
豊橋市及び隣接する田原市・浜松市を含む愛知県東部・静岡県西部エリアは、全国的にも有数の農業地帯です。一方で、有数の農業地帯であるが故に、営農上の課題も多く抱えている現状があります。
これらの課題を解決するための糸口として、スマート農業やアグリテックといった新たな知識・技術の積極的な活用が注目を浴びています。

そうした中、豊橋市では、地域の農業者・農業関連企業と全国の有望な農業系スタートアップ企業をマッチングし、本市を実証フィールドとした農業課題の解決につながる新製品・サービス開発を目指す「TOYOHASHI AGRI MEETUP(豊橋アグリミートアップ)」を進めています。
本記事では、2025年9月29日(月)に豊橋技術科学大学で行われた、「第1回アグリテック企業との交流会(以下、交流会)」の様子をお届けします。
日本一アグリテックフレンドリーな街を目指して
交流会の冒頭では、豊橋市 産業部 地域イノベーション推進室より事業の紹介が行われました。
地域農業の課題解決とアグリテック企業の成長による好循環で、強い農業の実現を目指す意気込みが語られました。特に、行政単独での取り組みではなく、サポート団体をはじめ、地域の関係機関との連携が事業の成功の鍵である点について改めて強調されました。
また、過去3年間の具体的な実証内容が紹介されると同時に、豊橋市が目指す『強い農業』の実現を目指す新たな取り組みとして、アグリテック導入支援補助金、アグリテックコンテストの学生部門の新設について紹介されました。
アグリテック企業による事業紹介ピッチ
豊橋市の事業紹介に続けて、アグリテック企業4社による事業紹介ピッチが行われました。
株式会社G-grow

活性触媒の導入により、燃料コストの低減とCO₂排出削減の同時実現を目指す、株式会社G-growからはCO2削減事業部 部長の 牟田口 康隆 氏が登壇しました。
講演の中では、活性触媒を活用した燃焼効率向上のメカニズムの解説や、コストカットのシミュレーション、具体的な導入事例が紹介されました。
同社はこれまでにも本事業でのイベントに登壇経験があり、過去のイベントをきっかけに、豊橋市内のトマト農園へ製品を導入した実績もお持ちです。
トマト農園では、製品コストと削減コストの費用対効果のバランスに課題が残るものの、一定の効果が確認されたと報告されていました。
株式会社エムスクエア・ラボ

「農業×ANY=HAPPY」をミッションに、マルチワーク可能な屋外作業用モビリティの開発を行う株式会社エムスクエア・ラボからは、営業統括部の 熊谷 寛 氏が登壇しました。
ライバル多くひしめく農業系モビリティの中でも、同社の製品は、低価格かつマルチワーク(運搬・防除・草刈りなど)で1年中活用でき、DIYで手軽にメンテナンスも可能である点が強みとなります。「必要な機能を必要なだけ」というコンセプトのモジュールデザインで2025年末より発売を予定しています。
質疑応答も活発に行われ、参加者からの「傾斜や地面の凹凸にどのくらい対応できるか?」といった質問に対し、、「過度な凹凸は難しいが、100kgの積載量で6度の傾斜には対応可能」と回答されていました。
株式会社CAVIN

花の生産者と花屋の直接取引プラットフォームを提供する株式会社CAVINからは、COOの犬塚 清一郎 氏が登壇しました。
卸売や小売では「花が足りない」という声が上がる一方で、年間1200億円分もの花が廃棄されているという現状があります。
こうした矛盾を同社は、「生産者と花屋が直接取引をする流通プラットフォーム」での解決を目指しています。
このプラットフォームを活用することで、生産者と花屋が直接取引できるだけでなく、生産者が販売戦略を立てたり、生産体制の改善支援も可能になるとのことです。
出荷場所やタイミングはいつもと変わらず、費用負担も無いため、生産者にとって導入しやすいサービスとなっています。
グリーン株式会社

環境・気象・生育データをベースにAIがネクストアクションを提案する「農業AIブレーン:e-kakashi」を展開する、グリーン株式会社からは、代表取締役 CEO の 戸上 崇 氏が登壇しました。
同社は「科学とイノベーションの力で自然とヒトをつなぎ笑顔を創造する」をビジョンに、現場課題と社会課題の両面から農業課題の解決を目指しています。講演の中では、「施設栽培イチゴ」、「フルーツパプリカ」、「ジャガイモ」でe-kakashiを用いて収量アップに成功した実例が紹介されました。
質疑応答では、参加者からカメムシ被害の対策についてコメントがあり、カメムシ被害対策もe-kakashiを用いることで対応可能であると回答されていました。
豊橋技術科学大学の取り組み紹介
最後に、地域の特性とセンターの人材育成・研究について、豊橋技術科学大学 先端農業バイオリサーチセンター特任助教 磯山 侑里 氏にご説明いただきました。
豊橋技術科学大学では、社会人向けに生産や管理ができる人材育成プログラムを展開しています。期間は半年で、毎週末開講の計100時間のプログラムで、これまでに600名以上が修了し、地域を牽引する人材を多数輩出しています。
2024年度からは、最先端研究を地域へ広く共有することを目的とした「スマート農業特別講義」も開始しました。
また、豊橋技術科学大学での農業関連の研究トピックとして、光合成の見える化、ロボットによる画像での自動計測、セミクローズド温室による最適なCO₂制御が紹介されました。
交流会
講演の後には、ネットワーキングが行われ、ネットワーキング、企業と参加者の間でより具体的な質疑や意見交換が活発になされました。
過去最大規模のテーマ数で開催!アグリテックコンテスト
今年のアグリテックコンテスト(一般部門)は、過去最大の36テーマで開催されます(応募締切済)。実証は今年度で3年目を迎えており、地域の生産者・事業者・市・事務局が“ワンチーム”で実装に向けて伴走します。
また、今年度から学生部門のコンテストも新たにスタートしました。
初めてのビジネスプラン提出でも事務局が手厚く伴走し、コンテスト入賞者(グループ)には、最大2年間、起業に向けた支援が予定されています。
アグリテックコンテストの過年度の様子や最新情報については下記URLをご確認ください。
https://toyohashi-agri-meetup.jp
地域の生産者・事業者と自治体・全国のアグリテック企業が手を取り合い、どんなイノベーションが実を結ぶのか、ぜひ今年もご期待ください!