
中央製乳株式会社が話題提供を行った第74回「ジェネカフェ」の様子をレポートします。
困難を乗り越えて地域インフラを守り抜く姿勢や、生産者の想いが詰まったブランド牛乳誕生の裏側に迫ります。
地域産業活性化のヒントが詰まった、情熱あふれる講演の様子をお届けします。
地域をつなぐ交流の場「ジェネカフェ」とは?

東三河地域の社会人を対象とした交流イベント「ジェネカフェ」。幅広い分野(民間企業、大学研究者、金融機関、行政など)で活躍する多彩な話題提供者をゲストに迎え、テーマに沿ったざっくばらんなフリートークを楽しめます。
本イベントの最大の特徴は、一方的な講義ではなく「参加者同士の交流」に重きを置いている点です。多様な立場やバックグラウンドを持つ参加者が集い、後半のディスカッションや質疑応答の時間を通じて、それぞれの異なる角度から意見や質問を投げかけ合います。
こうした対話を通じて、参加者自身のキャリアアップや地域課題の共有・解決の糸口を見つけるだけでなく、ゆくゆくは地域産業活性化の一助となることを目指しています。
中央製乳・草柳朋氏が語る熱い想い
第74回目である今回は、中央製乳株式会社 販売部 部長の草柳 朋 氏が話題提供。「中央製乳やってることすごい!地域酪農との絆、地産地消牛乳の開発秘話」をテーマに、笑いあり涙ありのトークが展開されました。

草柳氏は、名古屋で生まれ、4歳の時に豊橋市へ移住。同じ県内とはいえ言葉も環境も全く違う中で、小学校の給食で初めて飲んだ瓶の牛乳が「非常に美味しい」と感じた原体験が、のちに中央製乳で牛乳を作る現在へと繋がっていると振り返りました。
「人と人の繋がりは、こういう小さなところから繋がっていくのだろう」と語る言葉には、地元の産業や人に対する深い愛情が滲み出ていました。
県内学校給食の50%超を支える奮闘記
中央製乳は、現在毎日33万本もの学校給食用牛乳(66トン相当)を製造・供給しており、これは愛知県全体の学校給食牛乳の過半数を占めます。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
2013年から2019年にかけて、県内の同業乳業メーカーが相次いで廃業や学校給食事業からの撤退を余儀なくされる事態が発生しました。
リーマンショック後のデフレや販売量減少、さらには機械の老朽化など厳しい経営環境の中、「子どもたちに毎日おいしい給食の牛乳を途切れさせるわけにはいかない」という強い使命感のもと、同社は立ち上がりました。
生産時間を深夜・夜間からフル稼働へと大幅に拡大し、既存の物流会社とも連携を密にしながら、岡崎・西尾・知多半島(半田・常滑など)・豊田・名古屋市の一部(南区など)へと供給エリアを次々に拡大していきました。
さらに、2023年9月には長年親しまれてきた「ビン牛乳」の製造を惜しまれつつも中止し、環境配慮型(SDGs・脱プラスチック)に対応した最新の「ストローレスパッケージ」へと全域で移行するなど、時代の変化や困難に柔軟に対応しながら地域の健康と給食のインフラを守り抜いてきました。
生産者の声から生まれた奇跡の開発秘話

