東三河には日本語を母語としない外国人が数多く暮らしています。
彼らには言葉が通じないことによって生活の中で困ったり、残念な思いをする場面が多かれ少なかれあります。
でも私たち日本人が何気なく話している日本語。これをやさしい日本語に変えるだけでも彼らに歩み寄ることが出来るんです。
彼らとコミュニケーションをとるのに英語やポルトガル語に自信がないからとためらう必要はありません。
やさしい日本語ってどんなもの?
いつも使っている日本語をやさしい日本語にするコツは?
そもそもなんで英語じゃなくて日本語でいいの?
そんな疑問を『あきえ日本語教室』講師のあきえ先生に教えてもらいました。
あきえ日本語教室
あきえ先生
日本語教師、入門・やさしい日本語(アスク出版) 認定講師
文化庁委託「就労者に教える日本語教師研修」修了
企業の担当者へのヒアリングを元に、現場の状況にあった『やさしい日本語』講座とワークショップ、異文化理解講座を提案しています。講座は対面かオンラインを選択できます。また、就労外国人向けの日本語研修にも対応します。
『やさしい日本語』ってどんなもの?
参考:言語サービスにおける英語志向:「生活のための日本語:全国調査」結果と広島の事例から
豊橋市に住んでいる人のうち約5%は外国人です。そのうち約45%がブラジル人、約21%がフィリピン人、7%が中国人。この3カ国の中で英語を公用語としているのはフィリピンのみです。
(参考:外国人住民国籍別人員調査表 愛知県豊橋市 )
また、日本で暮らすために日本語を勉強してくる人、日本に来てから日本語を学んでいる人も多くいます。
(参考:『海外の日本語教育の現状 2018年度日本語教育機関調査より』 )
市内で彼らとコミュニケーションをとるのに英語や彼らの母語にこだわる必要はありません。日本語で話しかけてみて通じる可能性も高いんです。さらにやさしい日本語を使うことでより親切で伝わりやすくなります。
いつも使っている日本語をどういうふうに変えれば外国人に伝わりやすくなるんでしょう?
やさしい日本語のコツはハ・サ・ミ!
ある会社での会話…
ハ…はっきり言う
サ…さいごまで言う
ミ…みじかく言う
日本人にありがちなあいまいな表現は避け、きちんと筋道を立てて話します。文末もあいまいなまま終わらせないようにさいごまで言い切りましょう。
はっきり発音すると聞き取りやすくなります。一文字ずつゆっくり伸ばして発音するのは逆効果なので避けます。
ハサミの中で一番大切なのはみじかく言うです。まずはこれを心掛けてみましょう。
さきほどの会話をハサミの法則を使いやさしい日本語にしてみます。
①まずは文章をみじかく切ります。
- 明日は会社に朝10時に集合して、
- バスで現場に向かいましょう。
- 向こうで着替えている時間がないので
- 作業服は着てきてもらって…
- あと、お昼はどこか近くに食べに行くか持ってきてください。
②分けた文章を「です・ます」で終わるカタチに変えます。さらに「はっきり」「さいごまで」言うカタチにします。
- 明日は会社に朝10時に集合します。
- バスで現場に向かいます。
- 向こうで着替えている時間がないです。
- 作業服は着ていきます。
- あと、昼食は近くのお店で食べるか家から持っていきます。
③相手にあわせて よりやさしい言葉を使う、なくても通じる情報を省く、足りない言葉・情報を補う、方言や若者言葉を直すなどの工夫をする。
- 明日は会社に朝10時に来ます。
- バスで仕事をするところに行きます。
- 作業服は着ていきます。
- 昼ごはんは近くのお店で食べるか家から持っていきます。
その日本語が分かるかどうかは、日本語をどの程度勉強したのか、教室で習ったのか独学なのか、どんな経験があるかなど、その人の持つ背景によって変わってきます。
相手が話の内容を理解していないようであれば言い方を変える、ジェスチャーや写真・イラストなどの視覚的イメージを併用するなど工夫してみましょう。
やさしい日本語はこんな場面で役に立つ
やさしい日本語は日常生活はもちろん、いろいろな場面での活用が進んでいます。
- 避難所など緊急時…緊急時には翻訳・通訳できる人を探す時間がありません。
- 病院…症状や治療内容など、普段使わない言葉が多いです。
- 役所…役所のものに限らず各種手続きの書類は日本人にとっても分かりにくいですよね。
- 会社…社内で円滑なコミュニケーションが取れないと任してもらえる仕事も限られてしまいます。
また、やさしい日本語は外国人だけではなく日本に住むろう者・聴覚障害者・視覚障害者・知的障害者にとっても分かりやすい・役に立つ表現手法だと期待されています。
同じ地域で暮らしている人の困ったに気付き、どうしたらその困ったを取り除くことができるかを考えてみる。そしてお互い少しずつでも歩み寄ることができれば、みんなが暮らしやすい街に一歩近づくことができる!そんな風に感じました。やさしい日本語には、夢がある!
次回は『やさしい日本語は相手によって変える必要がある』ということについて事例も交え詳しくご紹介していきます。お楽しみに!