こんにちは。キャリコン社労士の村井真子です。
こちらのシリーズでは、公的な保険制度のうち医療制度について、高額療養費、傷病手当金についてご案内してきました。
今回はこのシリーズの最後として、障害年金の制度についてご案内していきたいと思います。
【高額療養費、傷病手当金についての記事はこちら】
1)いままでのまとめ
過去二回の連載では、癌や免疫系疾患などに掛かってしまった場合にも利用できる公的な医療保険制度についてご案内しました。ここで簡単に振り返っておきます。
高額療養費=保険治療が高額になってしまったときに自己負担額を一定額で打ち止めにすることができる制度のこと
傷病手当金=健康保険に加入されている方が病気やけがのために会社を休み、給与が減ってしまう場合に受けられる所得補償のお金のこと
これらは私的な怪我や病気の際に使えるものです。仕事中の怪我や仕事に原因のある病気や怪我については労働者災害補償保険法による労災保険から上記のような内容がカバーされます。
2)障害年金って? どの程度の障害がある場合に貰うことができるの?
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に申請によって受け取ることができる年金です。
この年金はその病気や怪我になった時に自分が加入していた年金制度によって受けられる年金が決まっており、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。なお、厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入しているため、障害の程度が一定状態以上であれば障害厚生年金、障害基礎年金を両方受け取ることができます。
障害厚生年金は重い順から1~3級、障害基礎年金は1~2級に分かれており、年金を受け取れるかどうかは障害認定日にこの等級内の状態である必要があります。
障害認定日とは、原則として、その病気や怪我で初めて医師の診察を受けた日から1年6か月を経過した日のことを指します。人工肛門を装着した場合など一部例外もありますが、多くの場合はこの1年6か月の時点での障害状態が1~3級以内にあるかどうかを確認することになります。
なお、この時点で障害状態に該当しなかったとしても、65歳になるまでの間に該当すれば、その時点で申請することによって障害年金を受けることができます。
この1級から3級のイメージですが、ざっくりとは下記のようにご理解いただければと思います(参考:障害年金パンフレット|日本年金機構)。
障害等級1級=
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺、広く取っても室内に限られるような方。
障害等級2級=
ひとりでの日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害の状態。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上のことができなかったり、家事にしても出来るものが限定されるなど活動に制限がある方や、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方。
障害状態3級=
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような障害の状態。買い物など屋外での活動も含めて日常生活はほとんど支障はないが、労働については制限がある方。
なお、それぞれの細かい障害状態については、障害等級表をご参照いただければと思います。この等級表に記載のある通り、障害状態には先天性・後天性を問わず、精神疾患によるものも含みます。
3)障害年金を貰うために必要な条件とは?
障害年金を貰うためには、次の3つの要件をすべて満たしていることが必要です。
①初診日要件
障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診察を受けた日が、次のいずれかの間にあること。
- 国民年金または厚生年金に加入している期間であること
- 20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰り上げて受給している方を除く)。
➁障害状態の要件
障害の状態が、障害認定日または20歳に達したときに、障害等級表に定める1・2・3級のいずれかに該当していること。
③納付日要件(障害基礎年金のみ)
医師の診察を受ける前の日の時点で、国民年金保険料に関する未納が過去1年以内にないか、過去の被保険者期間において1/3以上の未納がないこと。
(※正確な納付要件の記述は前述のパンフレットをご確認ください。)
このうち、③については厚生年金に加入している方(会社員の間に初めてその病気や怪我で医師の診察を受けている方)は必ず会社を通して保険料を納めているのですが、国民年金の場合は自分で納めなくてはならないので、きちんと納めている方かどうかという納付要件が問われるということになります。
4)障害状態に該当しないときは障害手当金が出ることも
前述の通り、障害認定日において1~3級に該当しなかった場合はいっさい障害年金が出ないというわけではなく、その後障害状態が重くなって該当するようになれば、その時点で申請することにより障害年金を受給することができます。
また別な疾患や怪我をされたことで複数の障害を持つようになった場合は、その時点で申請することにより年金の受給ができる可能性があります。
また、厚生年金の加入者に限定されますが、前述の3つの要件のうち初診日要件、保険料納付要件が満たされている方が障害の状態が1~3級に該当しない場合、次をすべて満たせれば障害手当金という一時金の給付を受けることができます。
<障害手当金の障害状態の要件>
- 初診日から5年以内に治っていること(症状が固定)
- 治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽いこと
- 障害等級表に定める障害の状態であること
こちらの障害状態の重さは、3級が「著しく」労働に制限が掛かるのにくらべ、そこまでの制限はかからないが、普通に働くには支障がでるといったものをイメージしていただければと思います。こちらも具体的には前述の障害等級表に記載があります。
5)障害年金の金額は?
障害年金の金額は下記のとおりです。(金額は令和4年度のものを記載しています)
障害基礎年金1級 | 972,250円 |
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障害基礎年金2級 | 777,800円 |
障害厚生年金1級 | 972,250円+報酬比例の年金額×1.25 |
障害厚生年金2級 | 777,800円+報酬比例の年金額 |
障害厚生年金3級 | 報酬比例の年金額(最低保障額583,400円) |
障害手当金 | 報酬比例の年金額×2(最低保障額1,166,800円) |
なお、1級及び2級の年金を受ける方については18歳年度末までの間(高校卒業まで)の子どもがいるか、20歳未満で障害状態のある子どもを持つ方には子の加算が支払われます。
また、障害厚生年金を受ける方で、1級または2級に該当する方に配偶者がいる場合は配偶者に対する加算も支払われます。
6)いざという時に役に立つ制度について知っておこう
障害年金に限らず、日本は公的な制度が非常に充実している国です。
しかし、ほとんどの制度は申請など欲しい方が自発的にアクションを取らなければ利用することができません。
そのため、日ごろからこうした制度について知識を得ておくことが重要です。
公的な保険の情報は小難しく感じられることもありますが、是非日ごろからアンテナを立てて情報収集しておくことをお勧めします。