言葉としては広く定着してきたLGBT。性的マイノリティの方を指す言葉としてLGBTQやLGBTQ+といった言葉や、SOGIという概念も登場しています。
しかし、当事者の方の支援をしておりますと、こうした言葉だけが一人歩きをしてしまったり、難しくてよく分からないという声もよく聞かれるところです。
今回はLGBT「Q」ってなに?という疑問から、SOGIやリプロダクティブヘルス/ライツについて、またなぜLGBTQ+への配慮が必要なのかについて説明します。
1)LGBTQって?LGBTとはどう違うの?
LGBTとは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)の3つの性的指向と、トランスジェンダー(Transgender)という性自認の各単語の頭文字を組み合わせた表現です。
性的指向とは、性的な魅力をどのような相手に感じるか、感じないかという概念のことを指します。性的指向がない、という方もいます。
性自認とは、自分が自分の性別をどのように認識しているかという認識のことです。自分は特定の性別がない、あるいは男女双方の性別をもっていると考える方もいます。
LGBTという言葉は2006年に開かれた国際会議でも公式な文書に採用されていますが、現在はこの言葉だけでは表せないほど多様な性の在り方が確認されています。そのような状況を受け、Qを加えてLGBTQという表現が工夫されました。
Qとはクイア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)のことです。
クイアとは男女どちらの性の在り方にもあてはまらない、あるいはLGBTのどれにも合致しないけれども「男」「女」と括られることに違和感のある方のことです。
クエスチョニングは自分の性の在り方をまだ規定できない、または規定したくないと感じる方のことを指しています。
こうした人々に加え、性的指向がなかったり、恋愛スタイルも含めた様々な性のありかたを含めた言葉としてLGBTQ+という言葉が生まれました。
この「+」はLGBTQだけではなく、すべての性的マイノリティである方々をとりこぼさないという意図が込められています。
2)LGBTQ+とSOGIの違い
LGBTQ+という表現はあくまでも性的少数者を指す言葉であるため、「自分で自分の性のあり方を決定することができる」という人権的観点からSOGIという概念が生まれてきました。
SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの略で、「性的指向と性自認」という意味です。
LGBTQ+に比べ、より広い概念であり、ここには自分の身体の性別と心の性別が一致しており、異性愛者であるというもっとも多数派である方も含まれます。
この考え方は、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」とも密接に関連するものです。
この権利は1994年にエジプトで国際人口開発会議において提唱された概念で、自分の性の在り方は自分で規定できるという権利、また生殖においてもする/しない、する場合もタイミングは自己決定できるという権利です。
「性や子どもを産むことに関わるすべてにおいて、身体的、精神的、社会的に良好な状態でいること」を指す場合も多く、そのために女性のための権利のように語られることもありますが、本質的には男性も含む概念です。
SOGIはこうした考え方を背景にしています。
性のあり方や表現の仕方に関する自己決定の権利は、LGBTQ+の方々に限ったものではなく、すべての方に開かれたものであるからです。
3)セクシュアリティの4要素
性のあり方を規定する要素は、大きく分けて次の4つと言われています。私たちは普段、意識的にしろ無意識的にしろこれらの要素を組み合わせながら「自分」を表現しています。
1.からだの性(生物学的な性)
1つ目の要素は生物学的な身体の性別です。生まれ持った身体の性別が男性であるといった生物学的な性別を指します。
この性別が性自認と一致している場合、シスジェンダーと表現されます。また、この性別が性自認と一致していない場合はトランスジェンダー、またはクエスチョニングに当たる可能性が高いといえます。
2.好きになる性(性的指向)
2つ目の要素は性的指向です。恋愛・性愛の向く方向性を指しており、「●●フェチ」といった性の嗜好性とは異なる概念です。
3.こころの性(性自認)
3つ目の要素は性自認です。自分では自分の性別をどう思っているか、心理的・精神的な性のありようのことを指しています。
4.ふるまう性(性表現)
4つ目の要素は性表現です。これは服装、髪型、話し方、しぐさなどの表現の仕方を指し、社会的につくられるものや自らの好みや価値観に応じてつくられていくものでもあります。例えば「女性らしい女性」としてふるまいたいと思ったとき、コンサバティブなイメージで表現するか、マスキュリンなイメージで表現するかも含めて性表現のあらわれと言えます。
4)LGBTQ+への配慮がなぜ重要なのか
上記で見たように、こうしたセクシュアリティは基本的には自己決定に基づいて自らを規定していくことが前提となります。
しかし、性的指向や性自認は生まれながらに決まっていることが多いのです。その意味で、赤ちゃんが生まれる時代や人種、国籍を選べないことと似ています。
また、性表現においては社会的な圧力により自分で装いたい服装でいられない、ふるまいたい態度で過ごせないという状況も残念ながら多く見られます。性自認や性的指向を無視して性交渉を強要されたり、婚姻を結ばなければならないということもあります。あるいはLGBTQ+であるというだけで、危害を加えられることもあるのです。例えばインドネシアでは、同性愛者であるというだけで逮捕される可能性のある法律が2022年12月に成立しました。この法律では未婚の男女の婚前交渉を禁止していますので、事実婚の男女であっても逮捕されるリスクがあります。なお、この法律は同国民だけではなく、旅行者などにも適用されるとのことです。
だからこそ、LGBTQ+への対応を考えるとき、人権という観点からの配慮が非常に重要になります。
世界人権宣言では「すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。」(第3条)と規定されています。LGBTQ+だからといってこれらの権利が脅かされる社会は、弱者の生存を脅かす社会といえます。シスジェンダーの異性愛者は多くの場合マジョリティではありますが、しかしそうではないところでマイノリティになる状況は生じる可能性があります。
LGBTQ+への配慮を考えることは、当事者だけではなくわたしたち一人一人の権利を守ることでもあるのです。
こうしたLGBTQ+に関する相談もできるユースクリニックが2022年に続き今年も豊橋市で開催されます。ぜひお出かけください。
■ユースウィーク■
日時 | 2023年3月20日(月)~3月26日(日) ※3月24日は休館日のためお休みします |
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時間 | 平日 15時から18時 土日祝日13時から18時 |
開場 | 豊橋市立まちなか図書館 3階ティーンズスペース |
お申し込み | https://www2.library.toyohashi.aichi.jp/(サイト内) のカレンダーより希望日を選んで申込み |