、育児や介護で長時間の勤務が難しい場合に、勤務時間を短縮できる制度です。時短勤務(短時間勤務制度)は「育児・介護休業法」により企業が制度を設けることを義務づけており、その目的は、「育児又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、このような労働者が退職せずに済むようにし、その雇用の継続を図るとともに、育児又は家族の介護のために退職した労働者の再就職の促進を図ること」と定められています。

ここでは、時短勤務の利用条件や給与の計算方法、申請方法など制度の概要を解説します。

参照:厚生労働省|育児・介護休業法のあらまし|この法律の目的

時短勤務の条件

時短勤務を利用できる条件は、育児と介護で異なります。以下に、それぞれの条件を詳しく解説します。

育児

育児のために時短勤務を利用する場合の概要は以下のとおりです。

措置の内容 1日の所定労働時間を原則として6時間とする
利用条件
  • 3歳未満の子を養育している
  • 時短勤務を利用する期間に育児休業を利用していない
  • 1日の労働時間が6時間以内でない
  • 日々雇用される従業員ではない
適用期間 子が3歳になる誕生日の前日まで
適用除外となる条件
  • 雇用期間が1年未満である
  • 1日の所定労働日数が2日以下である
  • 業務の性質上、時短勤務を適用するのが困難な場合

ただし、業務の性質により時短勤務を適用するのが困難な場合は、下記のような代替措置を講じることが企業に義務づけられています。

  • 育児休業に関する制度に準じる措置
  • 始業時刻・終業時刻の変更(フレックスタイム制、時差出勤、保育施設の設置等)
  • テレワーク

また、2025年4月より「育児時短就業給付」が創設されました。育児時短就業給付とは、2歳未満の子どもを育てる親を対象に、時短勤務開始前の給料を超えない範囲で、時短勤務中に支払われた賃料の10%が支払われる制度です。育児休暇により給与が減ってしまうのを補助することを目的としています。

介護

介護のために時短勤務を利用する場合の条件は以下のとおりです。

措置の内容 以下のいずれか

  • 短時間勤務の制度
    1. 1日の所定労働時間を短縮する
    2. 週または月の所定労働時間を短縮する
    3. 隔日勤務または特定の曜日のみの勤務とする
    4. 労働者が個々に勤務しない日や時間を請求できる
  • フレックスタイム制
  • 始業時刻・終業の時刻の繰り上げまたは繰り下げ(時差出勤)
  • 介護サービス費用の助成
利用条件
  • 要介護状態(2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)の家族を介護している
  • 日々雇用されていない
適用期間 対象家族1人につき、時短勤務を開始した日から3年以上の期間で2回以上(上記「介護サービスの助成」は1回のみ)
適用除外となる条件
  • 雇用期間が1年未満である
  • 1日の所定労働日数が2日以下である

雇用形態で差がある?

時短勤務は利用する労働者の雇用形態による差はありません。

時短勤務を利用する条件に雇用形態の定めはないため、正社員・契約社員・パートなど雇用形態に関係なく、利用条件に当てはまっていれば時短勤務を利用できます。

給料の計算方法

時短勤務を利用すると利用開始前より勤務時間が減少するため、減少した勤務時間に応じて給料も減額されます。

育児のために時短勤務を利用する場合、減額された給料は以下の計算方法で算出できます。

時短勤務前の給料÷時短勤務前の1日の就業時間×時短勤務後の就業時間=時短勤務後の給料

例えば、時短勤務前の給料が25万円、1日の就業時間が8時間、時短勤務開始後の就業時間が6時間だった場合、時短勤務開始後の給料は25万円÷8×6=18万7,500円です。

時短勤務の申請方法

時短勤務の申請方法は、企業ごとに設定されています。企業により申請方法が異なるため、書類の記入方法や必要書類などを事前に確認しておくと、いざというときに慌てずに手続きできるでしょう。

育児と介護いずれの時短勤務も、企業に義務づけられているのは制度を設けることであり、すべての従業員に制度を適用させるように義務づけられているわけではありません。そのため、時短勤務を利用するには、自分から申請することが必要です。

時短勤務とフレックスタイム制の違い

時短勤務_フレックスタイム制度違い

時短勤務と混同されやすいのがフレックスタイム制です。時短勤務とフレックスタイム制の違いは、1日における労働時間です。

時短勤務は1日の労働時間が、育児の場合は基本的に6時間と決められています。出勤時間と退社時間も決められており、毎日同じ時間に出社して同じ時間に退社します。

一方、フレックスタイム制は1日の労働時間の長さを固定しない働き方です。1ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定めて、その時間内で1日の労働時間を自分で決められます。出社する時間と退社する時間も自由に決められるのが特徴です。

時短勤務のメリット

時短勤務メリット

時短勤務には、以下のようなメリットがあります。

  • 育児や介護の時間を確保できる
  • 体力的・精神的負担を減らせる
  • 仕事を続けられる

ひとつずつ詳しく解説します。

育児や介護の時間を確保できる

時短勤務の大きなメリットは時間の確保です。

フルタイムなど長い時間働いていると、出社前や帰宅後しか育児や介護の時間をとれず、十分に世話をできないことがあります。また、仕事をしている日中は、家族などに育児や介護を負担してもらわなければなりません。