講演のハイライトとなったのは、大人気商品である地産地消ブランド牛乳「どうまい牛乳」および「のんほい牛乳」の誕生秘話です。
「どうまい牛乳」(旧田原町・2007年発売)
「自分たちが搾った生乳がどうなっているか分からない。自分たちのブランド牛乳が欲しい」という生産団体の女性部からの熱いリクエストからスタートしました。
特定の地域分だけを区分けして殺菌・パックするのは牛乳製造のセオリーからして不可能、として当初は見送られたアイデアでした。しかし、翌年も多くの人を巻き込んだ粘り強い直談判があり、その熱意に動かされた製造責任者が再検討。「深夜2時に入荷する田原の生乳をそのまま小型タンクに移し、朝一番の最初にパックしてしまえばできる!」とひらめきます。
コストの課題はあったものの、生産者を大切にする社風から商品化へ駒を進めます。人員配置などの課題をクリアし、方言を用いたネーミングと地域のデザイナーによる赤く鮮やかなパッケージの「どうまい牛乳」が誕生しました。
発売当初は価格面での壁もあり、辛い現実を目の当たりにすることも。それでも生産者と営業部隊が一体となって時にはスーパーや店頭に立ち、今や年間数十万本を誇る大ヒット商品へと成長しました。
「のんほい牛乳」(豊橋地区・2008年発売)
田原に続き、豊橋の生産者からも「豊橋のブランド牛乳も作ってほしい」という声が上がり、2008年に誕生しました。三河弁を活かしたネーミングとなり、可愛い牛のキャラクター「牛田のんちゃん」も誕生しました。
この「牛田のんちゃん」は大変な人気を博し、着ぐるみを作ってイベントやマラソン大会、出前授業などに登場。バンドに合流してギター演奏まで!幅広く地域を盛り上げるユニークな取り組みへと発展しました。
これらの地産地消牛乳は単なる飲料の枠を超え、さまざまな加工品にも活用され、「生産者の顔が見え、想いが乗ったプレミアムな価値」として地域の消費者に愛されています。草柳氏は、「価格競争は激しいが、この牛乳の価値とストーリーを伝え、ファンを1人でも多く増やしていきたい」と語りました。
コストがどうしても上がる「地産地消の牛乳」は新鮮な牛乳をすばやくパックすることによる美味しさのほか、生産者の顔や思いが見えることも大きな価値の一つです。
白熱の質疑応答&ディスカッション
イベント後半のディスカッションでは、会場およびオンラインの参加者から活発な質問が飛び交いました。
参加者からの「大手メーカーがひしめく中で中央製乳が生き残ってこられた強みは何か?」という質問に対し、草柳氏は「学校給食のない夏休み等にも毎日大量に入ってくる生乳を処理するため、牛乳をそのまま粉末化(スプレードライヤー)やバターにする加工施設(余乳処理施設)を自社で持っていたこと」が大きな強みであったと経営の裏側を明かしました。
「メタンガス削減牛乳のパッケージの手書きの絵は誰が描いたのか?」という質問には、愛知県酪農農業協同組合の若手職員が手掛けたことや、牛のゲップから出るメタンガスを削減する最先端の飼料を用いた「メタンガス削減牛乳」の実験販売の取り組みについても丁寧に解説されました。
「子どもの頃に飲んだ中央牛乳と今の中央牛乳の味が違う気がする」という質問には牛乳の味は季節や牛のエサ、運動の有無によって変化するという奥深い豆知識も含め、会場は終始温かい笑顔と知的好奇心に包まれました。

次回のご案内:第75回「ジェネカフェ」
地域のリアルなビジネスの舞台裏や、ここでしか聞けない生々しい挑戦のストーリーに触れ、新しい一歩を踏み出すヒントが見つかるジェネカフェ。次回も非常に魅力的なゲストをお迎えしてお届けします!
テーマ:ヤマサちくわ 老舗企業が共創を通して取り組んでいること
話題提供者:蔵野 泰輔 氏(ヤマサちくわ株式会社 専務取締役)
創業200年の歴史をはじめ、これまでに取り組んできた共創事例や、今後の展望について幅広くお話しいただきます。スタートアップが新たな組織でゼロから事業を生み出すことに難しさがあるように、長い歴史を持つ既存組織の中で、新しい事業や変革を進めることにも、異なる難しさがあります。
地域に根差して歩んできた老舗企業だからこそ直面する挑戦や葛藤、そして共創を通じて変革を進める背景について伺える貴重な機会です。
今回はまちなか図書館中央ステップがメイン会場となり、メイン会場の様子をZOOMでのオンライン配信も行います。また当日の様子は、豊橋サイエンスコア内のStartup Garageでも放映します(質問等の交流は不可)
| 会場 | 豊橋市まちなか図書館・ZOOM・Startup Garage |
|---|---|
| 参加費 | 無料 |
| 開催日時 | 令和8年8月27日(木) 18時00分~19時30分 ※ジェネカフェ本編は19時30分までとなりますが、ご参加者様での交流は20時頃まで可能です。 |
| 申込みフォーム | https://ws.formzu.net/dist/S11796173/ |
| 問合せ | 社会人キャリアアップ連携協議会 TEL: 0532-44-1111(担当:古川、青山、種田) |
地域の産業を支える老舗企業の挑戦と共創のリアルに触れられる次回のジェネカフェにも、ぜひご参加ください!