こんにちは、キャリコン社労士の村井真子です。皆様はSOGI(ソジ、ソギ)という言葉を知っていますか?今回はLGBTに変わり広まりつつあるSOGIの考え方についてご説明いたします。
1)SOGIって?
SOGIとは、「Sexual orientation and Gender Identity」の頭文字を取ったもので、「性的指向および性自認」と訳されます。
これは異性愛者、同性愛者、自分の体の性に対する違和感の有無にかかわらない、すべての人に使用できる表現として注目されています。
2)性的指向と性自認とは?
性的指向とは、自分がどのような性の人を性愛の対象とするか、ということ。ここでいう性愛とは恋愛、性行為、魅力を感じるという意味です。異性愛者はヘテロと呼び、男性の同性愛者はゲイ、女性の同性愛者はレズビアン(ビアン)と呼びます。男女の両性が好きな方はバイセクシュアル(バイ)です。
性自認とは、自分の性別をどのように規定するのかという意味で、「心の性別」とも呼ばれます。体の性と性自認が一致している場合をシスジェンダー、不一致の場合をトランスジェンダーと呼びます。
これらの、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字を取るとLGBTとなり、この言葉はもはや説明なしにも広く使われるようになりました。
しかし、これでは性的マイノリティのことが良くも悪くも特別視されることになります。
そのような観点から、すべての人を包含するSOGIという言葉が広まってきたのです。
例えば、体の性が男性で性自認が男性のAさんの場合、シスジェンダー男性ということになります。Aさんが異性愛者であれば「シスジェンダー男性でヘテロセクシュアル」ですし、Aさんが同性愛者だった場合「シスジェンダーのゲイ」ということになります。
なお、シスジェンダーのことをストレートとも呼ぶことがあります。
しかし、体の性が男性で性自認が女性の場合のBさんはトランスジェンダーの女性です。
このような状態をMale to Femaleといい、MtFと略されます。この逆はFemale to Maleとなり、FtMと略されます。
このMtFのBさんの恋愛対象が男性となりますと、「トランス女性(MtF)でヘテロ」ということになるのです。心の性が女性で異性である男性を恋愛対象とするからです。
3)佐藤さんより多い、性的マイノリティの存在
このように性的指向、性自認をめぐる呼び方や考え方は複雑に見えるため、馴染むまでに少し時間がかかる、難しいと感じられる方もいるでしょう。
実際、性自認だけに限ってみても、Facebookの性別欄は58種類もの種類があります。男性、女性という区別だけでなく、Xジェンダーという自分の性が男女と明確に規定できない性自認やジェンダーフルイドのように時間や相手との関係性によって自分の性自認が変わる方もいます。
電通の調査によると、日本におけるLBGTの人口は8.9%。株式会社LGBT総合研究所の調査では全国の20代から60代のうち、10%相当が性的マイノリティに該当します。
電通 電通、「LGBTQ+調査2020」を実施
株式会社LGBT総合研究所「 LGBT意識行動調査2019」を実施、公表
早稲田大学の笹原宏之教授によると、日本で最も多い苗字である「佐藤」や「鈴木」の苗字を持つ人も人口の2%に満たないのだとか。
佐藤さんや鈴木さんよりも、実は性的マイノリティの数は多いのです。
早稲田ウィークリー:多いと言われる「佐藤」「鈴木」姓 実は共に人口の2%に及ばない!?
4)性的マイノリティをめぐる現状
しかし、実際に「当事者に会って話したことがある」経験を持つ方は少ないのではないでしょうか。鈴木さんや佐藤さんよりも多いのなら会っていてもおかしくないのに……と思われるかと思うのですが、それはおそらく気が付いていない、当事者だと認識していないということだと思われます。
私はキャリアコンサルタントであり、性的マイノリティの理解者である「LGBTQアライ」(Qはクエスチョニング、自分の性的指向や性自認が定まっていない方を指す。アライは理解者の意味)と名乗っています。
そのために当事者の方とお話しする機会は多い方であると思いますが、皆さんごく普通の会社員の方々ばかりです。
見た目に何か変わったところもありませんし、良くも悪くも際立った特徴があるということもありません。お一人お一人、それぞれに個性的ですが、それは性的マイノリティの方だからということではありません。
でも、彼らが私のもとで相談される内容は、職場における「過ごしづらさ」の話なのです。
例えば、無邪気な恋バナとして振られる「彼氏いるの?」という言葉に傷ついたり、会社の行事の余興で男性が女装して面白おかしく踊る場に併せて手をたたくことを拒めなかったり、女性ならばスカートを履くべきと言われたり、「男のくせに女々しい」と批判されたり。ひとつひとつは些細なことのように見えますが、これらはすべてセクハラにあたります。
ただ、問題なのは、セクハラの事実そのものだけでなく、それを告発することで自分の性的指向や性自認があらわになってしまうことがあるというリスクを当事者が抱えているということです。
より深刻な例としては、トランスジェンダーの労働者に対する不当な差別的発言が散見されることです。
また、いまだに性的指向や性自認は異常なこと、病気であるといった誤った古い認識の方も残念ながらおられます。
性的マイノリティが当事者として自分の声を届けるには、このような課題を自力で乗り越えていかなければなりません。そのハードルの高さを「エベレスト級」と例えた方がいましたが、シスジェンダーのヘテロセクシュアルの方はハードルがあることすら見えないのです。
5)SOGIを知って職場におけるあらゆるハラスメントをなくそう
2022年、あらゆるハラスメントを禁止したパワハラ禁止法の中小企業への適用拡大が行われています。企業においてはSOGIハラの禁止規定をおいた就業規則も増えてきました。
ハラスメントとは、人に対するいやがらせやいじめなどの直接的な迷惑行為だけでなく、他人に不快感を与えることも含みます。
性的マイノリティのためということではなく、そこで働く一人ひとりのために、そして何より自分がここちよく過ごしていくために、性的マイノリティを含むすべての人へのハラスメントになりうる態度、言動を振り返っていきましょう。それが働きやすい職場環境を作ることにつながります。
どんな性的指向や性自認の持ち主であっても仕事に集中できる職場をめざして、まずは自分がSOGIに含まれていることを知って、一つひとつハラスメントの根を摘んでいただければと思います。