東三河の地の利

陸送の大動脈、東名高速道路豊川ICの近くに一流の加工技術を持った企業が存在する。
乗用車から建築資材、あらゆる溶接に欠かせない部品を作る、非鉄金属加工の株式会社 ナツメ である。
 
非鉄金属の中でも銅の加工に定評があり、自動車用のスポット溶接用電極では30%のシェアを誇る企業である。
 

スポット溶接?


 
日常生活では少し聞きなれない言葉だが、金属を用いたものづくりには欠かせない溶接方法の一つである。
今回、インタビューを行った株式会社ナツメの夏目常務が、一から丁寧に教えて下さるとともに、工場での仕事の様子を紹介してくれた。
 

夏目 喬之 さん
株式会社ナツメ
常務取締役

 
 
工場の中で日本の産業を支える技術力を見せて頂くと共に、技術を支える「人」の存在を教えて頂いた。
 
 
 

スポット溶接とは


 
スポット溶接は、電流を用いて発生した熱で溶接する、抵抗溶接の一種である。

 
重ね合わせた金属を電極で挟み、電流を通すと、電極と金属の電気抵抗で熱が発生する。
その熱を利用し、溶けた金属を接合するのが抵抗溶接である。
 
自動車の組立て等には、1台に数千カ所の溶接が行われ、製品作りになくてはならない技術である。
 
銅は、金属の中でも導電率に富んだ金属で、電気を通しやすい特徴を持っていることから、溶接の電極には銅合金が用いられるのである。
 
一方、銅は他の金属に比べると柔らかく加工の難易度が高いのが特徴で、こうした加工の難しさをナツメは職人達の技術力でクリアしている。
 
こうした高い技術力を背景に、溶接機器の先端部分はもちろん、先端以外の溶接用銅製品も手掛けており、量産の汎用的な部品から一点ものの加工に至るまで、あらゆる注文に対応している。
 
 
 

難しい加工を実現するナツメ


 
こうした難しい加工の要望に応えるのは、工場で働く職人たちだ。
全国から届く注文に対し、月に延べ3,000件ほどの加工を手がけている。
 
 
多くの商品は一種につき一人の職人が担当し、一貫して加工に取りかかる。
工場で働く一人一人がその技術をもって完成させ、誇りをもって加工に取り組む姿から、工場の従業員ではなく「職人」と呼んでいるのである。
 

 
一点ものの加工は、世界に一つだけのものづくり。
頼りとなる図面と目の前にある原材料。
職人たちは加工のレシピを頭の中に描いていく。
 
あらゆる加工を経験と自由な発想で取り掛かる。
 
複雑な形状の加工は決してマニュアルに落とし込めるものではない。
過去の経験を結集し、「どのように加工を行うべきか」という職人の思考が求められるのだという。
 
 

 
例えばこのような形状も複雑な加工プロセスを経て完成に至る。
ワーク(加工対象)のどの部分を固定し、どの順番で加工を行うのかを見極め、迅速に仕上げていく。
 
ナツメの加工の特徴は、一人の職人がこれらの複合的な作業をワンストップで仕上げる所にある。

 
工場で働く一人一人が、自身の機械を意のままに操り、難しい形状を実現させていく。
 
 
 

技術の承継


 
ナツメの技術は人から人へ。
若手世代への指導の場面にも遭遇した。
 
 
この道30年のベテラン技術者が、入社して間もない若手に指導を行っている。
手曲げ加工を実践し、コツを伝えながら加工の方法を伝授している。
 
 
「まだまだだな」
 
 
 

 
そう口に出す次の瞬間には、自らの「手」と「言葉」で若い世代へと指導し、自らが培った技術を伝えている。
 
簡単に身に付くものではない加工の技術。
 
教わったことを咀嚼し、自分の手先に染み込ませることで、初めて先人たちの技術を自分のものに出来るのである。
 
先輩の見守る中、真剣なまなざしで加工に取り組み、技術を身につけようとする姿はまぶしく映った。
 
 
 

