こんにちは、ひと×まち×キャリアアドバイザーの村井真子です。
最近、こんなご相談をいただきました。
顧客からLINEで友達申請を求められ、承認したら休日まで細かい用事が入ってくるように……なんだか休んだ気がしません。
上司とSNSで繋がったら、「あんな時間に遊ぶから仕事に支障が出るんだ」と私生活のことにまで口を出されるようになりました。
今回はこうしたソーシャルメディアにおけるハラスメント、ソーハラについてご説明します。
1)ソーシャル・ハラスメント(ソーハラ)とは?
ソーハラは主に職場におけるSNSを利用した迷惑行為、嫌がらせのことを指します。このSNSは個人アカウントを保有するLINEやInstagramなどのソーシャルメディアを指しますが、オンラインゲームなどのコミュニティやブログでのやり取りなども含まれます。
こうしたSNSは便利なものですし、もはや私たちの生活の一部になっています。社内で仲のいい同期と繋がったり、社外の友人と交流を深めたりする行為は当たり前のものでしょう。しかし、上司や取引先から申請が来た時に受け入れるかどうか、それは相手次第だと考える方は多いのではないかと思います。
株式会社ビジュアルワークス「10代・20代・30代のSNSに関する意識調査」では、18歳から39歳の男女10,000人を対象にSNSに関する調査を行いました。その結果、最もよく利用しているSNSは「Twitter」で10代は60.8%が複数アカウントを所持。複数アカウントを持つ理由として「リアルな知り合いに見られたくない発言がある」を挙げたのは10代で30.0%、20代で34.4%、30代では27.7%存在します(出典:上司のSNSアカウントを探し出している!イマドキのSNSは複垢が常識?!「10代・20代・30代のSNSに関する意識調査」|PRタイムス)。
このような考え方を持ってSNSを利用している場合、上司はおろか取引先、社内の知人からの申請は迷惑でしかないでしょう。また、SNSで繋がった場合にそこでのやり取りを強要されたり、そう取られかねない言動を受けることでプレッシャーになることもあります。更には、勤務時間外に手軽に連絡が取れてしまうことで、仕事から完全に開放されなくなる怖れも。
ソーハラは情報化社会だからこそ発生したイマドキの悩みなのです。
2)ソーハラの具体例
ソーハラの具体例としては、冒頭に挙げたもののほかにもこんなものが該当します。
- 「イイね!」やリアクションボタンを押さないと責められる
- SNSでの申請を断ると社内で無視されるなどよそよそしくされる
- SNS上での人間関係を批判・批評される
- 投稿に逐一リアクションをされる
- コメントが威圧的、批判的である
- アカウントを作るように強制される
- 休日の行動など私生活に口を出される
- 公私の垣根を超えた言動(くだけすぎた言葉など)で対応される
- 勤務時間内にも連絡をしてきて、未読・既読スルーすると責められる
ソーハラの判断基準はパワハラなど他のハラスメントと同じく、「自分の意に沿わない・不快な方法でSNSを利用させる」ことです。
命令とまではいかなくとも、一般に上司から持ち掛けられた話は部下にとって断りにくいもの。その力関係、上下関係を仕事から離れたSNSのなかでも行使することはソーハラに当たる可能性が高いといえます。
3)ソーハラに合わないようにしておくべき対応とは
では、こうしたソーハラにあわないようにするにはどのように対応すべきでしょうか。
方法としては下記のようなものが考えられます。
- 複数のSNSを使い分ける
- SNSを利用していないと公言しておく
- 投稿の公開範囲を限定し、社内の人間には見せない
いずれも簡単にできることなので、日ごろから意識しておくことをお勧めします。
4)ソーハラにあってしまったら…そのとき取るべき対策
ソーハラにあってしまった場合は泣き寝入りせず、きちんと対策することで自分の心身を守りましょう。
ソーハラにあった場合、まずはそれがハラスメントであると相手に指摘します。
ソーハラをしている相手はそれが相手にとって不快なことだと理解していない場合も多いものです。直接言いにくい場合は人事部やさらに上の上司、または相談窓口などを通じて自分の状況を伝えましょう。
それで改善しない、またはさらに社内での無視や仕事を干すような迷惑行為に発展している場合は、それぞれがハラスメントとなりますので該当するような証拠を集めます。
例えばLINEで業務指示をされた時間、対応しなかった場合にそれを責めるような表現があれば、ログやスクリーンショットを取って保存しておきましょう。
会社は従業員に対して安全配慮義務を負っています。具体的に証拠がある場合は対策を求められますので、一人で抱え込まずにしかるべき相手に相談して解決を求めることが重要です。
仮にソーハラの相手が経営者であったり、社内でも取り合ってもらえないような場合は、外部の相談窓口を利用することも検討します。厚生労働省の運営する総合労働相談コーナーを利用することもできます。この総合労働相談コーナーは都道府県労働局や労働基準監督署になどに設置されており、豊橋市の場合は豊橋労働基準監督署内に設けられています(参考:各総合労働相談コーナーのご案内|愛知労働局)。
5)つながらない権利を行使し、ソーハラから身を守ろう
つながらない権利とは、勤務時間外や休日に、仕事関連のメールや電話への対応を拒否できる権利のことです。
2017年にフランスが施行した改正労働法で世界的に注目され海外では法整備も進んできましたが、日本ではまだまだ知られていません。
コロナ禍をきっかけにリモートワークやテレワークは普及しましたが、それにともなって「いついかなる時も」職場と自分が繋がれる環境もまた整ってしまっています。もともとこうした勤務形態は公私の区別がつきにくく問題視されてきましたが、このような状況に慣れてしまうことでソーハラのような被害を受けやすくなっているのも事実です。
自分でも意識的に対策し、オンオフの切替が心地よく行われるように行動していきましょう。