ここ数年でニュースなどでよく耳にするようになった、『植物工場』というキーワード。
 

温度や湿度を管理された空間にズラリと並ぶ植物、明るいLED、ロボットによる自動収穫・・・など、なんとなく“最先端”のイメージを持たれる方が多いのではないだろうか。
 
 

実は豊橋市に、40年近くも前からバイオテクノロジーを駆使し、植物培養工場を運営してきた企業がある。

株式会社ベルディだ。
 


ベルディはイタリア語で「緑」を意味する

 
 

今回はこのベルディの社長/水谷朱美さんのもとを訪れ、バイオテクノロジーを用いた事業の軌跡や今後の取り組みについてお伺いしてきた。
 

水谷 朱美さん
株式会社 ベルディ
代表取締役

 
 

ベルディの技術

クローンッ!!??

ベルディが駆使するバイオテクノロジーは、「メリクロン」という技術だ。
 

メリステム(分裂組織)+クローン
 

から生まれた造語で、

植物の新しい細胞を作り出す“点”を取り出して、そこから大量にクローンを作り出す技術のことを指す。
 

 
 
『クローン』と聞くと、映画などで出てくるクローン人間などの印象が強く、“恐ろしいもの”をイメージする方も多いかもしれないが、ここではそうではない。
 
 

要は「全く同じ遺伝子を持った別のもの」を作り出す技術なので、品質の良い苗を大量にコピーすることができる、生産者の農家さんにとって実にありがたい事業なのだ!
 


同じ遺伝子をもつ苗

 
 

苗が若返るっ!!??

 

水谷社長

「しかも、ただ増やすだけではないんです。」
 
 

植物の根の先端にあり、どんどん新しい細胞を作り出していく“成長点”と呼ばれる部分のみを0.1ミリ単位で切り取り、増殖させて作り出されたメリクロン苗は、ウイルスフリー、つまり病気や菌が取り除かれているというのだ。
 


取り出しだ成長点から芽が出ている

 
 

水谷社長

「農家の方に良質な植物を持ち込んでいただければ、それと全く同じ遺伝子の苗を1000にも1万にもすることができます。

苗づくりをお任せいただくことで、農家の方の労働負担が減ることはもちろん、ウイルスフリーで若返った苗を利用することで収穫量が増えたり、肥料を抑えられたりする効果があります。」
 
 

ベルディの軌跡


いちご(イメージ)


 

ベルディでは、サツマイモ「鳴門金時」イチゴ「章姫(あきひめ)」切り花用ガーベラなどのメリクロン苗を受託生産している。
 
 

そもそもなぜ、『バイオテクノロジー』という言葉が浸透していない40年近くも前に、ベルディはこのメリクロン事業を始めたのだろうか。

創業者は、さぞかし生物学に明るかったのだろうか。
 
 

水谷社長

「実は全く違うんです。

創業者である私の父は、もともとこの地域で青じその農家をしていました。
当時も今も、農家にとって『優秀な種』は門外不出の家宝のようなものです。

その優秀な種から苗を増やしたくても、通常の株分けなどでは限度があるし、何よりも1度病気にかかってしまったらお終いです。

1本の苗から大量の苗を増やすことができたら・・・という、農家ならではの想いがこの事業を始めたきっかけです。」
 


優秀な苗を増やすことができたら…からスタートしたベルディ

 
 
メリクロンの技術自体は、洋ランの世界で始まっていた。
 

しかしそれは超大手の上場企業などが立派な設備と優秀な研究員を抱えて取り組みを始める一方で、地方の農家が、しかも特別生物学に明るいわけではない者が立ち上げるとなると、最初は失敗も多かったという。
 

それを乗り越え、現在では豊橋市の吉川と天伯の2か所に培養工場をもつ他、3つの農場をもつバイオテクノロジー企業へと成長したのだ。
 
 

メリクロン工場に潜入!

 

今回は特別に、培養工場の様子をみせて頂いた。
 

 
工場内では、白衣を着た大勢の従業員が増殖の作業を行っている。

1人1人が向かっているBOXは、苗に菌やほこりが付かぬよう常に新鮮な空気が上から流れている装置だ。
 

 
 
ズラリと並ぶケース。
 

 
もともと1つの苗だったものを、どんどん増やしていく。

言わずもがな、全て同じ遺伝子、クローンだ。
 


 
 

室内の温度や湿度は完全にコントロールされていて、植物ごとに適した環境を提供している。
 
 

水谷社長

「夜が長い方が成長の早い子もいれば、逆の子もいます。

必要とする養分もその子によって違ったり、みんなそれぞれいろんな好みがあります。」
 
 

と、まるで我が子のように語った。
 
 

ある程度成長した苗は、ケースから土に移される。

ベルディは3か所に農場を保有しており、ここでポット苗として育てられたのち、農家さんの手元に届く。
 

 
 

50年、100年後を目指して

 

良質な苗を増やし、生産の安定を支えるメリクロン事業。

今後はどのように発展していくのだろうか。
 
 

水谷社長

「見て頂いた通り、現在はほとんどの作業が人の手で行われています。
植物によって工程が違うので、現時点では仕方がありません。

だた、間違いなく減っていく労働人口を前に、私たちの事業も機械化や更なる効率化を進めていかなければいけません。」

 
 

青じそ農家だったお父さまが、農家にとって重要な『種・苗』に目を付けて始まったベルディのメリクロン事業。
 

サツマイモの鳴門金時やイチゴの章姫など、気付かないうちに私たちも恩恵にあずかっているかもしれない。
 

そして何より、40年近くも前からこの地域で“バイオテクノロジー”が実用化されていたことに驚かされた取材だった。
 
 

【会社概要】
株式会社ベルディ
代表取締役:水谷朱美
住所:愛知県豊橋市若松町字北ヶ谷244
TEL:0532-25-8712
HP:http://www.verde-agribio.co.jp/index.html