貴重な素材


 
オリンピックのメダルにも用いられる銅は、金銀には隠れてしまうものの、値段の高価な素材の部類に分けられる。
 
こうした材料のロスを少しでも無くすべく、不良ロス防止の呼びかけを行い、徹底させている。
 
 

 
不良ロス防止の他にも、切断作業においては、100分の1ミリ単位で切断する長さを調節し、加工に最低限必要な長さにそろえている。
切断に使う刃についてもなるべく薄い刃物を使い、作業屑の発生を最低限に止めている。
 
金属加工へのこだわりはこの切断加工の段階からすでに込められているのだ。
 
 
適切なサイズに切り分けられた材料は、図面と同時に職人の手許に送られる。
職人たちの真剣なまなざしが素材に向けられる。
 
 
高価な素材であると同時に、柔らかい素材でもある銅は、加工対象となるワークを挟んで固定する際にも細心の注意が図られる。
 

ワークが変形しないよう、一枚クッションを挟んで固定する


 
 
 
 
 

長軸加工


 
写真の様に、素材に長い穴を空ける加工についてもナツメの十八番であるという。
 
抵抗溶接に用いられる部品は熱を持つため、冷却を行うように部品の内部に水を通せるつくりとなっている。
 
そのための穴あけ加工を得意としているのがナツメの技術力であり、屑をスムーズに排出し、効率よく加工が出来るよう、ドリルの刃に独自の調整を施し、加工を行っている。
 

ベテラン職人の腕が光る。


 
 

検査過程


 
人の手により造られるナツメの芸術品。
 
品質を担保する最終検査も欠かせない作業である。
万全のチェックを施した上で、図面を忠実に再現した製品がお客さまの元へ出荷される。
 
日々要求水準が高まる中、自身の加工技術を絶えず磨き、お客さまの期待に応え続けるがナツメのものづくりにかける想いなのである。
 
  

次の世代を担う人材

こうした技術を次に伝えるべく、若い世代の活躍と技術の伝承にも取り組んでいる。
ナツメの次の世代を担う方々にもお話を伺った。
 

従業員の距離が近い会社です

菅沼 俊仁 さん
株式会社ナツメ
営業部

 

営業部に所属し、入社して4年の菅沼さん。
 
ナツメで創り上げる技術の結晶をお客様の元へと着実に届ける役割を担っている。
自動車関係の企業を中心に、依頼内容やお客様の要望を聞き取り、正確に現場へと伝え、お客様が要求する加工を実現するために奔走する。
 
また、特急品の注文を受ける時は、現場の方と製造スケジュールの調整を行いながら納期に間に合うよう、お客様と製造現場の間を慌ただしく行き来する。
無事要望通りの納期を終え、お客様から感謝の言葉を頂く時はやりがいも一塩であるという。
 
 
—-ナツメで働くきっかけはなんですか。
学生時代の就職活動の時期に、進路の相談に乗って頂いた知り合いの社長からも評判の良さを伺い、志望したのがきっかけです。
 
 

—-実際に働いてみて感じた事はどんな所ですか。
就職して感じた事は、従業員の皆様と距離が近く、社内全員とお話しする機会があるくらい、アットホームなところです。
親近感があってとても働きやすい職場だと感じています。
 
 
はじめは図面を読む事も苦労する事があったと語る菅沼さん。
今後は自ら新規の開拓先を見つけて行けるよう、金属加工の知識を身につけ会社に貢献していきたいとこれからのビジョンを語ってくれた。
 
また、ナツメでは、菅沼さんのような豊橋・豊川を中心に地元で育った方が多く働いており、地域の信頼を得て歩んだ歴史も垣間見えた。
 
 
 
 
 

仕事に誇りを持った次の世代を育てる

田中 清志 さん
株式会社ナツメ
製造部 課長代理

 

 
製造課長の田中さんは現場でフライス盤を巧みに操りながらも、ナツメの次を担う世代の育成も手がけているという。
 
 