時短勤務を利用すれば、勤務時間を減らせる分、育児や介護に使う時間を確保できます。

体力的・精神的負担を減らせる

体力的・精神的負担を減らせるのも、時短勤務のメリットのひとつです。

フルタイムで働きながら育児や介護をする場合、帰宅して子どもの送迎や食事の支度、家族の介護をすると、常に時間に追われながらあっという間に1日が終わってしまうでしょう。時間に余裕がないと、精神的にもストレスを感じやすくなります。

時短勤務を利用して育児や介護に充てる時間にゆとりがもてると体力的・精神的な負担を減らすことにもつながるでしょう。

仕事を続けられる

育児や介護のために仕事を辞める人は少なくありません。時間的にも体力的にも負担が大きく、仕事との両立が難しいと感じるためです。

しかし、時短勤務を利用すれば、時間的にも精神的にも余裕ができて、仕事との両立がしやすくなります。自分のキャリアを中断させることなく、育児や介護をこなせます。

時短勤務のデメリット

時短勤務デメリット

時短勤務のデメリットは主に以下のようなものがあります。

  • 給料が減る
  • 昇進や業務に影響が出る可能性がある
  • 職場内で負担をかけてしまう可能性がある

以下に、項目ごとにみていきましょう。

給料が減る

時短勤務により勤務時間が減れば、給料も時間数に応じて減額されます。経済的に負担が増えることになるため、前もって生活費などの資金計画をしっかりとたてる必要があります。

昇進や業務に影響が出る可能性がある

時短勤務により勤務時間が短くなると、それまでと同じ業務をおこなうのが難しくなるかもしれません。業務量を減らしたり負担の少ない業務に変更したりする場合もあるでしょう。

結果として、大きなプロジェクトや責任の大きい業務を任される機会が減るなど、仕事内容に影響が出る可能性があります。営業など成果を求められる業務をおこなっている場合は、思うような結果が出せず、昇進に影響が出ることも考えられます。

職場内で負担をかけてしまう可能性がある

時短勤務により勤務時間内にできる業務量を減らす必要があると、職場内の誰かが代わりに担当しなければならなくなります。そのため、職場内で負担をかけてしまうことになり、職場に居づらくなることもあるかもしれません。

職場の人に協力してもらうために、育児や介護が必要な家庭の事情を共有するなど、職場内で理解を得られるように働きかけることが大切です。

時短勤務を上手に利用する方法

時短勤務利用方法

時短勤務は、上手に利用できれば享受できるメリットも大きいです。時短勤務を上手に利用する方法は以下のとおりです。

  • 通常勤務に戻るときは家族の理解を得る
  • 職場内のコミュニケーションを密にする
  • 他の制度の利用も検討する

以下にひとつずつ解説します。

通常勤務に戻るときは家族の理解を得る

時短勤務の適用期間が終わると、通常の勤務に戻ります。勤務時間が時短勤務前と同じ時間になれば、時短勤務中におこなっていた育児や介護に充てられる時間が減ります。

引き続き育児や介護に人手が必要な場合は、家族や外部からのサポートが必要になるでしょう。理解を得られるよう、通常勤務に戻る際は、家族が困らないように計画を立てることが必要です。

職場内のコミュニケーションを密にする

時短勤務を利用すると就業時間が減るため、職場内の負担が増えてしまうことがあります。職場内で不満が出ないように、仕事の引き継ぎをきちんとおこなうなどコミュニケーションを密にとり、理解を得る必要があります。

時短勤務中に協力してくれる周囲の人と業務に必要な連絡を丁寧にとりあうことで、通常勤務に戻ったあともスムーズにもとの業務に戻れるでしょう。

他の制度の利用も検討する

育児や介護の時間を確保するには、時短勤務以外にも利用できる制度があります。例えば、以下のような制度です。

  • 育児・介護休暇
  • 所定時間外労働の制限(残業免除)
  • フレックスタイム制
  • 時差出勤
  • テレワーク

小学校3年生までの子どもの育児や家族の介護のために、子の看護等休暇や介護休暇を利用できます。令和3年1月より1時間単位で休暇を取得できるようになりました。

また、小学校就学前までの子の育児や要介護状態の家族を対象に、時間外労働の制限(残業免除)を申請できます。残業などで帰りが遅くなり育児や介護に支障が出ないようにすることも可能です。

フレックスタイム制や時差出勤を上手に利用すれば、1日の就業時間を家庭の都合に合わせて調整できます。

時短勤務だけでなく、勤務時間を調整できる他の制度を検討することにより、自分に合った柔軟な働き方を選びやすくなるでしょう。

時短勤務を活用して仕事と育児・介護を両立させよう

時短勤務両立

時短勤務は、仕事をしながら育児や介護をしやすくするための制度です。時間的にも精神的にも余裕をもって、キャリアを継続しながらワークライフバランスを保つことも可能です。

ただし、時短勤務を利用すると、育児や介護の時間を確保できる一方で、給料が減ったり業務や昇進に影響が出たりする可能性もあります。職場内で負担をかけてしまうこともあるため、上司や同僚の理解を得ることも大切です。

時短勤務など労働時間を調整できる制度を上手に利用して、仕事を育児や介護を両立させることで、仕事のやりがいを感じながら人生の目標に向かって前進できるでしょう。