図面の内容を吟味し、完成品のイメージを頭に創り上げないと、難しい加工は成し遂げられない。
頭の中で段取りを整理し、最適な手順を経て加工を行っていくのだという。
 
 
—-職場の雰囲気はどのように感じていますか
職人達それぞれが培った知恵を共有し、困ったときには相談し合い、周りを巻き込んで解決に取り組む事ができる職場環境だと思います。
加工の完成図は一つでも、それを実現する過程は加工を手がける人の数だけ正解があります。なので、各々が培った知識を共有し合いながら、よりよい加工技術を追い求めていくことが大切だと考えます。
 
 
 
 
—-次の世代に伝えていきたい事はありますか。
自分の仕事に誇りと興味をもって取り組んで欲しいですね。
社会人として言われたことを実施するのは最低限とも言えます。
 
言われた以上にきめ細かな注意を払い、責任を持って製品の加工を手がけることが大切なのではないでしょうか。
 
また、受動的に加工を行うのではなく、「今、加工を手がけているものがどのような形で使われるのだろうか」という疑問を浮かべながら自身が手がける仕事に向き合う事で自身の技術の向上に繋がると考えます。
 
 
—-どんな時にやりがいを感じますか。
自分でも思わず「よくこんな形に加工が出来たなあ」と口にしてしまうような高難度の加工を手がけ、完成した瞬間はとてもやりがいを感じます。
 
また、展示会に足を運んだ際、自身が加工を手がけた商品が使われるのを見かけた瞬間も嬉しいですね。
 
 
 
自らの技術を注ぎ込み、渾身の製品作りを成し遂げた際の喜びを、次の世代を担う若手にも伝えたい。
田中さんは私たちにそう話して下さった。
 
 

ものづくりの達成感を感じながら

 

長幡 享政 さん
株式会社ナツメ
製造部

 
 
 
前職から金属加工の仕事をしていたという長幡さん。
転職後もモノを作る仕事に携わりたいという考えからナツメに転職した。
 
 
—-ナツメで働くやりがいはどのような点ですか
3年目になりますが、まだまだ慣れていない作業もあり、難しい加工を任せてもらうには経験が必要だと感じています。
しかし、現在手掛けている仕事は、単品ものの加工が多いため、完成させた時に「作った」という達成感があります。
 
 
—-ナツメに転職して感じたことはどのような点ですか
色々な機械に精通すると同時に、困ったことがある時には相談に乗ってくれる先輩がいます。
いつかはその人に仕事の面で追いつき追い越したいと考えるようになりました。
 
加工に困ったときに刃物の研ぎ方を教えて頂くなど、職人的なコツやアドバイスも受けることができ、非常にためになります。
 
また、相談に乗って頂く際も、ただ答えを教えてくれるのではなく、自分自身で考えさせるように問いかけてくれるので、知識を身につける良い機会になります。
 
 
 
—-「職人」としての今後目標はありますが
これからより加工が難しいものにも対応出来るよう、技術を磨いていきたいですね。
 
職人意識を皆さんがもっているため、一人一人が責任をもって仕事に取り組んでいると感じています。私もそれに負けないように目の前の加工を一生懸命取り組んでいきます。
 
プロ意識の高さを自身の仕事に対する原動力としてこれからも技術を磨いていきます。
 
 
 
ものが出来て形になり、完成した瞬間にやりがいを感じるという長幡さん。
いつか先輩方を超える職人となるべく、日々機械の前に立ち、お客さまからの注文を形にしている。
 
 
 
 

東三河を支える技術力


 
技術の裏には必ず「人」が携わっている。
そんなモノ作りの現場を間近で見る事ができたインタビューであった。
 
豊川ICから車で10分、日本の中心に位置し、工業地帯も近くにあるという地理的優位性を活かし、今日も全国に向けて金属加工の芸術品を届けている。
 
ナツメの職人が持つ高いプライドと技術力は、東三河の産業を支えていると言っても過言ではない。
 
 
そのように感じたナツメのインタビューであった。
 
 

 
 
【会社概要】
株式会社ナツメ
代表取締役社長:夏目雅康
電話:0532-56-2232
住所:愛知県豊橋市大村町橋元48
HP:http://www.natsume-welding.com/